迫る渦潮
28話 迫る渦潮
「ありゃ!」
島に近づくと、突然船が方向を変えた。
「あら、どうしたのかしら? 漁港は、あっちよね?」
「釣り場は島の向こう側にあるんです」
井具さんは、リュックの横の水筒を取り飲みながら言った。
わたしらは、漁港で降ろしてもらいたかったけど。頼んで乗せてもらったから贅沢は言えなかった。
「釣り場って遺体が発見された洞窟の近くと、いう」
「ああ、アレですか。作り話ですよ。私、何度か行ってますけど、洞窟なんて見たことないです」
「そうなんだ。ん、みんな見てよアレ!」
八ツ墓村さんが前方を指差した。
「前方に大きな渦が!」
「まえに来た時は、あんなのなかった」
船は渦を避けるように方向を変えたが、まるで生きてるように、渦が移動して船の方に。
「みなさん、何処かに掴まって、のまれる。落ちますよ!」
「キャ〜」
船が渦に巻き込まれてグルグルと廻り始めた。
「うわぁあああ」
目が回る、いゃぁああ気持ち悪っ!
「いゃぁあ助けて!」
遊園地のコーヒーカップに乗って廻されてるみたいだ。
わたしは気を失ってた。気がつくと、船の上。
なんか、スッパ嫌な臭いと潮の香りがした。
井具さんと船主が海の水で船上を洗っていた。
まだ、倒れてる八ツ墓村さん。
今、立ち上がったカオルが鼻をつまんだ。
船上のあっちこっちに嘔吐したあとが。
みんなの吐いたあとの掃除を二人が、手伝わないと。
わたしは、近くにあったバケツを取った。
しかし、良かった。
渦にのみ込まれて沈みはしなかった。
「皆さん大丈夫かいなぁ。なんとか渦から出た。渦がおさまったから、助かった。
危なかったな……。まえにはなかったんだ、あんな渦。時間もまえと同じくらいだし……。潮のかげんではないと思うが」
頭のハチマキにした手ぬぐいを取り汗を拭きながら船主がいった。
「何かなぁあの渦は。まるで意思があって襲ってきたみたいな……。ねぇカオル」
「あたしたちが島に行くのを拒んだのかしら。島が……」
カオルがボソッと言った。
船上を洗い流し終えて船主が。
「とりあえず、あっちの釣り場の方に着けます」
コンクリートの細長い釣り場の横に三段くらいの階段があり船をつなげる太い切り株が見えた。
「釣り場の先に道があり、島の中へ続いてるから、そこから行くといい」
島に上陸したわたしたちは、言われた道を。
洞窟とかは、なかった。あれは、別の釣り場かも。
井具さんは、作り話と言ってたんだけど。
道と言っても、草が生えてないだけで、周りは草ぼうぼうの細い道。舗装などはしてない。
先に行くと家が見えた。
「アレは、廃屋ね、向こうに見えるのも」
「あっちもよ。ここは廃村じゃない?」
この足元の草むらはデコボコしてて、もとは畑じゃないかと。
「ここは、大量殺人があった村じゃない? それで廃村になったのよ」
「八ツ墓村さん、資料の村の大量殺人とかそれ、何処かの都市伝説じゃないですか」
「ここは、誰も居ない廃村ですよ。早く先に行きましょう喉が乾きました。港に行けば自販機とかあるかしら」
カオルは特になんとも言わず前に進んだ。
ココってただの廃村? 霊とか、居ない?
まあまだ、昼間だし。
「そういえば、お腹も。船で朝食全部吐いちゃたわよ」
「そうね……今何時かしら」
って、八つ墓村さんが言ったから、スマホ見たら。
「あれ、そんなにたったの? わたしたちどれくらい気を失ってたのかしら。もうお昼すぎたわ。あら、この島圏外だ」
「ホント、海の上は圏内だったわよ。こんなのありぃ社長に電話できないじゃない」
「町へ行けばつながるんじゃない? ココ、島の反対側だし」
八ツ墓村さん、社長に途中経過とか、報告してたのかしら?
あとで、わかったが、それが八ツ墓村さんの探偵活動の条件だった。
「あっちに台みたいな岩がありますよ愛さん、行って見ましょ」
日傘をさした薫は、少し高台になってる場所にある岩? 目指して大きなトランク持ち歩き始めた。
厚底のあの靴でよく歩けるわね。
「待ってロリータちゃん!」
大きめのショルダーバッグを持った八ツ墓村さんがひょこひょこと追った。
八つ墓村さんの靴もヒールだ歩きにくいのは変わりないだろう。
わたしはいつものショートブーツ
二人の後をわたしも。
ガサッ
草むらの奥で音がした。
ナニ、動物?!
イノシシとか、飛び出して来たら。
「うぅん……」
人の声?
カオルは、ココは誰も居ない廃村って。
変な霊とか、出ないでよ。
臭い。
臭いがした、コレは。
ブブブブ、ビバッ
「ハァ……。ゴメン。ソコに人、居るよね」
声が、聞こえた。
音、それにこの臭い。
ウンコする幽霊?
つづく




