雨の日の婚約破棄はとても辛かったのですが、結果的にはあの時切り捨てられていて良かったです。
婚約破棄と宣言されて、とても辛かった。
あの日は雨の日だった。
屋内開催に急遽変わったパーティーの場にて、私は、婚約者アドベルから関係の解消を告げられた。
人前で敢えてそれを告げるのか。
そんなの悪魔の所業だろう。
敢えて恥をかかせようとしてやっているとしか思えない。
ただ、その時の私は「ここで感情的になってはいけない」と思ったので、強い心を保って冷静に対処し話を終わらせた。
胸の内にあるビー玉は砕けて散って。
心臓の奥まで溢れた紅いものに染まる。
それでも、それでも、私はただ――平気なふりをして――家へ帰って自室に入ってから泣いた。
どうして私がこんな目に。
繰り返す言葉はいつも同じ。
無難に生きてきた。
他人に大きな迷惑をかけたことなんてそんなにない。
なのにどうして私がこんな風な仕打ちを受けなくてはならないのか?
ただただ謎でしかなかった。
◆
そんなある日、鼻炎で行った病院にて、運命の人と巡り会うこととなる。
「こちらへどうぞ」
「あ、はい。――って、え」
案内してくれた彼を見た瞬間、世界が停止したような気がした。
何だろう、この感覚。まるで心すべてを奪われてしまったような、魂を抜かれてしまったかのような、そんな感じ。この感覚を上手く伝わる言葉にするのは難しい。でも確かに存在する感覚。
これは運命、そう明確に感じた。
それから私は彼にアプローチするようになり、そうしているうちに段々仲良くなっていって、いつしか定期的に二人で出掛けるほどの関係にまで進展していく。
彼と出会ってから過去の暗い記憶は徐々に薄れていって。気づけば私は日々の中で幸福を多く感じるようになっていっていた。
――そして私は彼と結ばれたのだった。
◆
あれから数年、私は今も夫婦で穏やかに暮らしている。
夫を見送る朝。
もう何百回も経験した。
でもそれでも、今もあの頃と変わらず、互いに名残惜しさを抱えながら手を振る。
ちなみにアドベルはというと、あの後別の女性と結婚するも上手くいかずやがて離婚を突きつけられてしまったそうだ。
だが彼はそれが嫌だったために妻を何度も殴ってしまったそうで。
彼自身にはそんなつもりはなかったようだがその暴行によって妻を殺してしまい、人殺しとなってしまったようだ。
その事件によってアドベルは捕まり、処刑された。
◆終わり◆




