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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 3 (2023.1~12)  作者: 四季


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僕はきっともう一生誰とも結婚しないと思う。~婚約破棄と死別と~

 僕はきっともう一生誰とも結婚しないと思う。


 ――そう、確信があるんだ。


 といっても、生まれたばかりの時からそういう主義だったわけじゃない。ううん、むしろ、結婚というものに憧れていた時期もあった。周りから「夢みる乙女みたいよね~」なんて言われていたくらいで。周りよりも結婚というものに光を見ていたくらいだった。


 でも、ある二つの出来事によって、僕はそれを捨てたんだ。


 一つ目の出来事は、婚約破棄。

 僕がまだ十代終わりだった頃に親と親が話し合って決まった婚約者の女性レイディに浮気されたうえ婚約破棄までされてしまったこと。

 しかも別れしなに酷い暴言を吐かれて。

 それによって僕は女性という生き物が怖いと感じてしまうようになったんだ。


 けど奇跡は起きた。


 その後、傷心の僕の前に現れた一人の美しい女性。冒険者をしている、と聞いた時には驚いたけれど。その女性リリスは、美しい女性でありながらしっかりしていて頼もしくてまるで王子さまみたいで。僕を励まし支えてくれた。


 で、やがて婚約した。


 僕はリリスとなら幸せな未来へ行けると思えるようになっていた。


 それでこれが二つ目の出来事なのだけれど。


 ――その彼女が殉職してしまったんだ。


 あれは夏の終わり、強い雨が降り注ぐ日だった。僕が当時住んでいた村で突然発生した魔物の襲撃。彼女はすぐに駆けつけてくれた。彼女の役割は一般人の避難誘導で。


 でも、その途中、転倒して立てなくなっていた僕を救おうとして――彼女は僕の目の前で魔物に殺された。


『……前向いて、生きなきゃ駄目だよ』


 死に際、彼女はそう言って。


『きっと……幸せに、なってね』


 僕を見て、笑ったんだ。


 ――その時僕は決めた、彼女のために一生を捧げようと。


 リリスは僕を庇って死んだんだ。

 なのに僕はリリスを忘れて生きるなんて、そんなのはあり得ない。


 もう、リリスのために死ぬことはできないけれど……でも、ならば、せめて彼女が最期に望んだように前を向いて生きようと思う。


 死んだらまたきっと会える、そう信じている。


 だからこそ強く生きなくちゃ駄目なんだ。


 リリスに次に会えた時、恥ずかしい思いをしなくていいように。

 強く在ろう。

 そして、彼女にまた笑みを向けてもらえるように。


 僕は、一人で生きていく。


「リリス……ずっと、君だけが特別だから」


 僕はきっともう一生誰とも結婚しないと思う。


 ――そう、確信があるんだ。


 あ、そうそう、ちなみにレイディは。

 あの後も何度も浮気を繰り返して、結局誰とも結ばれることはできないまま大人になってしまったそうだよ。

 それで今は周りから「行き遅れ」とか「無価値」とか言われて酷く落ち込んで家にこもる日々なんだって。


 行き遅れとか無価値とかはちょっと酷い気もするけど……でもまぁ彼女の行動のせいだから自業自得な面もあるよね。



◆終わり◆

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