生まれつき魔法が使え、けれども、それによって損ばかりしてきました――その日が来るまでは。~逆転人生、国の頂に立つ~
生まれつき魔法が使えた。
でも良いことなんてなかった。
むしろそれによって迷惑を被ってばかりだったくらいだ。
親からは気味悪がられ、同年代の友人となれそうな子らには異端として虐められ――さらには、婚約者にまで。
「考えていたのだが、やはり、どうしても……魔法使いと結婚するのは受け入れられない」
共に生きてゆく、そのはずだった人にさえ。
「よって、婚約は破棄とさせてもらう」
切り捨てられた。
これもまた私が魔法を使えたせい。魔法の才能、こんなもの要らなかった。そんなものを持って生まれたがために、私は、誰にも愛されず、平穏と幸福を奪われ続けてきたのだ。
だが、婚約者オーガレットに婚約破棄を告げられた数日後、私がいた家へ一人の男性がやって来る。
その人は城からの遣いで。
伝説の聖女の力を宿す女性を探しているとのことであった。
最初のうちは話半分に聞いていたが、どうやら、嘘というわけではないようだった。というのも、先日『国を護るため、聖女の力を宿す娘を見つけよ。そして、彼女を、国の頂に置くのだ。そうしなければ国が滅ぶ』という聖者のお告げがあったそうで。それで、国王が、伝説の聖女の力を持つ女性を探し始めたということだそうだ。
ちなみにその伝説の聖女というのは、千年前にこの国が滅亡の危機に差し掛かった時現れたという言い伝えのある女性で、後の魔法使いらの祖であるとされている人物だ。
その伝説は聞いたことがある。確か……まだ幼い頃だったと思うが。町の公園でその話を聞かせている人がいて、それで……子どもたちは集まって、その話に聞き入っていた。で、私もそこに参加した。……という記憶だったような。
――と、まぁ、それは良いのだが。
その後私は城へ連れていかれた。
そして審査を受けることとなった。
「お主、魔法が使えるのじゃな?」
「……はい」
こんな形で国王陛下と会話することになるなんて思わなかった。
だが、彼は、悪い人ではなさそうだ。
少なくとも今まで出会ってきた人たちよりかは優しそうだ。
裕福さゆえの余裕だろうか……。
「それは、伝説の聖女の力、ではないか?」
「心当たりがありません」
「違うのか」
「恐らく。……それに、私は、この力が嫌いです」
「なぬ?」
「魔法が使えたせいでずっと虐められたり嫌われたりしてきましたから……正直もう捨ててしまいたいくらいなのです」
それからもしばらく城に留まり、いろんな聖者と対面し、そしてその果てに――私は『伝説の聖女の力を宿す娘』であるという結果が出された。
「お主には、我が息子と結婚してもらう」
「えっ」
「息子は二人おる、どちらでもよい。今から選ぶのじゃ」
「ええ……」
「嫌か?」
「あっ……い、いえ。すみません。そのようなことは、ありません」
そして私は第一王子エヴァンと結婚することにした。
彼の方が優しそうな人だったし一緒にいて何となく落ち着ける感じがしたからである。
それに、エヴァン王子は、私の力を悪く言わなかった。
だから惚れた。
その広い心に惚れたのだ。
こうして第一王子の妻となった私は、聖女として頂に据えられ、特別なことはできないが魔法を使いつつ国のために働いた。
ずっと嫌いだった力。
他人と異なる魔法の才能。
でも今は――そこまで嫌いだとは思わない。
むしろ少しだが好きになれてきた。
これが定めなら、私は、その定めのために生きてゆこうと思う。
◆
あれから数年、私は今も国のために働いている。
一年ほど前隣国と戦争の危機になった時には少々はらはらしたけれど、それも何とか何もなく越えることができ、そして今に至っている。
夫であるエヴァン王子との関係も良好。
子にも恵まれ。
何の問題もなく生活できている。
平穏と幸福、奪われ続けてきたそれを、今は手に入れられているのだ。
ちなみに。
かつて私に心ないことをしてきた人たちは今日に至るまでに消えていったようだ。
両親は私がいなくなってから喧嘩ばかりするようになり、ある晩、カッとなった父が母を殴ってしまった。で、それによって母は死亡。そのショックで父自身も心を病み、牢に入れられてからも父は言葉を発することすらできないような状態で、一日のうち十八時間以上寝ていたそうだ。
そして、私が生まれ育ったあの町は流星群の墜落で滅亡。
そこに暮らしていたほとんどの人が巻き込まれて死亡し、私くらいの年の者たちもそのほとんどが命を落とすこととなった。
その中には私を良く思っていなかった者たちも多くいることだろう。
私を虐めていた子らも、きっと、骨すら遺らず灰となったのだろうと思われる。
そして、オーガレットはというと、私に婚約破棄を告げた一週間後に愛犬が謎の死を遂げたところから数多の不幸に見舞われ――大事と思っていたものをすべて失うようなこととなってしまい、心が壊れ、近くの湖に飛び込んで自ら最期を迎えたそうだ。
だが私は生きている。
それも幸せに。
そう考えると、人生とはよく分からないものだ。
不幸だった人が幸福に生き、幸福だった人が不幸な死を迎える――そういうこともあるのだから。
◆終わり◆




