見えた
2話 見えた
あまりにも酷い捜査依頼内容。
中国帰りの女、東海林奈波。
これだけでどうやって捜すんだ。
あの社長だ、今言っても多分取り込み中と、取り合わない。
例のコトで忙しそうだ。
とりあえず、わたしは外へ出て捜すフリでもしよう。
いつものコトだ。
地下駐車場のマイ・スクーターで、会社から出た。
誰が言ったか「人は人混みの中へ隠せ」。
人の居ない寂しい寒村とかに隠れたら、見慣れない奴と目立つ。
だからと言って、あてもない人混みに来ても。
駅前の駐車場にスクーターを置いて新熟の街を歩いた。
不思議なもので、なんの根拠もないのに体がココヘ導いた。
コレはよくあるんだ。
“ひらめき”とでも言うかな。なんとなく行けと心に感じる。
今まで何度か、このひらめきで仕事がはかどった。だから、わたしは、ひらめきにまかせるようになった。
ゴーグル付の半ヘルメットはスクーターに。
帽子はいつもの白いバケットハットを目深にかぶる。
メガネは、お婆ちゃんの形見の下だけ鼈甲フレーム。アニメで、よく見かける下だけフレームのメガネだ。
べつにアニメの影響ではない。
私が大好きだったお婆ちゃんのメガネのレンズをわたし用に変えて使ってるだけ。
あと、母の形見の古いショルダーバッグにアヒルさんの頭が傘の持ち手なってる雨傘日傘兼用のパラソル。
帽子、メガネ、バッグ、傘の四点は欠かせない物だ。
ま、まだ寒いので古着屋で買ったグレイのパーカーロングコートをほぼ着用。
しかし、平日だというのに人が多い街だ休日はもっと増える。
ここで。
「東海林奈波さーん!」と、叫べば居るのではないかと思う。
前から妙な娘が歩いて来る。
妙とか、言っては、いけないか。
あの姿はロリータ・ファッションというヤツだ。
ファッションの聖地、妊宿あたりから流れて来たんだろうか? 関係ないか。新熟だし、いろんなのがいても。
だが、目立つ。
東侠だから周りの人は気にもとめてない。
わたしの実家は千葉県だ。
その白いロリータが日傘をかぶり、わたしの方へ、歩いて来て。
わたしの前で止まった。
「おねえさんのメガネ、オシャレね」
「あ、どーも」
近くで見ると意外と若い。子供? わけないか、平日だし。
童顔なのかな? 若いのは、わかるが年齢不詳だ。
背はそれほど小さくも大きくもない。
160のわたしより少し小さいかな。
あ、靴がちょっと高い。厚底だ。ホントはもっと小さいのか。
「そのアヒルの傘もカワイイ」
「どーもありがとぅ」
わたしの古いアイテムによく目がいく娘だ。
若いから古い物が珍しいのかな?
「あなたのそのアンティークのミニトランク。シブいわね」
「あ、コレ。お爺ちゃんの形見」
「わたしと同じね。メガネはお婆ちゃん、傘は母の形見なの」
「そーか。あ、おねえさんヒマ? あたしとスイーツ食べに行かない?」
わたしは、ロリータにナンパされた?
某フルーツパーラー。
「獄門島……愛さんかぁカッコイイ名前ね! あたしは……病院坂っていうの変でしょ」
「病院坂、なんていうの?」
「病院坂薫。姓が長いから名前は一文字で付けた意味のない名前よ」
「あら、わたしもそうよ。でも、小学生時代の友だちに有栖川久美子という子がいて、名前の欄から名がはみ出すって困ってたわ。4文字だと普通だしね。名前一文字で良かったわ」
「で、親が一文字に……。愛ってイイね」
「ちゃんと薫という名にも、なにか意味があるんじゃないの」
わたしは愛する子だから愛と。
ちなみに父は生きている。その父に聞いたコトだ。
「実はね、言ってイイ?」
「なに? イイけど」
「おねえさんに綺麗な人が憑いてるのが見えたんだ」
つづく




