ベンチで休憩
48話 ベンチで休憩
仕事中に疲れたから一休みしようと、コンビニで買ったアメリカンドッグを持って。
通りの横にある細長い公園のベンチでドッグと一緒に買った無糖のコーヒー缶を開けた。
いくつかあるベンチで、ココは木陰になっていて時折吹く微風が気持ち良い。
子供頃、母がよくおやつに買ってきたアメリカンドッグにカラシとケチャップを付けてかぶりつく。
久しぶりに食べた。美味しい。
コーヒーを一口。
気がつくと、並んだもう一つのベンチに人が座ってた。いつ来たんだ、それとも先に居た。
いや、それはない。コンビニから、ココに来る時に誰も居ないと見たのをはっきり覚えてる。
お隣さんは、女のコだ。横には真っ黒なリュック。
白いシャツは学校の制服だろう首にゆるめた虹色の線が入ったネクタイ。赤いチェック柄のスカート。
高校生。そこのベンチに着いたのは、わたしがコーヒー缶を飲んでたときだろう。
本を読んでいる。
夢中ってかんじだ。
ページをめくった。
なんだか、自分の学生時代を思い出した。
制服が似ているからだ。
彼女、ナニやらスカートのポケットから出し口に咥えた。
あの赤黒い物は。
ビーフジャーキー?
だろう。しゃぶりはじめた。
なんとなく牛肉の臭いが、漂ってるような気がした。
すぐにページをめくった。
1ページ読むの速い。
速読法でもしてるのか?
いや、ページにより、時間が違うのが極端だ。
「ぷっ!」
ふいた。面白いコトが書いてあったのか?
ゴクリとしゃぶってたビーフジャーキーを呑み込んだ。
また、ポケットから、出した。
クチャクチャとやりながら、ページをめくる。
コーヒーを飲みながらわたしは、彼女を見ていた。
なんだか、彼女の読んでる本のタイトルが気になりだした。
書店カバーとか付けてないので、本を上に上げれば見える。
カラフルなカバーだ。ラノベかな?
ページをめくる速さからして、あまり字数がない作品だろう。
なんかのHowto本かな?
笑えるのならエッセイかも?
パタッ
本を閉じた。読み終えた?
彼女はわたしの方を見た。
目があってしまった。
彼女は口を逆への字にしてニッコリと。
「あげます!」
と、わたしに本を差し出した。
「あ、いや。そんなつもりは……」
と、言いつつわたしは本を受け取ってた。
本の表紙を見た。
キレイなイラストだ。アレ、この娘が主人公?
やはりラノベ?
「獄門島愛の奇妙なお仕事」
「ええっ!」
わたしが主人公の本だ!
わたしは、ベッドの上にいた。
今のは夢? 夢落ちか。変なの。
ふと、枕もとを見ると本が。
「獄門島愛の奇妙なお仕事」
著者名が琴吹流って、社長じゃない。
「お目覚め愛さん」
「え、あなたは……」
口にビーフジャーキーをくわえた鬼首村テマリと、少女アンジェラ・リーだ。
「大丈夫? 愛さん。あたしとアンジェラの世界へ来たら、空気でも合わなかったのかなぁ急に倒れて」
「空気って、ここ宇宙じゃないからテマリ。仕事疲れかゴクモントー? そんな、キョトンとした目で。なんか変な夢でも見てたのか?」
「社長が、私の本を……」
「ああ、その本ね……。本屋さんで、ゴクモントーが。こっちの日本が見たいとテマリと、日本に行ってな、本屋でソレ持って倒れたから汚しちゃて。買わされたよ」
「ああ、ココはパラレルワールド。で、わたしの本が……」
「ゴクモントー、あんたは私の世界では本の中の架空の存在なのよ」
『本を読む女子高生』の巻 おわり
つづく




