思ったことはっきり言っちゃう系女子ですが、一度は婚約破棄されてもその後良縁に恵まれました!
あたしね、思ったことはっきり言っちゃうの。
「どうしよう、俺……明日の発表自信なくなってきた……」
「練習すればいんじゃない? 何回でも!」
「練習してないみたいに言わないでくれよ……まぁ一回しかしてないんだけどさ……そこには触れないでくれよ……」
自分でも分かってる。
空気の読めない人間だって。
「あの子ってちょっとぶりっこしているよね~」
「そうかな? あたしの前でも可愛い感じだから意識はしてないんじゃない?」
「何それ、間違ってるって言ってるわけ? 感じ悪」
だからあまり好かれないってことも自覚してる。
でも無理なの。
治せないの。
だって、思ったことを言ってしまうのは生まれつきだから。
「あ~いつ調子乗ってね?」
「だよなぁ」
「ちょっくらしばいてや~ろ~う~か~なぁ~? あっはっはは!」
「駄目だよ! しばくなんて! 暴力は駄目!」
「あーあ、またそういうのかよ。あんたいると萎える~」
「それなぁ」
本当は、相手が言ってほしい言葉を言うべきなのだろうけど。
「ボクかっこいいでしょ?」
「ひげが伸びすぎているのでもう少し整えた方が良いと思います」
「ハァ!? 何て失礼な女!! これはこういうスタイルなのだよ!! 馬鹿にしおって!!」
なかなか上手くいかないものね。
◆
「今日は用があってね」
「何でしょうか? ミシェルさん」
「実は伝えたいことがあるんだ」
「ミシェルさんがあたしを呼び出してくださるなんて珍しいですね。いつもあたしのことは放置なのに」
ミシェル、というのは、婚約者の名だ。
彼は紳士的なことで有名な男性。
けれども私にはあまり構ってくれない。
婚約していてもなお、だ。
「うるさいな。ふん……ま、いいだろう。で、本題に入るが」
「はい」
「君との婚約、破棄するよ」
告げられたのは、終わりの言葉。
好かれている、とか、愛されている、とか、そんな風に思っていたわけじゃないけど――でもはっきりと終わりを宣言されたらやっぱりちょっと辛いし悲しいよね。
あたしが好かれるタイプじゃないのは分かってるけど……。
「わたしはもっと淑やかな女性が好きだ。君のその顔立ちは好きではあるのだが、中身が無理なのだ。ということで、婚約破棄を決めた」
「いきなり過ぎませんか?」
「何だっていいだろ、いちいちくだらないことを言うな」
「えええ……」
「女のクセに口ごたえだけは一人前にするのだな」
「思ったことを言っているだけです」
「そういうところが好きになれないのだよ」
ミシェルは汚物を見るような目で私を見ていた。
そんなにあたしが嫌い?
そこまであたしが不快?
そう思ったくらい、彼はあたしという存在を不愉快に思っているような顔をしていたのだ。
「ではこれにて。終わりとしよう。さようなら」
こうして関係は一方的に断ち切られた。
◆
あれから三年半。
あたしと彼は真逆のような道を進むこととなって、今に至っている。
というと?
あたしはミシェルに関係を解消された後行きつけのレストランで一人の青年に一目惚れされたの。
で、声をかけられて。
そこからその人との関係が始まっていったの。
彼は、初めて、あたしの発言を悪く言わなかった。
それどころか「はっきり意見を言ってくれて嬉しいよ」なんて言ってくれて。
悪いところを悪くないと言ってくれた人は彼が初めてで。
だから気づけばあたしも彼を好きになっていたの。
で、彼と結ばれた。
今は彼と共に幸福に生きているところ。
一方ミシェルはというと、好きになった女性からお金を貢ぐことを求められ言われるままに借金してまで貢いだのだが持ち逃げされたみたい。
つまり、詐欺だったってことね。
ミシェルのもとに残ったのは恐ろしい借金だけ。
愛する人を手に入れることはできず。
借金返済という闇だけが待つ。
そんな状況に耐え切れず、彼はついに自ら死を選んだみたい。
お金で女性の心を真の意味で買えるわけないのに。
甘いよそんなの。
確かにお金は魅力の一つにはなるかもしれないけれど――それだけで自分への愛を手に入れられるわけがないよね。
◆終わり◆