異種族と人間の混血だった私は、それによって愛されず、婚約破棄までされてしまいました。でも本当に愛してくれる人は他にいたのです。
私ポルネはモンスター娘。
スライムと人間の血を半分ずつ引いていて、外見は人間の女性に似ているのだけれど体表の状態はスライム寄りなの。
つまり、触れるとぬるぬるするーってこと。
それでも一応普通の女性として生きてきたのだけれど、そんな身体の状態ゆえ正直あまり良い反応は貰えずに生きてきたわ。
「あの子、ぬるぬるできもーい」
「臭そう」
「気持ち悪いわよね」
「あんなの人間に入ってこないでほしいわよ」
そんな私にも、一応婚約者はいる。
年頃になって親から「何でもいいから早く良い相手見つけなさいよ!」と言われて知人に相談した時に紹介してもらった人だ。
その人、婚約者の、名はクルーブ。
彼は爽やかそうに見える茶髪の青年だった。
「ポルネさんですかー、どうぞよろしく!」
「は、はい」
「モンスターの血を引いていらっしゃると聞きましたが、本当みたいですね!」
「はい……すみません、こんなで」
「いえいえ、いいんです! お気になさらず!」
初めて出会った日、クルーブはそんな風に言ってくれた。
彼は嫌な顔をしなかった。
それどころか笑顔を向けてくれた。
だから信じていたのに――。
「やっぱちょっと無理なんで、婚約破棄しますね!」
婚約から数ヶ月が経っている今日、クルーブは笑顔でそう告げてきた。
「え……」
「だから、言っているんですよ、婚約破棄するって」
「そんなっ……」
「あーもうしつこいですよ、やめてくださいそういうの」
「あ……」
「やっぱ無理だなーって思ったんで。関係はもう解消します。あ、もう二度と寄ってこないでくださいね」
こうして、まさかの流れで婚約破棄されてしまった。
まさかこんなことになるなんて……。
「ポルネさん、婚約破棄されたそうね」
「酷いわねぇ」
「いやいやでもあんなべったべた女よ? ふつー無理でしょ」
「ま、それもそうね」
そのことについても近所の人たちからは色々言われてしまったけれど、気にしないでいることにした――いちいち他者の言葉に落ち込んでも無駄だと思ったから。
だってそうでしょう? 落ち込んで生まれるものなんて何もないでしょう。
――婚約破棄から三週間。
「貴女がポルネさんですかっ!?」
「え……」
ある昼下がり、家へやって来たのは一人の童顔気味な男性。
「ボク、アッフォレードといいます!」
「そ、そうですか……」
「こう見えて王子なんですよ? ご存知、ですよね?」
「あ……あの、申し訳ありません、存じ上げておらず……」
「嘘でしょ!?」
だってね、私、あまり教育は受けずにここまで来たの。
受けられたのは最低限だけの教育。
親が、勉強なんて少しでいい、って言っていたから。
「ええと、アッフォレードさん……でしたよね」
「うんうん!」
「それで、何かご用でしょうか?」
「今日は君に言いたいことがあったんだ~」
「何でしょう?」
「ボクと生きてくれないかなっ?」
その言葉に、私は気を失ってしまった。
「――大丈夫?」
「あ……」
気づけば自室のベッドの上に横たわっていた。
傍らにはアッフォレードがちょこんと佇んでいる。
「ごめん、びっくりさせ過ぎて」
「……い、いえ」
「倒れたからびっくりしたよー」
「すみません」
思えば、これがアッフォレードとの始まりで。
そこから話は進展していった。
そう、私の人生が前向きに動き出したのだ。
少しずつ、一歩ずつ、徐々に――でも、確かに。
物語は始まってゆく。
――そして、それから数年が経ち、私は王子アッフォレードと結婚することとなった。
「いやぁ、君と結ばれることができてうれしいよ~」
「そうですか」
「君は嫌だった?」
「いいえ、嬉しいです貰っていただけて」
「もうっ。そんな言い方っ、駄目ですよ!」
「ええ……」
ちなみにクルーブはというと、私との関係を解消した数日後に流行り病にかかってしまい、それをこじらせてしまって死亡したそうだ。
クルーブの母親は息子を失ったために正気を失い、クルーブの父親はあっという間に一人ぼっちになってしまったらしい。
両親に関しては少し気の毒にも思うわ。
でもクルーブのことは可哀想とは思わないし思えない。
だってそうでしょう?
一度私を傷つけた人よ。
私を傷つけておいてのうのうと暮らしていられるようになんて、運命がそんなおかしないことを選択するわけがないじゃない!
◆終わり◆




