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海深様

32話 海深様


 おばさんと、女の子は校舎裏に消えた。


「何者?」


 と、わたしを見ても、わたしにはナニもわからないわ八ツ墓村さん。


「ねえ、あのおばさん確かに洞窟と言ったわよね」

「言ったけど……」


「ねえ、この学校の校舎裏に洞窟とかある?」

「洞窟……校舎の裏にあるのは、生ゴミ捨てる穴は、あるけど洞窟なんてぇのはなかった」


「アカネちゃん、その穴はどれくらいの」

「穴の大きさ……一メートルくらいかな、深さはけっこうあるみたいだけど、今はしなびた野菜のクズがあるだけで洞窟なんてぇ所じゃないよ」


「近くには、たとえば釣り場とかの」

「釣り場。 おねえさんさんたちが着いたという廃村近くの、あそこしか。でも、あの辺は洞窟なんかない」


 あの釣り人も言ってたわね。


「獄門島ちゃん、釣り場は、なくなってるのかも、何十年も前でしょう。この子が生まれる前の話だし」


「そうかぁ、あたいが生まれる前にあった釣り場か……。島の小さい方かな。あまり向こうは行かないんだ」


 島の小さい方。この島はひょうたん型。と、地図ではそうなってる。


 漁港あたりは町で人が住んでる。が、小さい方は、村とかない。端の方に神社がある。

 地図は鳥居マークだけで名前は書いてない。

 

「向こうに神社があるよね」

海深様(かいしんさま)だ、小さい頃から子供は行っちゃなんねーと言われてる」

「行ったコトないの?」


「あるよ、小学生の時。はじめは海神様とおもってたんだ、行ったら。海に深いと書いて海深様と書くんだんだ」


「海深様ねぇ……」

「なにか、知ってるのカオル?」


「深きもの……かしら? 日本海で、まさかね」

「深きもの、なにそれ?」


「海の魔物みたいなの」


「海深様は、魔物なのか? 神様じゃないのか」


 と、茜がなんだか不満そうに。


「あ、いや深きものと海深様は、同じなわけでは、ないから」

「でも、魔物なら、生け贄って関係ありそう。行ってみよう獄門島ちゃん」


 急遽、島の端にある神社に行くことに。

 地図には道が描かれてないので茜に案内を頼んだ。


「おねえさんたちは神社とかに興味あんの?」


 茜が廃校の横の細い道に入り。


「わたしと、彼女は大学の時に民俗学を学んでたの」


 もちろんウソだ。実はわたしは、専門学校出で、大学には行ってない。

 八ツ墓村さんは、どーなの?


「そう、私ら大学で恐竜の骨掘ってたの」


 八ツ墓村さん、それは考古学だよ。


「ふーん、あたいは勉強嫌いだから中学卒業したら鳥取で働くんだ。大学かぁ考えたコトもない」


 まあ、茜に民俗学や考古学は、わからないか。


「ほら、あの丘の向こうに神社が、あるから」


 丘を登ると、先に鳥居が見えた。

 その先に海が見える。


 鳥居は何色だったかもわからないくらい古い。

 普通は赤だろうが、その跡もないのが近くに来てわかった。

 もしや、はじめっから色なんて塗ってなかった?


 鳥居の先に古い社がある。

 屋根の下に消えかかっては、いるが「海深様」と読める字が。


「うわぁ〜愛さんこの下、崖だよ。釣り場なんてないわよ」


 社の裏にまわったカオルだ。


「釣り場の洞窟って、やっぱ都市伝説かな」



「おや、こんなトコで」


 あ、朝一緒に来た。釣り人の。


「どうしたんです井具さん。こっちの方まで」


「まったく、釣れなくてね。場所を変えようと探してこっちの方まで」


「おじさん、こっちの方は、釣れないよ」


「そうなのか。島の子?」


「そうよ、九郎田茜さん」


「九郎田……あかね……」


「どうしたんです?」


「どこかで見たような名だと」


               つづく

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