カミングアウト
40話 カミングアウト
館長は、黒いフードマントの女に術をかけられて倉庫に入ったらしい。
普通の警備員なら、館長なのでスルーしただろう。
「鬼コべさん、あなたあの黒マントの女をご存知のようでしたけど」
「『鬼コべさん』、はじめて。そんな呼ばれ方。テマリでいいわ。友だちでしょ愛さん」
「チャイナドレス姿で、女は私の部屋に。あの女は快盗魔女だったとは……」
「館長さん、あの女に誘惑されましたね」
「ああつい、スケベ心が……お恥ずかしい。で、君は?」
「あたしは、獄門島さんの助手です」
「えっ」
鬼首村手毬は、わたしに、人差し指を立て「しっ」ていうポーズをした。
助手では、ないけど。館長に説明すると面倒だから、いいや助手で。
警備室に戻り、金田さんが買ってきたペットボトルのダイエットコーラを飲みながら。
「あの快盗魔女って、何者なの? テマリさん」
「魔女です。名前は、いくつか、あるようですけどあたしにはアンジェラ・リーと」
「アンジェラ・リー。魔女……で、『宇宙人による石碑』を狙ってるわけね。快盗って、泥棒なの? その魔女は」
「どうなのかしら、べつにあの魔女とそんなに親しいわけではないので……でも、欲しい書物が有れば、どんな図書館でも忍び込んで盗み取るような魔女で」
「そうなの、でもあの会話は親しそうだったわ。悪友とか、もしかしてテマリさんもあの石碑を……」
「いやいや、あたしはあんな物、興味ないわ。あ、テマリでいいです」
「あの〜獄門島さん。その方は?」
「ああ、ゴメン。金田さんには紹介してなかったわね」
とは、言ったけどゴスロリの鬼首村手毬。
わたし、名前しか知らないんだ。
「あの助手と? 助手は、あたしだけじゃ?」
「それ、ウソだから。館長に説明するの面倒だったから。彼女は、たんなる知り合い」
「知り合いですか……。あの、金田一江です。よろしく」
「鬼首村手毬よ。コレでお友だちですね。よろしく金田さん」
「どうも……お友だちになれて嬉しいです」
「お友だちになれたので、あたしカミングアウトします。実はあたしジャンパーなんです」
「ジャンパーって、冬に着る」
「違いますよ、愛さん。瞬間移動、出来るんですかテマリさんは?」
「瞬間移動。エスパーなのテマリって」
「エスパー! 久々に聞いたわ。でも、普通のジャンパーじゃないの。あたしは次元をジャンプ出来るのよ。だけど、そんなにあちこち跳べないのよね。思ったトコへポンポン跳べれば苦労しないんだけどね」
「次元をジャンプするって」
「パラレルワールド。わかります? ソレもある一定の場所だけ」
「次元ジャンパー。パラレルワールド……。漫画ね」
「話がまわりくどっかったけど、あの魔女アンジェラは、パラレルワールド知り合ったの。彼女は魔道書コレクターなのよ。集めた魔道書から、魔法を得て次元を飛べるようになったようね」
「魔道書コレクター。じゃ『宇宙人による石碑』は魔道書なの? 石板よね」
「彼女の世界には、それを書籍化した物があるの。その原版と言われた石碑は消えたと。彼女、こっちの世界にあるのを知ったのね。で、現れたのよ。あっちの本は不完全なの」
「なるほど、魔女の動機はわかったわ」
「話は面白いけど、テマリさんはなぜ、魔女の窃盗を阻止するんですか。あの魔女と、お友だちじゃないの?」
金田さん、面白いところをついた。
「うん、確かにあたしは、向こうの世界で彼女とお友だちになったわ。だから、こそ。お友だちの悪事は止めたいの」
なんだか偽善的な。
「あたし、正義の味方なの」
ますます。
「なるほど……テマリさんのカミングアウトついでに、あたしもカミングアウトしていいかなぁ」
何なの金田さん、急に。実は男だとか、ないよね?
「実は、あたしの名は金田一江じゃないんです」
「え、どういうこと、あなたまさか怪盗魔女?」
ミステリー物によくあるパターンだ。
「ありえません愛さん。一江さんと魔女アンジェラは同時に同じ場所に。彼女は魔法を使い、逃げました。あれは替え玉には見えなかったわ……」
「あの、そこまでスゴいカミングアウトじゃありません。あたしの本名は、金田一で、名をコウといいます」
「金田一……江」
「ハイ、金田一江ではなく。あたし、この本名嫌いで。世間では、かずえと。父ははじめ、あの歴史上の人物、江姫からとってゴウとしたのですが、母が娘でゴウはと、コウと……」
「そうなんだ。でも、かくすほどじゃ」
「あたしなんか鬼首村だし。なんだか怖いでしょ手毬は、気に入ってますけど。金田一、コウさんカワイイですよ」
「あ、なんだか、あたし恥ずかしくなっちゃいました。なんで、急に……」
ピーピーピー
また、警報が。モニターを見ると、なんだか小さい黒い影が動いてる。
つづく




