秋葉薔薇
70話 秋葉薔薇
会社「寿探偵社」のあるビルの最上階は、探偵社のオーナーのビルなので、社宅では、ないが入居者はみんな探偵社の人間だ。
わたしの部屋の向いは青沼さん。
上の階には社長が全部屋使ってる。
朝、ドアを開けると青沼さんが。
「あら獄門島さん、おはよう。今から出社?」
「はい、青沼さんも?」
「今日は私、休みなの実家から弟が東侠に遊びに来るんで迎えに。田舎者だから何もわからないのよ、だから案内を」
「そうなんですか。青沼さんの田舎って」
「岡山よ、弟はハタチすぎて、はじめての上侠よ。心細いみたいなの。ああ、今回来るのは末の弟で私が育てたようなもんなの……じゃね」
末っ子を育てた。青沼さんは何人姉弟なんだろう?
ちなみに今日は日曜。
探偵の休みは個人で違う。
東侠駅の新幹線ホームの一番前で待ち合わせだ。
静香姉さん来てるかなぁ。
東侠へは、初めて来た。
イメージはテレビで見ただけだ。あのままだといいけど。
あまりに違い、オノボリさんになってると恥ずかしい。
新幹線を降りたオレは、ホームを進行方向へ歩いた。田舎の電車と比べて長い。
新幹線の先端の前に背の高い女性が見えた。
静香姉さんだ。
ズボンを履いてる。オレは半ズボンだ。
岡山は、まだ暑い。
新幹線は冷房がきいていたから、降りたらむちゃくちゃ暑く思えた。
東侠って、けっこう暑いんだな。
「姉さん!」
「蔵馬。久しぶりね」
「6年ぶりだよ、姉さん。オレが高校受かったらすぐに帰ったから……」
「私も仕事が忙しいからなぁ。あれでも実家に居た方だ。高校の卒業式は行けなかったのは悪かった。父さんや母さんは元気か?」
「ああ。父さんは仕事を兄さんにまかせて隠居生活を楽しんでるよ。ホント、父さんが一緒に行くとか言ってたよ。けどなんとか、あきらめてもらったんだよね。久しぶりに姉さんと二人になれるんだ甘えたいんだよオレ」
「いい年して、まだ、お姉ちゃんのおっぱい欲しいのかい」
「姉さん、ソレは……。あの頃は母さんのが出るから、姉さんも出ると思って……。そんなガキの頃のコト、忘れてよ」
「今でもいいぞ! 姉さんのは、誰のものでもないから」
「姉さん、父さんも母さんも言ってた。東侠に本当にいい人が居ないか確かめてこいと。オレは、姉さんは、一人の方がいいけど」
「そうなのかぁ。田舎の人は、特に四十すぎた女が一人だと心配するからねぇ。家に帰るとソレばかりだ。だから長居はしたくない」
「そうだ、隣の辰夫が、姉さんは美人だからモテねぇハズないから東侠に男が居ると。賭けてもイイ、なんて勝手なことを。あ、賭けてないけどね」
「実はな蔵馬、姉さん恋人がいるんだ」
「ホントか姉さん!」
「なーんちゃってウソよ。まだまだフリー。結婚する気なんてないよ」
うわ、姉さんが抱きついた。
やめてくれ、こんな所で恥ずかしい。
でも、姉さんのふくよかな胸が感じられて嬉しかった。
ソレにココは東侠だから、誰もオレたちを姉弟とはわからない。
久しぶりに会った遠距離恋愛の恋人同士とか。
姉さんが最初連れて行ってくれたのは東侠駅から近い秋葉薔薇。
このヲタクの街で、オレは岡山で手に入りにくいガンプラをゲットしに来た。
オレがガンプラマニアと知っている姉さんが、まえもって調べてくれてたようで店ではすぐに。
しかし、この街はスゴイなテレビでチラッと見たのとは違い、想像以上のヲタク天国だ。
毎日通いたいと思った。
「おい、蔵馬。メイドに見とれてんじゃない」
「メイドさんをはじめて生で見たものだから……つい」
「メイドと姉さん、どちらがイイ!」
「それは、姉さんだ。あの、姉さん、アレもメイドさんか?」
歩行者天国化した道路の真ん中をしゃなりしゃなり歩いてくる黒いフリフリの傘に全身も真っ黒フリフリスカートの女が。
「あれは、メイドじゃないわ。黒いロリータファッションじゃないの」
「ロリータねぇ。ふーんそうなんだ。横に小さい子がいるけど」
「ホント、親子かしら?」
「テマリ、ココがテマリワールドのアキバか。私の方と、そう変わらないなぁ」
「ええ、見た目はね」
「あっちのアキバより、邪念がうずまいてますわ。向こうではクルマが歩行者天国に突っ込んで、ひきまわったっていう事件あったけどね、こっちも危ないね妙なのがうろちょろしてる」
「確かに妙なのが多い所よアキバって」
アンジェラのお子様サイズでのゴスロリファッションがカワイイ。
「やっぱり。私、変じゃないか? 子供のロリータって矛盾してないか?」
「そんなことないですよ。カワイイって声が聞こえます」
そのとき、エンジン音を響かせたバイクが歩行者天国へ。
バイクに乗ってるのは特撮変身ヒーローのマスクをかぶったライダーで、背中に大剣を背負ってる。
人混みを平気でぐるぐる走り回ってる。
「テマリ、アレはあぶないぞ、どうする」
「アンジェラ、とりあえず歩道に」
「人がハネられたぞ」
「姉さん、アレなんかのパフォーマンス?」
「違うわ、危ないから逃げるよ蔵馬!」
マスクをかぶったライダーは、人を数人ハネて、バイクに乗ったまま、転がると立ち上がり手足をのばし怪我がないか確かめて、背中の剣を抜いて振り回した。
「姉さん、こっちに来る!」
「浮かれるヲタクども死ね、オリャ!」
つづく




