白い杖の少女
23話 白い杖の少女
放課後、駅近くの公園で、ボクはある女のコを見つけた。
多分、駅の裏通りにある盲学校に通う生徒だろう。
目は閉じたまま。白い杖をついてる。
二本の三編みお下げ。前髪をカールしてる。
色白の女のコだ。
歳は中3のボクくらいか。
でも、着てる服は高校生ぽいっから、歳上かな?
この公園は近道なんだろう。
ボクが指定席にしてるベンチの前をよく通る。
気配を感じるのか、前を通る時にコクリと頭を下げる。
一応、ボクも下げるが。声を出さないから。ボクの挨拶は見えてないだろう。
ある日のこと。
ん、タバコ臭い。
見ると、高校生の三人組だ。
連中もよく見かける。
「おい、コレで終わりかぁ。買っとけって言ったろー」
「立川さん、オレッ童顔だから買う時、毎回聞かれるんです『未成年だよね』って。ソレが面倒で」
リーダーかくのヤツはゴツいゴリラみたいな男だ、それと対象的なチビは中学生みたいだ。
もう一人のノッポはパツキンのオールバックでボーッとした、なんとかってーいうお笑い芸人に似ている。
高校生とわかるのは上は白のシャツは今時、何処でも同じだがズボンが緑地のチェックだ。あれは近くの私立高の制服だ。
あの老け顔のゴリラが一番似合わない。
私服で自分で買えばいいのにタバコくらい。
「あの女、また居る」
「ちょい、からかってやるか」
ナニする気だ連中。なんだか相談してあのコに近づく。
「こんちわ~」
「!」
「よく、ココ通るよなキミ」
「なんですか? キャ」
「やっぱ、白だ。オレの勝ちだぜ。お前ら賭け金だせ」
「あ、イヤッ ヘンなトコさわらないでください!」
「ホラ、Bカップだ、こっちもオレの勝ち」
「立川、お前の手で勝手に決めるなよ」
「イヤッ!」
「オレはCとみた」
「先輩たち、オレにはそんなにあるとは思えません」
チビが彼女の胸をさわる前にボクは、彼女の手を取り走った。
「こっちだ!」
ケンカじゃ勝てないと思ったボクは、公園の出口へ走った。
こっちは、駅前商店街通りだ。人通りも多い。
ヤツらもヘンなコトは、出来まい。
ボクは、商店街に入ると馴染みの駄菓子屋に逃げ込んだ。
中で隠れた。
「どうしたの?」
他の客がいた。
おもっイキリ白い衣装がまぶしい。
コレってロリータファッションってーの?
「女のコと駄菓子屋に突っ込んで来て、あなたかくれんぼの最中ですか?」
「あ、イヤちょっと……」
カワイイ。歳は同じくらい? もっと若い……かな。子供じゃないよな?
「ありゃ武田君じゃないの。今日は彼女連れ?」
店の婆さんだ。
ボクは幼稚園児の頃からこの店の常連だ。
「あ、イヤ。彼女ってわけじゃ」
「あの、この人が、痴漢たちに襲われてたトコを助けてくれて」
「ん、あんた目が……」
「ハイ、ソコの裏通りの盲学校へ行く途中でした」
「悪い高校に変なマネをされてたから連れて逃げて来た」
「なるほど……そうかい。それは……」
「あ、愛さん!」
「こんにちは薫。ここが薫推しの駄菓子屋さんね」
ロリータの知り合いの女の人が来た。
愛さんと呼ばれた二十代らしい女の人は。
お婆ちゃんみたいな下縁だけののメガネに、まだパーカーコートを着てる。暑くないのか?
アヒルの頭みたいなのが付いた傘はレトロな感じ。
「あ、あなたサスペンダー付けてるけど、それ森中の制服だよね」
「はあぁ」
「三年生?」
「とりあえず……」
「わたしの親戚の子が、通ってるんだ知ってる」
「あのぉなんていう?」
「あ、ゴメン。あんまりプライベートなコトは……」
「あの男たちは高校生でしたか……あなたは中学生。怖かったでしょ。ありがとうございます」
「あ、大丈夫。あんなコトされてひどい奴らだ。もっと早く助けるべきだった」
「目の見えない娘にイヤらしいコトするなんてサイテーね。あたしが居たらこらしめてやったのに」
「? 薫、ナニがあったの」
しばらくしてボクは彼女を盲学校まで送った。
「ありがとう」
「イヤ」
頭を下げ、上げた彼女の顔が可愛いらしくて、ボクは、思わず顔をおさえキスしてしまった。
パシッ
彼女の平手が偶然か? ボクの頬にヒットした。
「あなたも、あいつらと同じ?!」
つづく