ワタシとお茶
76話 ワタシとお茶
「ワタシは、あなた。あなたはワタシ」
「意味わかんない!」
「ゆっくり説明するわ意味ないけど……。お茶でもしながら」
ワタシと言うドッペルゲンガーは、カフェ月光のドアに手をかけた。
会社のそばだけど、ここに入ったのは初めてだ。
ドッペルゲンガーが、入るときに鳴らなかったドアベルが、ワタシが入ると鳴った。
カンコロカーン
ドッペルゲンガーは、さっさと奥の二人がけのテーブルに座ったので、ワタシは前に。
ウエートレスが、来て水を一つ置いた。
一つって、ワタシの前のドッペルゲンガーは見えてないの?
見えてたら同じ服装の双子にでも見えるだろうけど。
不思議だ。弟は、見えていて会話もし、ゲームもしてたと。
ワタシたち一緒だと見えないのかしら?
「ご注文は……」
「え、あコーヒーで」
「さて、何から話そうかな……」
ワタシには目の前のドッペルゲンガーは、ハッキリ存在して見える。
ホントにあのウエートレスは見えてないの?
すぐにコーヒーが来た。
ワタシはミルクと砂糖を入れ一口。
「落ち着いた?」
ワタシはうなずいた。
「あんたは、死の世界のヒト?」
「え、違うけど」
「じゃなんで、あんたと会う前に死んだ人に会ったの。ワタシがビックリして、あわててたのは死んだヒトに会ったからよ」
「あーなるほど。あのヒトたち、ワタシがコッチに出るときに、ついてきちゃたのよ。ワタシは幽界のモノではないわ死人じゃないもの」
「幽界……天国かしら?」
「わかりやすく言うとそんなモノね。あのヒトたちは、もともとあんたと一緒に。わかりやすく言うと守護霊みたいなのね。ワタシが現れたからあなたにも見えちゃたのかな?」
「そうなの。じゃ啓太は、まだワタシに……」
お婆ちゃんは、ともかく元カレの啓太がまだワタシを。新しい彼、作れないじゃない。
新しい彼に祟ったりしない?
「大丈夫よ、彼は憑いてるだけだから。恋の邪魔とかは、しないわ」
「え、ワタシの心よんだの」
「べつによんでないわよ。ワタシはあんただから、わかるのよ……まあ聞いて。人の体一つには、魂が一つとは、限らないの。一つの人もいるけど。たくさんの人もいるの。ワタシはふたつ」
「え、それってワタシの体にあんたとワタシの二つの魂というコト」
「あら、正解。のみこみが早いわ。交代時期なの」
「交代って……」
「これからの人生は、ワタシが」
「なにそれ?!」
あんたがワタシなのに、なんでワタシはあんたのコトがわからないの?
「うーんなんでかな……おそらくワタシの
方が格が上だからかな」
「また、よんだの。なによソレ、格上って魂に上下があるの」
「まあちょっとね、たいした差はないけど。同じ体にいるんだし」
「はあ〜やっぱりよくわからないんですけど」
「いいわよ、わからなくて」
「なによそれ……で、交代って」
「ヒトの人生って、ある日を境に、まるっきり変わっちゃうコトってあるじゃない」
「まあ、そういうヒトも……」
「変わる……の。それが、不幸だったり。その逆の場合もあるわ。代わるワタシの人生が、コレから良くなるとは限らない。もしかしたら、今までのあんたの方が幸せだったかもしれない……」
「あ、お昼休み終わっちゃう!」
ワタシはコーヒーを一気に飲みほしてカフェ月光を出た。
ワタシなんで、あの店に入ったんだっけ?
『ドッペルゲンガーが来た』の巻 おわり
つづく




