リハーサルの前
114話 リハーサルの前
休日なので、朝からのイベント出演のために『フィリア』のメンバーは祭玉県の会場へと。
ワゴンバスで向かった。
わたしは、久しぶりにスクーターに乗り彼女らを追うことに。
他県だか、電車も考えたが移動が難しい。イベント会場も駅からは遠い。
犬上明菜は、仕事のわずかな休憩時間でも、姿を消すと聞いた。
イベント会場。
「おーし、みんな居るよな」
「なんだか、遠足に来たみたいね」
「マネージャーも先生みたい」
「リハーサルまで少し時間がある。フリータイムにするが、集合時間には遅れるなよ」
東俠と交通量が違うのでスクーターでついて行くのは大変だった。しかも目立たないように。
スクーターも目立たないトコに、おいて。
今日は会社に来た蒼井より若いセカンドマネージャーの丸井という男が。
現場では、ほぼ彼が担当なので今回の事情は知ってる。
時間的にわたしは、会場には入れないから。
彼女らの様子を定期的に丸井がスマホに送ってくる。
会場、祭玉新アリーナ。
その楽屋にフィリアのメンバー全員が入ったと。LINEが届いた。
のに、会場裏口へ来てくれと丸井が。
ナニ?
「おはようございます」
「いつもご苦労さまです。今のところ明菜も皆と一緒で変わったとこないです」
あ、それはさっきLINEで。
なんで、わざわざ呼んで。
丸井という男は名前通りぽっちゃり体系の丸顔で七三分けの髪型。
黒縁メガネで汗っかきなのでいつもハンカチを手にしている。
「あの……獄門島さんのそのかっこ、意外と目立つのでメンバーの娘たちが、オッカケと噂してます」
あ、このいつものスタイルのことか。まあたしかに尾行には、むいてない。
会場にも傘なら持って入れる。
「幸いですかね。オッカケと思われてるのは。まあ、ソレは置いときます。コレ、今日の入場チケットです」
ありがたい、中に入れる。
イベント中外で待ってるのは退屈。
まあ探偵業では、よくあるだろうが、やはり中で見張りたい。
「あと、コレは僕からの差し入れです。お昼に」
コンビニ袋を渡された。
中に入ってるのはサンドイッチとオニギリ。それに緑茶のペットボトルが。
「あ、ありがとうございます」
丸井司、直接会うのは二度目だ。28才独身。
アイドルのマネージャーをやりたくて、事務所に入ったと聞いてもいないコトを初対面に。B型の水瓶座とも。
言った後の沈黙は、わたしの血液型と星座が、聞きたかったのか。
「あと、コレも。付けてれば会場内何処へでも行けます」
と、「関係者」とあり、タレント事務所の名前も書いてある名札を渡された。首にかけるやつだ。
偽造ではない本物だ。
よく考えてみれば、コレ有ればチケット無しで、いつでも入れるんじゃ。
「コレが有れば会場内で明菜が消えても捜しまわれます」
「やっぱりよくあるんですか?」
「ええ、たまに。仕事時間には現れるのですが、誰も彼女を見ていない時間があります」
「そういう時にあなたたちは、捜したんですよね」
丸井はうなずいた。
そんなとき、わたしが見つけられるのかしら。
関係者が見つけられないのに。
いやいや、わたしはプロだ。彼らと違う視点で捜せば。
それから三十分ほどしてリハーサルが始まった。
「明菜が、まだ来てません!」
丸井からLINEが、犬上明菜が消えた。
裏口から、入れるから来いと。
やっぱり、チケットはいらない。
「獄門島さんどうぞ、お入りください」
「やっぱり何処にも?」
「はい、ミナミの言うには、リハ前にトイレに行ったきり戻らないと。あ、ミナミはメンバーのひとりで」
「知ってます上原美波。リーダーですよね」
いくらなんでもメンバーの名くらいは把握してる。
「ええ。彼女が、リハだからとトイレに見に行きましたが、明菜は居なかったと」
「で、会場内を捜したの」
「はい、ドコにも。毎度のことなんですが」
丸井。寒いくらいの今日。汗だくだ。
こういう状況に慣れてるのではないのか。
「アリーナ内には居ないのね」
「百パーセントとは、言いきれませんが……」
「会場の周り見てきます」
わたしの中でひらめく。
表はまだ入れない客が、おしよせている。
表から出たらファンに見つかるだろう。やはり見るなら裏か。
時間はもうリハーサルが、始まっている。
彼女なしで、はじめてるのは今回がはじめてではないと。
彼女は本番ギリギリに現れて段取りを聞いてステージに立つと、聞いた通り完璧にこなすので苦情は出ないと。
他のメンバーは、皆できた娘たちね。
そろそろ本番だ。
わたしは裏口から見えないトイレの窓の所に。
って、犬上明菜が、空から降りてきた。
ええっ!
スーパーマン、いやスーパーレディ。
いやいや、このさい、そんなことは、どうでもいい。
彼女は、そんな姿を見られてマズッたという顔一つせずに眼のあった、わたしに人差し指を立て笑顔でシッとしてトイレの窓へ。
わたしは裏口から会場に入り。
始まった彼女たちのステージを見た。
ホントだ。間違え一つなく完璧にこなしていた。
つづく




