彼は私と別れた後も婚約と婚約破棄を繰り返していたようで……? ~絶望を乗り越えて、私は幸せになります~
その日、婚約者から婚約破棄を告げられた。
私は絶望に堕ちた。
なぜなら彼のことを想っていたから。
彼との始まりは恋愛ではなかった。親戚の紹介で巡り会った私たち。けれども私は彼を愛していた。共に過ごしてゆく中で、彼へと愛は確かに芽生えつつあったのだ。
けれども彼は同じではなかった。
彼は私のことなど想っていなかった。
その真実を突きつけられて――私は涙をこぼすことしかできなかった。
どうして捨てたの? どうしてそんなに簡単に捨てることができるの? しばらく婚約者同士として一緒にいたのに。私のことなんて本当に本当にどうでもよかったの? 離れたいくらいだった? 相手を愛していたのは、これから協力してやっていこうと思っていたのは、私一人だけ?
思考はぐるぐると巡る。
でもそれは何も生み出さない。
良いことは特に。
夕暮れ時、雨が降り始めていた――。
◆
あの絶望の日から数年。
私は良い人と巡り会えて良い結婚をすることができた。
今日も夕方から雨が降り始めた。
思えば、あの頃はよく泣いていたな――そう思って、それから、今ここに在る幸せを噛み締める。
「ただいまー」
「おかえりなさい!」
「急に雨降ってきてさー、濡れちゃったよ」
「大変!」
「大丈夫だけどね。でも、さ。急な雨って、あの日を思い出すなぁ」
思えば、私たちが出会った日も雨だった。
対面し緊張しながら街を散策していた夕暮れ時、急に雨が降り出して、店の軒先であまやどりして――そんな中でお互い未来を意識するようになっていって。
ああ、とても懐かしい。
「そうね。あ、タオル持ってくるから。それで拭いて」
「ありがとー」
「じっとしててね?」
「はーい」
ちなみに、かつて私を捨てた婚約者の男性は、その後も複数の女性と婚約し婚約破棄しを繰り返していたそうだ。で、ある時それが問題になり、やがて彼には婚約禁止が適応されるようになったそうだ。つまり、同じようなことを繰り返すというふざけた行いをしていたために、誰かと結婚するという未来を完全に失ったのである。
◆終わり◆




