あまり好かれていないことには気づいていましたが、まさか、婚約破棄されるとは思いませんでした。~それでも未来はまだ決まっていない~
そこそこ権力のある父のもとに生まれた私は、新興領地持ちの家の息子であるレラフィブと婚約することとなった。
でも、それでもいいかと思っていた。
昔から恋などする機会なくある程度の年齢になった私だったから、結ばれたい人はいなかったし、相手など誰でも同じというくらいに思っている部分もあったのだ。
あまり知らない人が相手であったとしても、婚約してから段々互いを知ってゆけばいい――そう思っていた。
しかし甘かった。
「お前とは婚約はしたが愛してなどいないからな! 勘違いするなよ!」
レラフィブは私を知ろうとなんて一切してくれず。
「一応婚約してやってるだけ感謝しろよ! それだって仕方なくなんだから! 俺が折れてやったんだから!」
いつも酷く当たり。
「お前みたいなやつ、どこへ行っても愛されないんだから、ここで大人しくしてろ! で、俺の行動には口を出すな!」
生活においては、私の気持ちなど考えず好き放題。
「お前、他の男と会うなよ。そんな恩知らずなことしたらどうなるか……分かってるか? そういうことは絶対にするなよ。あと、派手な服を着るのも禁止な」
一方で私の行動にはあれこれ言ってくる。
そんな日々にもやもやしていたところ――。
「悪いな、婚約は破棄するわ」
レラフィブは突如そんなことを告げてきた。
なんということのない平凡な日。
特徴を見つけられないような、ほどほどに晴れた日のことだった。
「婚約破棄……?」
「そ。そういうこと。っていうのも、お前に構ってちゃ不幸になるーって思ったんだ」
「それは一体……」
「一度きりの人生だから、さ。やっぱ、本当に好きな人と結ばれたいわけよ。そのくらいは分かるだろ? これまでは我慢してお前と婚約者でいたけど、やっぱそれは無駄だなーって」
良く思われていないことは分かってはいたけれど……いざ本当にこうして直接言われてしまうと、良い気はしないものだ。
「だから終わりにすることにしたんだわ」
「そうでしたか」
「分かったか?」
「はい、分かりました」
「話が早くて助かるわ。じゃ、そういうことで。これで永遠のお別れな! ばいば~い!」
「あ、はい、そうですね。さようなら」
こうしてレラフィブとの縁は切れた。
ただ、すべてがここで終わったわけではない。
婚約破棄を知った父が激怒したのだ。
そして彼はレラフィブに罰を与えるべく動き出した。
その後、レラフィブの家は、我が父とそれに協力した国王によって、持っていた土地と資産を半分近く没収されることとなった。
それからというもの、彼の家族は喧嘩ばかりするようになったそうで。特に夫婦喧嘩は酷かったようだ。で、夫から怒鳴られたストレスを妻は息子であるレラフィブにぶつけるようになっていったそう。最初こそ流していたレラフィブだったが、次第にいつもいらついているようになり、ある時レラフィブは当たり散らしてきた母親を一発殴って殺めてしまったそうだ。で、それによって、レラフィブは親殺しの罪で逮捕されたのだとか。
レラフィブは今、自由を手にしていない。
牢の中で許される最低限のことだけをして生きていかなくてはならない状態。
自由人な彼にとってはきっととても辛い日々だろう。
「そんなことになるなんて、父さん、上手くやったのね」
「ああ、このくらいわたしにかかれば容易い」
「権力って恐ろしいわ……」
「嫌か?」
「いいえ。彼に関しては何とも思わないわ」
「そうか、なら良かった」
「でも、驚いてはいるの。まさかそんなに上手くいくなんて、って。父さんは意外と策士ね」
「いやいや、そんなこと。褒められたら照れてしまう」
ちなみに私はというと、後に伯母の紹介で知り合った青年と結ばれ、幸せな家庭を築くことができた。
いや、もちろん、これからもそのための努力は続けなくてはならないのだけれど。
でも最初から最悪だったらどうしようもない。
まずは気の合う良い人と良い環境で新生活を始めたいもの。
そういう意味では大成功だった。
一度は捨てられたけれど、結果的に幸せを掴めたならそれでいい――私はそう思っている。
◆終わり◆




