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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 3 (2023.1~12)  作者: 四季


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薔薇が咲いたので夫と見に来ました。~大事にされない日々も婚約破棄も越えて幸せへたどり着けました~

 薔薇が咲いたので夫と見に来ました。


 今の夫とは先日結婚したばかり。

 私たちは今とても幸せな日々の中にいます。


「よく晴れたなぁ」

「そうね」


 日常は穏やかそのもの。

 こうして笑顔でいる私を見て決して明るくない我が過去を想像する人なんていないでしょうね。


「こんな日なら薔薇もきっと綺麗だろうね」

「ええそう思うわ」

「でも君は薔薇よりも――」

「いいわよ、そういうお世辞は。それより早く行きましょ」


 でも、かつて私は、不幸でした。


 親からはろくに愛されず育ち、いつも華やかな妹と比べて見下され、さらに初めての婚約者からは婚約後数週間で「真面目過ぎる、身が固すぎる」などと言われて婚約破棄――今の夫である彼に出会うまで、私は何かとついていない人生だったのです。


 でも彼と出会ってすべては変わりました。


 ある意味、彼は恩人です。


「うわぁ! やっぱり綺麗だなぁ」

「予想通り、いえ、予想以上ね」

「感動してるよ今」

「私も。私好きなの、薔薇」

「天気も良いし最高だね。じゃ、回ろうか」

「ええ、そうしましょう」


 妹はわがまま過ぎて婚約破棄されそのショックで自らこの世を去り、両親は妹の自死に関する件で大喧嘩になって離婚したそうです。


 ――つまり、忌まわしいあの家はもうないのです。


 また、元婚約者の彼も、私を別れてから何かと不幸に見舞われるようになったそうで。

 一夜だけと思って手を出したところ変な女につきまとわれ、ストーカー化した彼女に最終的には襲われて殺められてしまったそう。


 ……まぁそれもまた彼の人生なのですが。


 そんな感じで、皆、幸せにはなれなかったようです。


 なんだかんだで結果的には私が一番幸せになれたのかもしれませんね。


「この青いの凄いなぁ。綺麗だなぁ。去年はなかったよね」

「ええ。新種かしら」

「自然な色じゃないって嫌う人もいるみたいだけどさ、嫌いじゃないよこういうの」

「私も好き。綺麗だもの」


 穏やかに薔薇園を散策する私たち夫婦を、青空はそっと見守ってくれています。


 何を言うでもなく。

 指摘するでもなく。


 それでもそっと、心に寄り添うように。


 ……そんな空が私は好きです。


「全部青だったらびっくりするけどさ、ちょっとくらい個性的な色があったっていいと思うな」

「私もそう思うわよ」

「ある意味多様性? 色々あっていいと思うなぁ」

「そうよね、見ていて楽しいし」

「でもやっぱり王道の色も好きだな!」

「それはもちろん!」


 あれこれ語り合いながら歩く時、この人の隣にいられて良かったと強く思います。

 細やかな日常の中にこそ幸せはあるのだと気づかせてくれたのもまた夫である彼なのです。



◆終わり◆

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