モテ期3
66話 モテ期3
顔バレしてしまったから、あまりアパートの周りでは、うろちょろ出来ない。
あの娘は、あまり外へは行かないようだ。
彼女が居るのを確認してから、もう5時間になる。
隣の住人に軽い聞き込みをしてみようと思ったが本人が隣に居ると、ちょっとやりにくい。
今日は調査報告を出す日だ。
友人関係とかに、と思ったが、まず友人が探し出せない。
履歴書をよく見ると、今年の春に岐阜からこちらに。親しい人は、やはりご近所さんくらいだ。
まあ、自分で話した感じは、良い。
赤の他人でも気さくに付き合えるタイプなんだろう。
趣味欄には、イラストと裁縫とある。
その下にカッコして小さくコスプレと。
コスプレかぁ。なんかのイベントとか行って披露してるのかな?
もう少しするとハロウィンとかあるな。
「あ、おーい!」
しまった、見つかった。
二階の彼女の部屋のバルコニーから、ボクに手を振ってる。
「あっ」
今、気がついたフリをして、手を上げた。
「おいでよ、冷たい物出すから」
お呼ばれしてしまった。
大丈夫なのか、見ず知らずの男を部屋に入れて。
ボクじゃなければ、どうなるか。
不用心だな。
玄関のドアを開けると期待した冷房は、かかってなかった。
だが、外の痛いとも思える日差しはなく、風もとおっていた。
バルコニーに吊るした風鈴の音が聞こえた。
「ソコに座って」
居間には丸いテーブルがあった。
ボクがテレビでしか見たことがない、ちゃぶ台ってヤツだ。
フローリングの部屋に座布団が置かれている。
そこへ座ると彼女は冷蔵庫からカップで凍らせた氷をちゃぶ台の上のかき氷機へ入れた。
冷たい物とは、かき氷のようだ。
「イチゴシロップしかないんだイイ?」
「なんでも……面白いよね、そのシロップって、イチゴもメロンもレモンだってホントは、みんな同じ味らしい。色で錯覚するそうだ」
「そうなの、ワタシイチゴ味が一番好きなんだけどなぁ」
「ためしに目かくしして、食べてごらん」
「ふーん。そうなんだ……」
彼女はボクの分を作り終えると、自分のを作り、座ると食べだした。
「く〜頭にキタぁ〜。でも、やっぱり暑い部屋で食べるのがいいねぇかき氷は。冷房ガンガン聞いたお店で食べるってねぇ美味しさ半減よね」
「だね……だから、エアコンつけてないの?」
「ソレもあるけど、つけるのは夜だけかな……電気代高いしね」
「まあね……学生?」
知ってるのに聞いた。
「違うよ、こないだ就職面談に行って結果待ち。だから、現在無職!」
なんて、明るく言う彼女。
ボクの調査書次第で結果が決まるのだろう。
まあ今のところ彼女を落とす要因はない。
「よく来るの、このあたり……。やっぱり、気になった。このアパート」
「あ、いや。たまたま、近くに友人が居てね。よく遊びに」
「遊びに。平日ですよ。どんな仕事を」
「飲食関係だよ、店が平日休みなんだ」
「もしかして、コックさん?」
「あ、いや料理は苦手でね……ハハ」
ウソをついた。まあ職業がら本職は言えない。
「飲食関係って、食べるのに困らないわよね……そうかぁそういう手も……。あ、ゴメン。あの良かったらワタシと友だちになってください。ワタシ、まだこっちに来たばかりで友だちいないんです」
「え、だけどボクとキミは……名前も知らないのに」
「大丈夫。ワタシ、人を見る目はあるの。あなた、絶対いい人よね。現にワタシの部屋に来ても、ナニもしてこないし……。ワタシ仁村ひなこ。よろしく」
いい人って、ボクはキミの事を一方的に知ってる男だよ。
「あ、ああ。ボクは田守盛太です」
ボクは調査相手と友だちになってしまった。いいのだろうか、他の人はどうなんだろう。
ボク、探偵失格?
その日、会社に戻り調査書書いて社長のパソコンに送った。
彼女は問題なし。社交的な良い娘とか書いてしまった。余計だったかな?
社長から、返信がきた。
〘ご苦労さん。彼女はイイ娘だったみたいだね〙
わっ、調査相手と知り合ったの社長にバレてる?
と、思った。やはり最後のは、よけいだったかな。
「お疲れ様、田守さん」
「あ、びっくりした。金田一さんか」
「どうしたんです。なんでびっくりしたんですか?」
「あ、急に声かけられたんで」
「よっぽど仕事に集中してたのね。ハイ、コーヒー。一休みして下さい」
と、彼女はボクのマグカップを置いていった。
そういえば病院坂薫が妙なコトを言ってたな。忘れていた。
金田一さんの生霊がどーとか。
なんで彼女の生霊がボクに。
翌日、珍しく朝から出社してきた獄門島さんに。
「あのねぇ〜わたしは、いつも朝からちゃんと来てる。あなたちが気づかないだけよ。珍しくなんてありません」
まったく。朝、出勤したら珍しいと言われた。
田守くんが話がしたいというから、落ち着くカフェ月光に来た。
午前中はあの社長好きの女将もいない。
しかし、なんの話かと思えば。
「カオルがねぇ〜。で、田守くんホント心当たりないの」
「はい、ボクは金田一さんに、なにも悪い事は……生霊なんて」
「それよ、鈍いのよね。金田一さんは、田守くんが好きなの、わからない? 会社の連中みんな知ってるよ」
「え、彼女がボクを……。知りませんでした」
「それに、もう一人。田守くんの後に生霊が見えるわよ」
つづく




