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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 3 (2023.1~12)  作者: 四季


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婚約破棄された後、私が愛したのはのっぺらぼうさんでした。~ハッピーライフはここからです!~

 あれは酷い雨の日だった。


「お前との婚約は破棄する! 今すぐここから出ていけ!」


 婚約者ヴィーロガンの希望で婚約すると同時に一緒に住むようになった私だったが、ある時その二人の家に知らない女性を連れ込まれ、そのことについて話したところ激怒されて婚約破棄された。


 雨の中、私は家を出て走る。


 でもやがて疲れてしまって。

 立ち止まり。

 ついにはぬかるみにはまって転倒。


 服も泥や雨によって汚れてしまった。


「だいじょーうぶ?」


 そんな時だ、誰かが私に雨がかからないように傘をさしてくれて。


 顔を上げてみたところ、そこにはのっぺらぼうさんが立っていた。


「えええ!?」


 最初は思わず悲鳴のような声を発してしまった。

 怖すぎて恐ろし過ぎて。

 のっぺらぼうさんを見るのは初めてでかなり驚いた。


「ああ……驚かせてしまってすみません……びっくりします、よね、ぼく……のっぺら族で」

「あ、ああ、そうでしたか……のっぺら族……」


 けれどもどうやらまともな会話はできるようで。

 段々見慣れてきた。

 それに、よくよく考えてみたら、のっぺらぼうだとしてもまともに意志疎通できるなら怖くはない。


「その……傘、ありがとうございます。おかげで濡れずに済んでいます」

「いえいえ。お困りだったようですので」

「そうでしたか……恥ずかしいですね、こんな情けないところを見られてしまって」

「いや、そんなのじゃないですよ」


 のっぺら族の彼は名をノペペといった。


 彼は思いやりの心を持っている優しい人だった。

 顔の具はないけれど。

 でも、顔の具がある人間よりずっと綺麗な心の持ち主だったのだ。


 人は見かけだけじゃない――彼がそう教えてくれた。


 それから私は、定期的にノペペに会うようになった。で、次第に彼に惹かれてゆく。種族は違っても、彼はとても良い人だ。そう思って接しているうちに、段々、彼が私の中で特別な人になっていった。 



 ◆



「父さん、母さん、私……のっぺら族の彼と結婚します!」


 そしてやがて結婚を決めた。


「えええ! のっぺら族の方と!?」

「なんじゃとおおおお!?」


 両親はかなり豪快に驚いていたけれど。


「ノペペさん、といったかしら……少しだけお話がしてみたいわ」

「……よ、よろしくお願いします、ノペペです」

「おお! わしもわくわくしてきたぞい! ノペペくん、ぜひ、今日は色々聞かせてくれ!」

「お義父さん……は、はい、もちろんです……のっぺらですが……よろしくお願いいたします」


 礼儀正しいノペペはあっという間に私の両親と仲良くなった。


 そして結婚が決まった。



 ◆



 あれから数年、私はノペペと第一子と三人で穏やかに暮らしている。


 毎日はとても充実している。

 といっても育児とか大変なことも多い。

 けれどそれでも毎日は楽しい。


 それに、ノペペはわりと育児も手伝ってくれるのだ――その点は特に助かっている。


「お誕生日おめでとう! ノペペ!」

「て……照れます……」

「ね、お父さんの誕生日だよ、一緒に祝おうね?」

「ぱぱだいつきー!」


 第一子は男の子だ。

 彼はまだ小さいけれど父親のことを凄く気に入っている。


「おたんどーびおめてと!」

「う、ううっ……ありがとうございますっ……息子……」


 温かな家庭を築けて良かった。


 そしてこれからも。


 こんな風に温かい世界で生きてゆきたい。


 ああそうだ、そういえばヴィーロガンはというと、あの後通りすがりの石臼さんに潰されて即死したそうだ。


 彼は行いのみならず運までも悪かったようだ。


 だから未来を手に入れられなかったのだろう。



◆終わり◆

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