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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 3 (2023.1~12)  作者: 四季


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ついていない人間でしたが、婚約破棄後色々なことに挑戦していく中で段々生きる楽しみを感じられるようになりました。

 私はついていない人だった。


 婚約者オルトレンには会うたびに「可愛くない」とか「ぱっとしない」とか言われ、オルトレンの母親にはことあるごとに嫌みを言われて定期的に睨まれた。


 彼の家にいる時、私に居場所はなかった。


 オルトレンも、オルトレンの母親も、私を受け入れてくれてはいなかった――そういうところを含めての、ついていない人、という表現である。


 だがある日のこと。


「おい。ちょっといいか?」

「……はい」


 オルトレンからいきなり声をかけられて。


「お前との婚約だがな、破棄とすることにした」


 ――そんなことを告げられた。


 それは本来とても悲しいことだろう、傷つくことだろう。けれども私にとっては一種の解放の言葉で。そういう意味で、私にとっては辛い言葉ではなかった。


 関係を解消できるなら、もう関わらなくて良くなるのなら、そんなにありがたいことはない。


「いいか?」

「はい」

「受け入れるのだな?」

「はい、貴方がそれをお望みなら」

「ではそういうことで! さらばだ、女」


 こうして私とオルトレンの関係は終わった。


 けれどもそれは嬉しいことだった。

 だってもうこれであれこれ言われなくて済む、そう思うと自然と顔がにやけた。


 実家へ帰った私は、ゆったりと過ごすことにした。


「いいのよ、貴女はここでのんびりしていなさい」

「ああそうだぞ! 可愛い娘だ、ずっとここにいて構わない」


 両親は温かく受け入れてくれて。


「ありがとう、母さん、父さん」


 おかげで何も辛くはなかった。


 それからは色々なことに挑戦した。


 たとえば料理。

 これはそういうことに慣れている母に習った。

 簡単なものから始めて、徐々に難易度の高いものへ――基礎からみっちり習うのは苦労もあったが段々楽しくなっていった。


 たとえば縄跳び。

 これは簡単に言えば子どもの遊びだ。

 近所の子に入れてもらったり家で個人練習したり。最初のうちにはすぐに息があがってしまっていたけれど、少しずつ慣れて、一週間もすればかなり息を整えた状態で跳べるようになっていた。また、跳び方の種類も色々あって。そういうものについて研究するのも案外楽しいものだった。


 さらにストレッチも。

 最初は身体が硬くて痛みもあったが、筋が伸びるような感覚が楽しくて痛気持ちいいところを探すようになっていった。


 知らなかった世界に踏み込むこと。

 それは新たな刺激を肌で感じることでもある。


 そうして新たなる世界へ踏み込む時、人は輝くのだ。


 ……多分。


 いや、まぁ、輝くとかは言い過ぎかもしれないけれど。でも、私は、新しい物事に触れて自分がより良く変化していくのを感じていた。


 そして、オルトレンとの婚約の破棄から二年が経つ頃、果物ジュースの製造販売で莫大な富を築いた家の子息である青年と結婚した。


 彼とは料理の話で盛り上がり、それがきっかけとなって話が進んでいった。そういう意味では、料理というものに触れていて良かったかもしれない。料理はあくまで一つの趣味としてやっていたことだけれど、意外な形で役に立った。


 そうそう、そういえば。


 オルトレンとその母親は、あの後残念なことになったようだ。


 オルトレンは私との婚約を破棄した直後に晩餐会で一人の美しい女性に一目惚れ。声をかけ、少し会話することに成功したらしい。それで、彼は良い感じだと思っていたようなのだが、実は女性には相手にされておらず。会の後、「二人で会わない?」と誘ってみたところ、冷ややかに拒否されたそうだ。それによってオルトレンはこの世に絶望し、以降、精神安定剤を大量に飲みつつでなければ生活できない状態になってしまったそうだ。


 そして、オルトレンの母親は、息子が病んでしまったことによって『親――教育者としての名誉を傷つけられた』と感じたようで、怒りっぽくなったようで。ある時神経質になっていた状態のまま小さなことで夫と大喧嘩してしまい、その際とんでもない暴言を吐き続けてしまったそう。そして、それによって夫婦関係は解消――離婚されてしまったそうだ。



◆終わり◆

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