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依頼人は……

701話 依頼人は……


 わたしは詳細を聞くために角田某氏と会いに自宅へ。


 今日は日曜日なので自宅に居るというので。

 別れた彼女を探して欲しい友人も来ると、なぜ依頼人が彼でないのかも聞こうと思った。


 角田つのだ邸は探偵社から意外と近くに。普通の二階家だ。


 家はそんなに新しくなくドアフォンにはカメラはなかった。


〘ハイ〙


 と、子どもの声がドアフォンから。


「あの、お父さんと約束をした、ことぶき社の者なんですけど」

〘ことぶき社さんですか、お父さ〜ん〙


 女の子だろう。


 玄関のドアが開いた。


「あれ、獄門島さん?」


「え、あなたはミカンの友だちの。珠江ちゃん」


「珠江、お客さんに入ってもらって」


 依頼人は珠江ちゃんのお父さんなの。そういえば珠江ちゃんの名字は角田だっけ。


 応接間。


 眼鏡をかけた細身のオジさんが角田某氏。珠江ちゃんのお父さんだ。その横に角刈りのオジさんが、珠江ちゃんのお父さんは、サラリーマンという感じだが。コチラは自由業?


「彼は、近所で八百屋をしている佐倉井です。私の中学生の頃の同級生です」

佐倉井実(さくらいみのる)。あなたが元カノを探してくれる探偵さん? オッさんが来ると……。あんたで探せるのか?」

「佐倉井、失礼だよ。彼女は探偵社No.1の敏腕探偵だと社長さんが」


「あ、No.1かは、どーかと。よく頼りなく見られます。あ、おくれましたけど。獄門島です」


 わたしは二人に名刺を。


「で、お話は? だいたい資料は送信しましたけど」


「人探しは、資料だけより探してる本人と話した方が見つかりやすいんです」


 探してる本人さえ、秘密なときもあるが。


「まあね、名前と写真だけでは……」


「あの……。なんで依頼人が角田さんなんです? 探してほしいのは、こちらの佐倉井さんですよね」


「ああ……。名前だけです。料金は佐倉井が」

「俺ね、探偵雇うなんて初めてだから。健ちゃんに頼んでもらったんだ」

「佐倉井はね、女房の浮気捜査を自分でした男でね。はじめは彼女の探索も自分ですると」

「が、女房の浮気おさえるのとは人探しは、わけが違う。素人の俺にはと……。で、プロに頼もうと」


 そうなんだ。まあ出来るんだったら自分で探してほしいけど。


「佐倉井は見た目より気が小さい男でね、名前を貸してくれと、私に」

「だけじゃないんだ、探偵さん。実は彼女は角田の元カノでもあるんだ。で、消息を知りたいと」

「おいおい、ソレは言わない約束だろ。ウチに妻も居るんだから、大きな声で」


   トントン


「あ、イイよ」


「お茶を……」


「えらいなタマちゃん。ウチのなんか、お茶出しなんか……」



「獄門島さんは、探偵さんだったんですか」


 と、お茶をわたしの前に置くときに。珠江ちゃんが小さな声で。


「外で聞いてたの。ミカンにはナイショだよ」


 珠江ちゃんは、コクリとうなずいた。

 お茶を置いた珠江ちゃんは、ドアの前でお辞儀をすると出ていった。


「なるほど、角田さんにはそういうわけありで。納得しました。で、どちらでもいいんですけど、あの公園の写真以外の女性、太秦萌南(うずまさもなみ)さんの写真はありませんか? あの公園の写真だけじゃ本人と確認出来ませんから」


「まあ、たしかにあのうつむいて本読んでるのでは、わかりにくいですよね……。実は私の持ってる彼女の写真は学生時代のなんだ」

「健ちゃんが彼女と付き合ってたのは高校生の頃だからな」


「はあ、もう十年以上前くらいのですか」


「あ、いやぁ~二十年以上まえだよ」


「たそうですか、角田さんお若く見えるから。じゃ佐倉井さんは?」


「俺は、大学の頃の……。でも、俺は写真がキライでね。カメラとか持ち歩かなかった。今みたいに携帯電話が無かったからな」

「おい、あったよ。私は大学生の頃、持ってたぞ。あの頃佐倉井は電話で、しばられるのがイヤだと携帯を持ってなかったんだよ。あ〜でも、昔の携帯で私は彼女や佐倉井と撮ったんだよ」


「ソレは?」


「今は無いんだ。昔の携帯電話で壊しちゃいました」

「あ、健ちゃん。彼女なら写真持ってんじゃ」

「彼女?」

「モナミの親友だった」

戸辺島早紀とべしまさきか」

「そうだ、戸辺島なら持っているんじゃ」

「ダメだ。私は連絡先を知らない」


 おーい写真のためにもう一人、探すの?

 料金上がるよ。


「俺、モナミと付き合ってたとき彼女の連絡先を。ウチに行けば」


 と、言うことで佐倉井実は戸辺島という女の連絡先を取りに家を出た。


「あの、お二人とも同じ女性を」


「ですね。彼女、中学生の頃からの知り合いで。偶然、同じ高校になった私は彼女と付き合ってました。で、卒業と同時に別れました」


「付き合ってたという彼女が、公園に居たときわからなかったんですか?」


「ああですね。高校生の彼女は、その写真の女性のような感じとは。ぜんぜん違ってて髪はショートで陸上やってましたから色黒で、本とか読むタイプではなかったんですよ。で、私は佐倉井に言われるまでわからなかったんです」


「佐倉井さんは大学でと」


「なんの偶然なんですかね、彼女は佐倉井と同じ大学へ入ってたんです」


「偶然ですね。で、太秦さんは中学の同級生だった佐倉井さんと……」


 偶然ねぇ。どうなの等々力さん。


「大学に入った彼女は陸上はやめてて、その写真のような感じだったと。で、その写真を見るなり佐倉井がモナミだ! とね」


「なるほど、じゃこの写真を佐倉井さんに見せなければ彼女が太秦さんとはわからなかったわけですね、角田さんは」


   ピンポ〜ン


「佐倉井が帰ってきたかな」


 応接間のドアが開き。


「お父さん、友だちのミカちゃんが来たから部屋に。お母さん、買い物に出たから」


 わたしは珠江ちゃんにだけに、わかるように人差し指を口に当て、無言でわたしのコトは言うなと。


「獄門島さんは、なんかウチの珠江を知ってるようでしたけど」


「あ、たまたま。彼女たち、あ、珠江さんのお友だちとですね、何度か街中で会ってるもので。コレもナニかの偶然ですか……」


「珠江の友だちとも、それは、今来た椎名ミカンちゃんかな? あ、ミカちゃんだ」


              つづく

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