表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/684

架空の人

108話 架空の人


 ナニコレ、捜すのが映画の登場人物って。

 俳優じゃなくて?

 

 映画は「途中物語」という群像劇。

 それぞれの登場人物の人生の、あるいっときの出来事が同時期に起こる様を描いた映画だ。


 物語の中心舞台になるのが、解散寸前の売れない小劇団。演出家や脚本家、俳優たちの物語。

 成功する者や挫折する者。


 と、ファイル内にあったチラシに。

 抽象的な絵だけで俳優の写真はない。


 この映画たしか、わたしが高校を卒業した頃の映画だ。観てはいない。


 仕事は映画の内容に関係ないだろうと思う。

 群像劇だから、いろんな登場人物がいる。

 捜すのは、劇団の看板女優で羽子板禊はごいたみそぎ。映画で演じたのは刑部姫子おさかべひめこというモデル出身女優。


 この女優も現在は引退して芸能活動はしてない。

 彼女を見つけて欲しいというのなら普通の依頼だが。彼女では、なく彼女が演じた登場人物を捜せって。相変わらず、わけのわからない依頼をうける。


 羽子板禊という登場人物は、霊能力者だった。

 映画やTVドラマに出演し売れ始めた彼女だが、恋人で劇団の主宰者で演出家の男のために劇団からは離れない。


 彼女は劇団の最後の公演に力を使い協力するという登場人物だ。


 コレは依頼書にあったメモ書き。

 映画を見てないから霊能者が、公演にどう協力するかは知らない。

 霊でも入れて客席を満席にするのか?

 それでは、儲からないだろう。が、変な話題に は、なるかも。


 まあ内容のコトは、どうでもいいわね。

 役者じゃなく登場人物って、どーやって捜すの。



「当時の写真とか残ってないんですか?」


 わたしは、社長室に相談しに。


 わたしの前の社長と秘書の八ツ墓村さんが、ソファに座ってソフトクリームを食べながら。


「あれ、資料の中になかったっけ?」

「ファイルに入ってたのは依頼書と映画のチラシだけです」


「そうだった。あ、ゴメン」


 社長はスーツのポケットからブロマイドを出して。テーブルに置いた。


「演じてた刑部姫子があまりにキレイだから、つい見とれててポケットに……」


 なるほど彼女が刑部姫子か。たしかに美人だ。


「この人は刑部姫子より羽子板ミソギの方が合いますね名前。妖しい魅力がある……」


「ホント、神秘的な美しさね。私もそう思うわ、獄門島ちゃん。水商売似合いそうよね。私と同じ店にいたらナンバー2になれそうよ」

「そうかなぁ……」

「社長は、こっちのコが、いいわけ!」

「コラッ、ドコ握って言ってんの八つ墓くん」


「どっちでもいいです社長。じゃコレ、持ってきます」


「あ、待って獄門島ちゃん。ソレ役にたたないわよ。私、その娘の映画観たけど。ぜんぜん違うメイクで髪型だったから、そのブロマイドとは違った感じだし、顔よ」


「八ツ墓村さん、見たんですか『途中物語』」


「ええ、その映画にはね、ミソギに惚れてる後輩の脚本家と、その彼に惚れる新人女優とで三角、あ、劇団の主宰者の男をふくめて四角関係なのよ……。ここんとこまるくおさまるのが良かったわ。私の友だちに映画のパンフ持ってるコがいるから、借りてきてあげる」


「それは、ありがたいです。あ、あの社長ぉ。この依頼者は、なぜ演じた女優ではなく登場人物を探すんです?」


「さて? そのわけを知るのもキミの仕事なんだよ獄門島ちゃん」


「はあ? なら、依頼人の資料下さい」


「依頼書に名前書いてあるよ」


 わたしは、ファイルの依頼書を出した。確かに氏名と住所、電話番号が。

 家電だ。まあいい、調べてみるか。


 本陣貴成ほんじんたかなり。映画の関係者かな? それとも映画のファン。



 デスクに戻り、とりあえず電話をしたが留守電で、まったく出ない。

 サギ電話が多いので最近は家電を留守電にしたままなのが多い。

 携帯でも登録してないからと出ない人もいるしなぁ。

 電話って最近は詐欺の道具みたいになってない。


 三日後に八ツ墓村さんからパンフを。


「それ、いらないからあげると言われたの。返さないでいいわよ獄門島ちゃん」


 八ツ墓村さんは、よくわたしの姓を口にするから、いちいち言わなくてもと言ったことがある。


「なんだか言いたいだけなの獄門島ちゃん」


 と、そういえば、社長もよく。

 いや、朝の挨拶でも田守くんや金田一さんも、よく言う。目の前で言うのだから名を言わなくても。


「獄門島さん、お茶です」


「ありがとう金田一さん」


 ああ、わたしも。なんだか、言いたくなる名前ってあるんだ。

 社長には琴吹社長とは、めったに言わないな。


 デスクに戻りパンフを見た。

 なるほど、女優顔という感じだが、あのブロマイドの刑部姫子と羽子板禊は別人に見える。

 このへんも俳優ではなく登場人物を捜してくれという。

 んーだからと言って架空の人物を捜せるか。


〘ハイ、本陣です〙


 出た、本陣貴成!


               つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ