親同士が決めた婚約者の彼と、私はそこそこ上手くやれていると思っていたのですが……。
「お前と生きていくなんて、絶対に嫌なんだよッ!!」
親同士が決めたことで婚約者同士となった、私と彼アルファ。
運命に導かれたわけではない。
刺激的な恋があったわけでもない。
でもそれなりに上手くやってきた――つもりだったのは私だけだったのか。
「俺はなぁ! もっと素敵な女性と一緒になって幸福に生きていくんだ! お前みたいな地味~で普通~な女なんてどうでもいいんだ!」
ちなみに、このやり取りはすべて録音されている。
私の録音魔法によって。
「酷いこと言うのね」
「事実だからなッ!!」
「そう……」
「お前みたいななーんのとりえもないやつと生きたって、どうせ、ろくなことないに決まってる!」
「そうかしら」
「そうだよ! お前みたいなのと一緒にいるだけで人生棒に振る!」
アルファは気づいていないだろう、録音されているなんて。
でもそれでいい。
今は気づかないでいてくれる方がありがたい。
だって、その方が、加減せず思う存分酷いことを言ってくれるから。
「婚約は破棄だ! さっさと消えろ、地味女!」
こうして婚約は破棄となった。
◆
あれからどうなったか?
すべては上手くいった。
実に面白くて。
話が思いのままに進んだ。
私はあの後アルファの声を録音したものを世に出した。
で、それによってアルファは社会的に堕ちた。
身勝手な理由で婚約破棄した、それだけでも問題行動に近いものだ。しかしそこにさらに相手を酷く言う言葉が並んでいるとなれば、それはもはや罪に近いものである。少しも遠慮せず心ない言葉を並べている音声が出たとなれば、多くの人が彼から離れてゆくもの。すべて私の想像していた通りに進んだのだ。
そうして社会的に死んだアルファは、この世に絶望し、最終的には自ら死を選んだようだった。
ま、それも彼の行動が招いたこと。
私に非はないし、私には罪もない。
ちなみに私はというと!
あの後幸せを掴めた。
というのも、伯父の紹介で紳士的な青年と巡り会えたのだ。
彼は紳士的な人、良い家の出だが高圧的なところは少しもない――そんな、とても良い人だ。
安定感のある彼となら穏やかに歩んでゆけると思う。
◆終わり◆




