偶然はない
101話 偶然はない
「玉蟲先生にセクハラ……?」
「スケベな玉蟲先生にヘンなことされて、お姉ちゃん、合気道やめたのかなって……」
「ミヤ、先生にヘンなコトされたの。先生の電話番号知ってる? わたしが……」
「されてないよ。あたしは。お姉ちゃんが、昔可愛かったから、されたんじゃないかと……」
「昔……」
「あ、お姉ちゃんは、今は美人だよ。そんな……。おばあちゃんみたいなメガネでも」
「べつに美人じゃないわよ。まあたしかに玉蟲先生はスケベでロリコンだったけど、犯罪になるようなことは……」
「先生は、お姉ちゃんの頃からロリだったの……」
「ええ、若い女優やアイドル好きだったから……まだ独身なの? 先生」
元祖昭和のオタク世代だからなぁ先生は。あの頃夢中だったアイドルの娘いたわね。
なんて名前だっけ。
「奥さんいるよ。先輩に聞いた話しじゃロリ婚だって」
「ナニ、ロリ婚って?」
「いい歳して若い奥さんもらうことだよ。噂では元教え子で、歳からして、お姉ちゃんの同期か、後輩かと」
「そうなんだ……誰だろう。まあ誰でもいいか。先生にセクハラされて、合気道をやめたんじゃないから。大丈夫よ、先生はそこまであぶない人じゃないから。安心してついていきなさい。ところで、アヤを九十九里の海に投げるってナニ?」
「お姉ちゃん、忘れてるの……?」
アヤが、言った。ナニがあったって、わたしがアヤを九十九里の海に投げたりしないわよ。
「お姉ちゃんに合気道をやめた理由を聞いたら、教えてくれて。ソレを人に言ったら、九十九里の海に丸裸にして投げると」
「そんなコト言ったっけ」
「うん、言った。人にしゃべったら海に投げるって、怖い顔で」
まいったな〜そんなこと言った覚えもない。
記憶もない。あ、もしかして。
あのタイムパトロールに記憶を消された時に。
「アヤ。お姉ちゃんね、エイリアンと遭遇して、記憶をいくつか消されてるの。その消された記憶の一つにその九十九里の話が。だと、思うから、その話、忘れて。喋らない方がいいと言われたのなら、喋らないでね」
わたし、ナニをアヤに話したんだろう。合気道をやめた理由かぁ。
だめだ、病院坂薫のコトみたいに、ナニも思い出せない。
「まあ、それも気になるけど。お姉ちゃん、なんで家出たの? それほど、東侠にあこがれてた風でも、なかったよね高校だって、ウチから通えない距離でもなかったよね。とーちゃんやママとケンカした?」
「ケンカなんて、してないよ。ただ、わたしのひらめき」
「ひらめき?」
「家を出ろって、頭の中に。まあとーちゃんとママのベタベタにも、あきれてきた頃だったし……」
「たしかにとーちゃんとママは超がつくくらいに仲が良いのは、近所でも評判になるくらいだからなぁ。でも、お姉ちゃん。ママやとーちゃんを嫌いなわけじゃないよね」
「嫌いじゃないわよ。あ、とーちゃんもあんたがいうロリ婚だわ」
「言われてみれば。とーちゃんもう還暦だよね。ママは、まだ三十代……」
「あれ、ミヤちゃん。おかしいよ。ママが三十代だと、お姉ちゃんを産んだの十代だよ」
「今のあたしらの頃にママはお姉ちゃんを……そんなコトいままで考えたコトなかったけど。ママ、ちゃんと歳を教えてくれなかったのは……それで」
「ミヤちゃん。もしかしたらママは、もっと年なのかもね」
「あんたたち、もう中学生だし、いいかな。実はお姉ちゃんはママの子じゃないのよ。なんだか、とーちゃん。再婚をあんたたちにかくしてたんだよね」
「ええ、じゃお姉ちゃんは別のママから……」
「そう。わたしのママは、亡くなったの。この鞄と傘はわたしを産んだママの形見なんだ……まあ、とーちゃんが一緒なんだから間違いなくわたしたちは姉妹よ。同じ血が流れてる」
「それもあって、お姉ちゃん。わたしたちと暮らすのが……」
「そんなコトは、ないってアヤ。言ったでしょ。ひらめきよ。ひ・ら・め・き。わたしのひらめきは信用出来るの。それで今の仕事もうまくやってるわ。そうだ、ミヤ。なんで寿探偵社に電話したの。探偵社なんてたくさんあるじゃない」
「合気道の大会終わって、街で会った変なおっさんが。知りたいコトがあったらココへとカードくれたんだ」
と、ミヤはサイフからカードを出した。
コレは、ウチの会社の広告カード。
でも、コレはそのへんにバラまいてるような物ではない。
「その変なおっさんって、どんな人」
「ああ、あたしの出た大会を見てたって言われて。スゴくほめてくれた後に、ご飯をおごるとか言われたけど知らない人だから、ことわった。そしたらカードをくれたんだ」
「そのおじさん、白髪まじりのでロン毛で、後ろで束ねた口ひげはやしたスラリとした人よ。服はスーツで、ちゃんとしてた……」
「アヤと一緒に居たんだ。まあ悪い人には見えなかっけどね」
「うん」
「だから、お姉ちゃん捜そうと考えたときに、広い東侠でどうやって捜そうとなって、ソコに電話した。他はね……知らなかったし」
社長だわ。
「そうか、その変なおっさんとの出会い偶然じゃなかったのかもね」
『妹たちと再会』の巻 おわり
つづく




