金田一のモテ期
169話 金田一のモテ期
「あの、僕と付き合ってください」
会社へ行く途中に、いきなり男の人が。
「あのぉ……いきなり。わたし、あなたを知りませんし……。ごめんなさい」
「あ、僕をお忘れですか。病院で写真を撮ったじゃないですか」
「病院で?」
「ホラ」
男の人は、スマホを取り出し、わたしに写真を見せた。
この人は……。
田守さんが入院していた病院の看護師さんだ。
「あのときの看護師さん、あなたでしたか。メガネないし、制服を着ていなかったので、わかりませんでした」
「メガネは、コンタクトに変えまして。僕、あれから君のコトが忘れられず」
「でも、どうしてここで? なんでわたしがこの道を通るのを……。まさかストーカー的な……」
「いえ、まえに渋屋に来たときにお見かけして。田守くんが、渋屋で働いて居ると聞いたもので。だから、同僚だというあなたも」
「あの、まさか。で、渋屋で、はっていたとか……。怖いです」
「ごめんなさい! 僕は君に会いたいばかりに。けして悪気があって……」
「あの、病院の方はいいんですか?」
「僕、今日は遅番で」
「そうですか……。でも、ごめんなさい。あなたとは、お付き合い出来ません」
「やっぱり、田守くんと。彼は、自分には、ただの会社の同僚と……。でも、キミたちは」
「ハイ……そうです。田守さんとわたしは……」
「まあ、毎日のように来てましたよね。ただの同僚とは……。そうですか……」
看護師さんは頭を下げ、駅の方へ走って行った。
わたし、はじめて男の人に告られ、ふった。
その日の帰り。家の最寄りの駅に降りると。
「あのさ、いつも同じ電車なんだけどオレ。毎日見てて好きになっちゃたんだけど」
ええ、一日に二度目の告白。
近くの高校の制服だ。
「ごめんなさい。わたし付き合ってる人がいるので」
もちろんウソだ。
「じゃ、友だちからでも。朝、話しかけても……」
「ごめんなさい。わたしより可愛い子。いっぱい乗ってるでしょ」
「そうかぁ……。撃沈だぁ……おねえさん。コレでオレ5人にフラれてんです。ミジメですよね」
なに、泣き落とし……。でも、わたしの他に四人に告ってたの。気が多い子ね。
おねえさんって、もしかしたら同じ歳か、あるいは下かもよ。
「あら、金田一さん」
「獄門島さん、なんでこんなとこに……」
「こんなとこにって……仕事の帰り。ここらへんに住んでるの。わたしは今から会社に帰るとこ。ん、ナニ? なんでその男子泣いてるの?」
泣いていた高校生は改札の方に走って行った。
「何なんですかね、今日ふたりに告白されちゃいました」
「え、なにそれモテ期?」
「それで、わたしふたりともふりました」
「ふたりに……告られて、両方ふったのね。じゃさっきの男の子。お主やるわね。コノコノ」
「やめてくだいよぉ獄門島さ〜ん。モテ期なんて都市伝説です」
「さすが田守くん一筋。よく頑張ったわ金田一コオ」
つづく




