忘年……
157話 忘年……
あ、ソレ。懐かしのアニメソング。
アキバで友だちと忘年カラオケ会をしようと来たら、偶然獄門島さんに出会った。
ダメもとで、カラオケに誘ったら来てくれた。
何でも歌うのは好きなんだとか。
学生時代は、部活であまり遊んでないらしく、社会人になって忘年会やら新年会でカラオケは好きになったと。
なんだか、今日はひと仕事終えてスッキリしたから、歌うかと来てくれた。
「等々力くん、今の歌知ってるの?」
「ええ、リアルタイムじゃないけど、よく聞きました。母が好きな歌です。でも、獄門島さん上手いですね」
「母がね……」
「おっ、オレだ!」
次は、友人の小栗がマイクを取り。今、流行りの「登り坂46」の歌を。
この曲はアニメ「魔界の歌い手」の主題歌だ。異常に早口で歌詞覚えないと字幕だけじゃ歌えない。はじめはヴォーカロイドじゃないかと言われたが歌手名は出てたから。
この間、ライブで見て、ちゃんと歌ってた。
おお、小栗もなかなか歌えてる。
「キィを下げて、少しテンポをおそくしてるわね。あたしなら……」
ボクの横に座ってるのは小栗の妹で小6の子供だけど、すでに兄の身長をこえてる。
学校では、バレー部のキャプテンだそうだ。
ボクと同じくらいの背丈だ。
なんで、わたし中学生と、カラオケに来ちゃたんだろう。
やっぱ、大人としては奢らないとまずいかな。
まだ、給料日前なのに。
そうだ、一曲歌ったことだし、途中で抜けるか。
「ママ、飲み物入れてくるけど、あ! すいません。おばさん。ママだなんて」
うわぁ小学生にママって言われた。
「ママじゃないしぃおばさんでもないのよ」
「こら、小栗妹。獄門島さんはまだ、二十代だぞ。おねえさんといえ」
「あたしのママに似てるからつい。でも、ママの妹のマナミ叔母さんも二十代よ。だからオバさんでも。それに小栗妹はないでしょ、愛美って名前が。イズミちゃ〜ん」
「オバさんの意味が違うだろうし。ボクのことをイズミちゃんと呼ぶな。小栗、ちゃんと言っとけよ」
「知らないよ。妹が言ってんだから、妹だけに言えよ」
「おまえの妹なんだから、ちゃんとさせろ。兄の友だちをちゃん付けで呼ばすなよ!」
「はあぁ。おまえがイズミなんてぇカワイイ名前だから」
まずい、わたしのせいで、なんだかヘンな空気に。
「なんでお兄ちゃんたちが。ぜんぶあたしのせいなんだから……」
あ、泣いて出ていった。
「待って!」
部屋を出ると小学生の妹は、鼻歌まじりにドリンクバーに。
「あ、ゴクモントーさんは、ナニが?」
「アイスコーヒーでいいわ」
アイスコーヒーを入れたグラスを持ち、わたしは食べ放題というソフトクリームの機械へ。
部屋に戻ると二人は何事もなかったように肩くんでデュエット曲を歌っていた。
「ママ、あたしはクリームソーダだよ。あ、ゴメン。また間違えた」
等々力和泉たちのカラオケ代は意外と安かった。この季節だから高いと思ったが、カラオケ業界もけっこうヤバいらしい。
サービス良くしないと入らないようだ。
とりあえず会社に。
帰るなり、八つ墓村さんが。
「あら、獄門島ちゃん。いいときに。これからみんなで忘年会に。獄門島ちゃんも来るでしょ」
いま、中学生の。
いや、やっぱり大人は違うか。
「駅裏のカラオケ・セルキーで待ってるね」
え、またカラオケ。
「待ってください、八ツ墓村さ〜ん」
「あ、獄門島さん。お帰りなさい」
メイド服の上にコートを羽織った金田一が八ツ墓村さんを追った。
「お帰り獄門島さん」
「あ、蔵中さんは、まだ」
「私はまだ、することが……。あとで行きますから」
田守くんや等々力さんは出るのかな。姿が見えないわね。
しかし、忘年会とは珍しい。
うまく、みんなの時間が、あいたのかな?
「あら、獄門島さん。まだ居たの」
「青沼さんは忘年会出ないんですか……」
「カラオケはね……。私はひとりでバーへ飲みに行くわ」
「そうですか」
青沼さんが、歌うと宝塚並のショーになり、去年皆引いていた。
べつに嫌いなんではないようだカラオケ。
わたしは、等々力さんの昭和フォークフェスよりマシかな。
青沼さんは、お酒を騒がずに飲みたいんだろう。
「あの青沼さん、ご一緒していいですか?」
つづく




