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島から帰る

34話 島から帰る


 おかしいと言いながら、墓地を後にし海側の岩場に降りてみた。 


 日傘をさし、トランクを持ちながら足場の悪い坂道を器用にぴょんぴょん降りてく小柄なロリータ、カオル。

 ホント、この娘は普通の人間なのかと思う。

 記憶をなくす前のわたしは、カオルの正体を知っていたのだろうか?


「ここですね。穴って」


 最初に下に着いた薫が穴を見つけた。


 確かに1メートルくらいの細い穴が崩れたであろう岩の中に。


「この大きさなら、あの女の子とおばさんくらいの人なら出入り出来なくはないわね……」


 と、顔を突っ込んだカオルが、すぐに顔を出し。


「違う……。ここはヤバいから、帰ろう」


「どうしたのカオル?」

「行こう、帰れなくならないうちに」


 「アカネ、もっと登りやすいトコある?」

「あるよ、向こうまわれば、ゆるやかな坂道があるけど。墓地からも学校からも離れるけど」

「その方がいいわ。愛さん、こちらから帰りましょ」


 どうしたんだカオル。なんか、あわててないか。


 わたしたちは漁港を通って、廃村に入った時だ。


「あ、ゆれてる地震だ。大きい!」


 地震のせいで、何件かの廃家が崩れた。


 「けっこう大きかったわね、震度5くらいあったかしら」


「そんなにないと、思うよ。その辺のボロ家は、いつ壊れてもおかしくないくらいだし、同じくらいの地震が朝にもあったよ。あたい寝てたからわからなかったけど、家の連中が大騒ぎしてた。島が沈没するんじゃないかと、言ってたっけ」



「おお、キミたち地震あったね。大丈夫だった? 廃屋が、何件か倒れてるようだけど」


「あ、井具さん。戻って来たんですか」


「ああ、今日はイマイチだ。もうやめにしようとおもってね。あと、1時間もしないうちに、むかえが来る。キミたちは、どうするの」


「帰ります。また、ご一緒させてもらっていいですか」


「かまわないよ」


「早くこんな島から出ましょ」

「カオル、いいの?」

「ハイ、やるコトやったし。帰りましょう愛さん」


 カオルは、茜に。ナニか話に。

 別れの挨拶?


「よかったら、また来て、おねえさんたち。さよなら。もう遅いけど、学校に戻るよ。じゃ」



 迎えの船が釣り場に来た。


「地震? なかったよ」


 地震があった時間は船主が、港を出たトコだった。


「あってもな、わからなかったよ海の上じゃ」



 会社に帰って報告書は、わたしがまとめて書いた。

 わかったのは、島には都市伝説のような恐怖はなかったコトだ。


 島であった茜のコトやあの廃校であった女の子のコトは書かなかった。

 そんな簡単な報告書でも社長は、目をとおし。


「ご苦労さん。薫ちゃん、役に立った」

「はい、まあ……。社長、あの娘は何者なんですか?」


 思い切って聞いてみて。


「え、獄門島ちゃんの友人だよね」


「え、まあそうではありますけど」



 それから一週間後、伊勢袋で偶然あった八ツ墓村さんとお茶してたら、カオルが現れた。


「偶然ですね、良かったです八ツ墓村さんも、ご一緒で」


 カオルは、いつもの小さいトランクから手紙を出した。それは世護寿島の九郎田茜からの手紙だった。


 手紙はノートの切れはしで、ポールペンで簡単に。


《病院坂の言った通り、あの後墓地に行ったら九郎田の墓石から九郎田あかねの名が消えてた。どういうコトだおしえろ》


「どういうコト、薫。あなた、あの穴を覗いてナニが、わかったの?」


「憶測だけど……」


 カオルが、頼んだクリームソーダのアイスを一口食べて、話した。


「あの洞窟は、この世の洞窟じゃなかった。ああ。“この世”という言い方は誤解をまねくわね。あそこら、あの墓地辺りまで空間がズレてたの。だから、茜と記憶が違う墓地になってたの」


「空間がズレた? あの辺は違った空間だったて、こと?」


「多分……本当に憶測だから、あたしたちが遭遇した渦潮の発生時ソレが起きた。茜が言ってた朝の地震の時よ。そして帰る前の地震でズレが直った」


「なんで、そんでそんなコトが、起きたのよ」


「それは、わかりませんね。あたしたちが行ったからかもしれないし、たんなる偶然かも」


「その偶然をわたしたちみたいに目撃した人間が都市伝説を……。かもね八ツ墓村さん」


「じゃ生け贄殺人とかは実際に起きてないの」


「違います、事件はありました。でも、それはあの現場で、あって。あの現場ではなかった……所。違う世界のあの島で。これは、あくまであたしの憶測です」


「カオル、その話を社長に」


「ハイ、とりあえず……」


『世護寿島奇談』の巻 おわり


               つづく

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