婚約者の彼が女たちと好き放題しているところを父が目撃しまして!?
艶のある黒髪が綺麗な婚約者の青年モルフレットは、表向きは良き婚約者を演じていたのだが、裏では好き放題していた。
向こうの方が家柄的には下にあたる。
いやもちろんべつにそれをどうこう言う気はないのだけれど。
ただ、この国においては、向こうの方がきちんとしていなくてはならない、というような立ち位置なのだ。
しかし彼はこっそりやらかしていた。
「モルフレット様! 呼んでくださってありがとうございます~!」
「もっと遊んでくださぁ~い」
「お願いしますぅ。もっと可愛がってくださぁい。愛してぇ」
濃い香を焚いた自室で、女たちをおもちゃのように好きなように扱っているところを――父が目撃してしまった。
それは夏の日だった。
モルフレットの裏での行いを知った父は激怒、即座に婚約破棄を宣言した。
それによって私とモルフレットの縁は切れた。
モルフレットは婚約破棄は嫌だったようで何度も家へやって来ては「もう一度やり直してほしい」とか「あれは遊びでしかないから勘違いしないでほしい」とか言ってきていたけれど、すべてお断りした。
だって、やり直すなんて無駄なことだろう?
彼の本性はもう明るみに出ている。
それを今さら何を言われても。
もう遅い、信じることなんてできやしない。
◆
あれから二年ほどが経った。
私は若き領主で真面目そうな雰囲気の男性と結婚。
彼は実際に真面目だった。
ユーモアはある人だったけれど、女何人もに一斉に手を出すような下劣なことをする人ではなかった。
だから今、私たちは、穏やかな日々の中にあれている。
「新しいお茶を淹れてみたのですが」
「お茶?」
「はい! 貴女にぜひ飲んでみてほしいと思いまして」
「おおっ……!」
最近の楽しみは、用事のない時間帯に夫婦で様々なお茶を楽しむこと。
珍しいハーブティーが出てくることもあって、とても楽しい。
「どうぞ」
「いただきます! ……ぁ、美味しい」
もともとお茶を飲むのは夫の趣味だった。
でも今は共に楽しめている。
これは彼に出会ったからこそ知れた幸福だ。
「良かった」
「はい、これ、とても美味しいです!」
「新作が出ていたんですよ」
「へぇー。知らなかったです、でも……良い味ですね!」
「ふふ」
ちなみにモルフレットはというと、あの後いかがわしいお店に出入りしていたそうだが、そこの店員である女性にある時殴る蹴るの暴行を加えたたために復讐され酷い目に遭うこととなってしまったようだ。
で、最終的には内臓を一個二個抜かれてしまったよう。
今はもう、二度と健康を取り戻せないことが決定している状態で。それでも死にはしなかったために、細々と生きていくしかないようだ。
もはや、生き延びたのが幸か不幸か……、といった状態である。
◆終わり◆




