婚約破棄を告げられたうえ殺されそうになったのですが……危機的状況に陥ったことで魔法の才能が開花しました。
「お前との婚約は破棄とする!!」
そう宣言されたのは、大雨の日だった。
数ヶ月ぶちの豪雨。
朝から凄まじい音がしていた。
そんな日に婚約者であるリフイールから「我が家に来い」と言われ、私は仕方なく馬車で彼の家へ向かった。
濡れたのは気持ち悪かったけれど……。
でも、こんな天候の日に呼ぶくらいだからきっと大きな良いことなのだろう、と思っていた。
しかしそれは間違いだった。
「お前と婚約してから俺はいつもあれこれ言われてきた。趣味が悪い、とか、あいつといるとお前までぱっとしなく見えるな、とか。俺がどれほど辛い想いをしてきたか……お前に分かるか? 俺があれこれ嫌なことを言われるのは、すべてお前のせいなんだ! 分かるか? お前のせいで、完璧な俺に傷がついたんだ!! どうしてくれる!! 俺の完璧さに傷をつけて! これは、一度謝って済むような話ではないんだぞ!!」
リフイールは感情的になっていた。
「何を黙ってる!」
「あの……」
「お前のせいで俺は傷つけられてきた! 全部お前のせい! お前がいたせいで、お前が婚約者になったせいで、俺は生きてゆけないくらいの恥をかいたんだ!」
しまいに彼は棒状の木材を取り出して。
「全部お前のせいだ――死ねええええええッ!!」
それで殴ろうとしてきた。
私は咄嗟にそれをかわす。
しかし彼はまだ殴る気でいるようで。
再びこちらを見てくる。
その顔はまるで――悪魔にでも憑かれたかのよう。
「お前なんて生きている価値がない! 今すぐ消えろ! そうだ、死ぬんだ! 死んで償うんだぁぁぁぁぁぁッ!!」
部屋の隅に追い詰められて、もう駄目だ、そう思った――が、その瞬間、身体の前方に出していた手から白い光が放たれる!?
何が起きたのか分からなかった。
でもその光は確かにこの手から溢れていて。
放出された光はリフイールに絡みつく。
「う、うぎゃあああああああああああ!!」
割れるような悲鳴を放つリフイール。
彼は苦しんでいた。
白い光によって。
身を裂かれるほどの苦痛を味わっているかのようだった。
「がああああああああ!! ぐぼあああああああああ! がああああああ! た、たす、け……ぎゃあああああああああああああああ!」
それから数秒、リフイールは床に倒れた。
その時には彼は死んでいて……。
婚約破棄どころか、永遠の別れとなってしまったのだった。
◆
あの日、リフイールに襲われ絶体絶命の状況に追い込まれた時、光魔法の才能が花開いた。
そして私は今、その力を使い、魔物を退治する魔法使いとして働いている。
既に数回国王からの表彰も受けた。
そのくらいの才能があったのだ。
私は魔法を使えば誰よりも優秀だった。
これもまた人生。
愛だけが、結婚だけが、生きるということではない。
◆終わり◆




