それだけが生きがいなのかというくらい浮気する婚約者とは、付き合っていても良いことなど一つもありませんね。
「お前との婚約なんて……破棄してやるッ!!」
浮気していた婚約者マルドレッドからそう告げられたのは、十度目の浮気が発覚した日の夕暮れ時だった。
「お前は心が狭すぎだ! 酷いことばかり言って! やたら厳しくして! 交友関係くらい好きにさせてくれよ!」
マルドレッドは浮気がばれたら毎回こういうことを言う。
多くの言葉を驚くくらいの勢いで発して、私が言葉を発しづらいようにしてくるのだ。
「でも浮気はさすがに、見逃せません」
だが、これは十度目。
もうそろそろ許せはしない。
一度や二度ならまだたまたまそうなってしまったということもあるだろう。けれども十度となれば、もはや偶然とは思えない。むしろ、わざとやっているのかと思ってしまうくらい。それも短期間にだからより悪質。十回もそういうことを繰り返すというのは、さすがにやり過ぎだろう。
「真面目かよ! いいだろ、ちょっとくらい。何もお前と結婚しないなんて言っていないんだから」
「それも、十度目ですよね?」
「知るか! 俺は俺の友好関係を壊す気はない」
「すべてやめろなんて言っていません。ただ、浮気にあたるようなことはやめてほしいと言っているだけです」
「知らないよ! うぜえ! だから婚約破棄するって言ってんだろ!」
マルドレッドは両足を交互に地面に叩きつけどすどすする。
まるでごねる子どもよう。
彼はどこまでも子どもみたいだ、精神的に未熟。
穢れた子ども――これがマルドレッドを言い表すに相応しい言葉だ。
「もうお別れ、ということですね?」
「ああそうだよ!」
「分かりました。では……失礼します、さようなら」
その後私は知人の協力で裁判を起こし、彼から多くのお金を奪い取ることに成功した。
だからといってにこにこになれるわけではない……。
でも、何もないよりかは嬉しい。
あんな思いをさせられて何もなく終わるなんて、それこそ納得できないから。
――裁判終了から二ヶ月が経ったある日、マルドレッドは、かつて一時期付き合っていた女性に刺されて死亡した。
なんでも、その女性は、マルドレッドに結婚をほのめかされていたそうだ。で、結婚に関するお金を既に払わされていたそう。しかしお金を出したにも関わらず一向に話が進まず、問い詰めたところ、急に逃げられてしまったそうだ。
つまり、マルドレッドはその女性に対して詐欺師のようなことをしていたのだ。
人を殺すのは良いことではない。
たとえどんな理由があったとしても。
でも、その女性も、きっと色々悩んだことだろう――そして、彼を殺めるというところにたどり着いたのだろう。
それを思うと、女性が少し可哀想な気もした。
お金を奪われ。
夢を失い。
すべて幻でしかなかったと気づいた時の虚しさ。
――それはかなり辛いものだろう。
そうそう、ちなみに私はというと、現在婚約者がいる。
彼は東国から輸入されている納豆というものをこの国にヒットさせた会社の社長の息子だ。
彼との関係は良好。
話は順調に進んでいる。
◆終わり◆




