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モテモテ男と関わるとろくなことがないですね、今強くそう思います。けれども数多の嵐を越えて光ある未来へ進むのです。

 そう、あれは学園時代――。


「フィオレット、君の美しさに惚れた。だからどうか……俺と将来を誓うことを前提として付き合ってはくれないだろうか」


 学園一の人気者でモテモテ男だったクルメーカスからそんなことを告げられた私は、後々ややこしいことになりそうなので断ろうと思っていたのだが、話を聞いた親や親族から関わることを勧められて付き合うこととなってしまった。


 で、その後の学園での生活は暗黒であった。


 女子生徒は皆私を敵のような目で見てくる。悪口は言うし、嫌がらせはするしで、とにかく色々大変だった。が、それでも何とか乗り越えて、卒業後クルメーカスと婚約。話は順調に進んでいたのだが――ある時、クルメーカスに近づく女が現れて。次第にクルメーカスはそちらの女に意識を向けるようになっていった。


 そして、ついに。


「ごめん。婚約だけど、破棄することにする」


 そんな宣言をされてしまう。


 しかもその時のクルメーカスは女リフィアを連れてきていて。


「貴女がフィオレットさんね? 初めまして、リフィアです。あのね? クルメーカス様は貴女より私を愛しているの。もう結婚する気満々でいてくださっているのよ。だから貴女は、女として、私より下なの。分かるかしら?」


 リフィアはそんなことを直接言ってきた。


 彼女は私に競ってきていた。

 こちらは何も競ってなどいないというのに。


 しかも勝った気に満ちている。


 ……競い合いなんてしてないってば。


「そうですか。クルメーカスさんはそちらの女性を選ばれるのですね」

「ああ、そう決めた。リフィアはとても忠実で愛おしい女なんだ、君より遥かに上だよ」

「そう……残念ですが、そう決められたのなら仕方ないですね」

「そういうことだよ」

「ではこれで、私は去ります。さようなら」


 べつにクルメーカスに執着しているわけではない。だからどうしてもというならあげるでも構わない。競い合ってまでクルメーカスを握っていたいとは思わないのだ。


「残念ねぇ、フィオレットさん。せっかく結婚できそうだったのにねぇ?」


 去り際、リフィアは煽るような言葉をかけてきた。


「……貴女とお話することはありません」

「ふん、可愛くないこと。クルメーカス様に選ばれないはずだわ」

「なぜ絡んでくるのですか?」

「なぜ? ふん! 捨てられて可哀想だから構ってあげたんじゃないの! その好意を悪く受け取るなんて、さすが、捨てられる側の女ね」


 なんだかなぁ……。



 ◆



 あれから数年、私は、父の紹介で知り合った若き領主の青年と仲良くなって結ばれた。


 彼は家柄や資産的には人気がありそうな人だったのだけれど、モテモテではなく、しかし性格はとても良かった。


 一緒にいて安心できる、そんな人だった。

 だからこそ私は彼を選んだ。


 もう、人気者なんかに関わりたくない。


 だってそうだろう? 一緒にいるだけで悪口を言われ、喋っているだけで虐められる――そんな人と生涯を共にするなんてことはできやしない。ちょっとした知り合いならまだ良いけれど。そんな人と夫婦に何てなったらどうなる? きっと、一生、周囲から嫌われあれこれ言われるに違いない。平穏をかごごとひっくり返して捨てるようなものではないか。そんな道を敢えて選んで歩きたいか? ……そんなわけがない。


 で、クルメーカスだが、彼は結局あの後次の女に目移りしたために婚約者となっていたリフィアから婚約の破棄を告げられてしまったそうだ。


 そう、クルメーカスもリフィアも幸せにはなれなかったのだ。


 クルメーカスはリフィアに婚約破棄されたことでプライドがズタズタになってしまって、そこから心を病み、転落人生となってしまったそう。


 一方のリフィアも「婚約者がいる男をもぎとっておきながら最後には捨てたみっともない女」として有名になってしまい、以降、男性から警戒されるようになってしまったらしく――結婚したいと思いながらも今もまだ独り身のままだそうだ。



◆終わり◆

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