表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
750/1282

婚約破棄後出会った少々風変わりな彼と未来を誓い合うことにしました。~今度こそ幸せな結婚を~

 婚約破棄されたので、走りながら反復横跳びをすることにした。


 青い空。

 爽やかな天。


 それに見下ろされながら、私は上記の行動を継続する。


 すると。


「あのぉー、少しよろしいでしょうか?」


 急に声をかけられた。


 ちなみに私は庭にいる。

 声をかけてきた青年は塀の向こう側に立っている。


「はい。ええと、何でしょう」

「走りつつ反復横跳び、見ていました。素晴らしい技術、尊敬しますねぇ」


 ひだまりのような青年で、彼はドンドルと名乗った。


「そう、ですか?」

「素晴らしいと思いますよぉー」

「すみません変なことをして」

「変ではないですよぉー? むしろ、良い意味でその技術に驚かされているほどですー」


 ドンドルはどこかおっちょこちょいそうな印象の人物。


 けれども悪い印象はない。

 むしろ可愛らしさのようなものを感じ惹かれるほどだ。


「すこぉーし、お願いがあるのですがぁ……」

「はい、何でしょう」

「僕と共に王城へ来てくださいませんかぁ?」

「えっ」


 彼の口から出てきたのは、まさか、というような内容で。


「ええと……すみません、ちょっと、意味が分かりません」

「ああっそうですよねぇ……唐突で……不安にしてしまいまして、申し訳ありません」


 ちょっと変わった人だな、なんて思ったり。


 ――でもその縁はそこから想定外の発展を遂げ、最終的に私とドンドルは結婚するに至った。


 ちなみに、最初は知らなかったのだがドンドルは実はこの国の王子だった。


 それを知った時はかなり驚いた。

 まさかそんなに貴い人だったなんて、と。


 けれどもその時には既に親しくなっていたため、それを理由に彼から離れようとまでは思わず。


 そして、色々悩んだ果てに、私は彼と行く未来を選んだ。


「いやぁー、走り反復横跳びが上手な女性、という条件に当てはまる女性がいてくれて本当に良かったですよぉー。危うく未婚になってしまうところでしたねぇ、ああ危ない危ない」


 私はドンドルを支えて生きたい。

 そう思えたからこそ彼との道を選べたのである。


 王子の妻となること、それは、きっと良いことばかりではないだろう。一般人にはない数多の苦労があるだろうし、贅沢に好き放題暮らせるというわけでもない。


 ただそれでも。


 私はドンドルの隣にいたい。

 彼をこの腕で支えてゆきたい。


 だからこそ、彼の隣に立つ。


 苦しみも痛みも受け入れる覚悟で。

 前を見据えて。


 どんな絶望も希望に変えてみせる――強く決意を胸に、ドンドルの横に立つのだ。


「結婚してくださって本当にありがとうございます。いやはやとても嬉しいですねぇー。うふふ、なんて言ってしまいそうですねぇー。うっふっふふ」


 ちなみに、かつて「君には女性らしい取り柄がない」と言って私との婚約を破棄した彼はというと、今はもうこの世にはいないようだ。


 というのも、夫婦喧嘩の果てに妻に殺されてしまったそうなのである。


 ある夜彼は妻と激しい喧嘩をした。

 ただし口喧嘩。

 手が出る、実際に暴力に至る、それほどのものではなかった。


 ただ、その中で、彼は暴言を吐いていた。


 それは妻の心を叩き壊すほどの威力で。


 それまでは喧嘩をしても許していた妻だったが、その日かけられた言葉だけはどうしても許せなかったようで。


 翌日、妻は、手料理に毒を入れた。


 それを食した彼は急に倒れる。

 その時には既に意識も失っていて。


 彼はそのまま眠るような死んでいったという。


 その後妻は逮捕されたようだが、たとえ逮捕されても失われた命はもう戻らない。


 彼の生命は終わってしまったのだ。


 ――だが、彼も、もう少しかける言葉を考えるべきだったのだろう。


 口喧嘩に慣れてはいても、暴言というのは時に人の心を叩き壊すもの。

 いつもやっているから大丈夫だろう、なんていうのは、所詮都合のいい自己中心的な思考でしかない。


 人の心は突如壊れる。


 そして、その時には、人はとんでもない行動に出ることだってあるのだ。


 そこに気づけなかったから彼は殺されてしまったのである。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ