湖の畔にて婚約破棄を告げられたのですが、直後彼は大量の魔物に襲われ……。
この国で最も美しいとされている湖であるポッポン湖の畔にて、私は今、婚約者の青年オルディーノと向き合っている。
「ご用とは何でしょうか?」
いきなり呼び出されたので何の用かまではまだ聞いていない。
しかし彼は真剣な面持ちでいる。
どうも面白い話や楽しい話ではなさそうなのだ。
「ああ……重要な話だ」
「はい」
「君との婚約なのだが……破棄とすることにした」
オルディーノは淡々としかしどこか切なげに告げてきた。
「婚約、破棄……ですか?」
「そうだ」
「……本気で仰っているのですか?」
「ああ! もちろん!」
どうやらオルディーノは私への感情を既にほとんど失っているようだ。
彼は冷ややかな目つきをしていた。
刃のような。
氷のような。
剣みたいな。
――そんな目つき。
「そうですか……残念ですが、分かりました。では、そういうことで、さようなら」
「ああ、さらば」
オルディーノは方向転換して歩き出した――が、刹那、湖から大量の魔物が飛び出してきた。
すっぽんに似た魔物ポッポスンだ。
「うわっ!」
それらは一斉にオルディーノに飛びかかった。
全身に吸い付かれる。
「ぎゃ! わ! おわわ! わ!」
ポッポスンたちに吸い付かれたオルディーノは、その吸い付きの威力に耐え切れず、やがて「ぎゃああああああ」と痛々しい悲鳴を放ち始める。
彼は皮膚を吸い取られ、数分以内に亡くなった。
最初は騒いでいたオルディーノだが、あっという間に静かになってしまった。
ポッポスンの吸引力は凄まじかった。
この時初めて、そのことを思い知った。
その力は時に人をも殺すのだと。
やはり可愛くとも魔物は魔物なのだと。
◆
あれから数年、私は気の合う人と結婚できて幸せになれた。
毎日はとても楽しい。
彼といるとワクワクできる。
こんな日々が長く続けばいいな――と思いつつ、少しずつ未来へと進んでゆくのだ。
◆終わり◆




