婚約を勝手に決めてきた勘違い母も、婚約後ずっと当たり散らしてきていた婚約者も、ほぼ同時にざまぁな目に遭いました。
母が勝手に決めてきた青年ブルーノとの婚約。
それは一見素敵なもののようでそんなものではなかった。
というのも、ブルーノは、外面はわりと良いものの近しい人にはたびたび感情的になるところのある人だったのだ。
彼は当然婚約者となった私にも当たり散らしてきていた。
ある時は「とろいんだよ! お前!」「いい加減優秀になれよクズ!」などと罵り、ある時は苛立ちの発散のためにわざわざ私を呼び出して花瓶の水をかけてきた。
――そんな彼を愛せるはずもなく。
でも、引くに引けない状態だった。
なぜなら、母が決めた婚約だからだ。
私の母は非常にプライドの高い人だ。だから、彼女が選んだ相手が気に入らないと言ったなら、きっと激怒することだろう。だから本当のことは言いづらいのだ。
母とブルーノならそっくりでお似合いと思うのだが――なんて、ね。
――だが、ある日、良いことが起こった。
「お前と付き合うのはもう無理だ! よって、婚約は破棄とする!」
ブルーノが婚約破棄を宣言してくれたのだ。
これはありがたいことだった。
「本当に、良いのですか?」
「ああ、もう縁を切りたい」
「分かりました! ありがとうございます! ではこれで、さようなら」
ブルーノは少し戸惑ったような顔をしていたけれど。
「あ、ああ、そうだな。さよなら」
そんな風に、終わりの言葉を発した。
これにて関係はおしまい。
すべてに幕が下りる。
「婚約破棄されたぁ!? 何よそれ! どういうことよ! せっかくあたしが見つけてあげたのにその縁すらも逃すなんて、馬鹿じゃないの? 無能過ぎるわ! どうかしてる!! やっぱあんたみたいな馬鹿はお膳立てしてあげてもなお上手くやれないのね、あーあ、ほんと嫌な気分だわ。あんたみたいな娘を持って損したわ! もっと可愛くて器用でもてもてな娘だったらあたしも誇らしかったのに!!」
母はやはり怒ってきた。
しかしその説教中に良いことがあった。
というのも、突然高い棚の上に置かれていたつぼが落下してきて、それが母の頭蓋を芸術的なほどにさっぱりと割ったのである。
それによって不愉快な母は死んだ。
彼女は血を流して倒れている。
しかしもう助かりはしないだろう。
高度な医術などここにはないし。
でも――彼女が死ねば私は多くの苦痛から解放される、そう思うと、ショックはなかったし悲しみもあまりなかった。
散々好き放題してきたばちが当たったのだ。
それから数日後、ブルーノも死んだ。
この目で見たわけではない。
ある知人の筋から情報が流れてきたのだ。
それによれば、ブルーノはその日一人でピクニックに出掛けていたらしい。しかし向かった先で通り魔に襲われて、ナイフでめった刺しにされたそうで。それによって死亡したそうだ。
めった刺しとは恐ろしい……。
想像できないし、想像したくない最期だ。
――それから三年が経ち、私は、新興領主の家の子息であるお祭り大好き青年と結婚した。
彼はこの国におけるありとあらゆるお祭りに精通している。
出会ってすぐから彼はよくお祭りについて話してくれた。それについて聞くのは意外と楽しくて、そのうちに心惹かれていった。お祭りというのは私はあまり知らない世界だったから、色々新鮮だったのだ。そうやって交流を重ねるうちに距離が縮まり、結ばれるに至った。
本当に心惹かれている人と結ばれることができて良かった。
◆終わり◆




