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038 私たちは欲深き者

 話を要約すると、この世界は戦争だらけだった。しかし120年前の戦争で、大いなる魔法が使える者が参戦し、この世界から欲と飢えを取り除いた。

 考えうるのは世界全体に洗脳の魔法をかけた、ということでしょうね。

 創造神話はまだ1ページ残っている。ただここまでの内容がかなりヘビーだったので、続きを読むか躊躇ってしまった。


「……いや、若山さんがせっかく稼いでくれたんですから、1ページも見逃しませんよ」


 今も汗水流して働いている若山さんの顔を思い出して、最後の1ページを目に焼きつけた。


【主はこの世界が平和になったことを喜び、それを最後の任務とされて大陸中央にて永眠された。そこには人が近寄れない結界を張り、永遠に祀られることとなる。これより世界は平和となり、憎しみも、恨みも、渇きも飢えもない世界となる。人民たちよ、新時代を迎える覚悟はできているだろうか。主であるウータンに栄光あれ】


 ウータン……この世界の名前ですか。

 主と呼ばれる者の名前もウータンとされている。これは偶然なんかではないでしょう。ウータンというものがこの世界を魔法で作り変えた。人々の思想、そのものから。

 私は創造神話を閉じ、図書館を後にした。

 珍品堂に帰ると、看板娘さんが笑顔で手を振ってくれた。


「おーい! 佐藤さーん!」

「ただいまです、若山さん。今日も盛況でしたか?」

「もちろんです! たくさんの人に購入してもらいました!」

「それはよかった。若山さんの商才が光りましたね」

「えへへ……こんなに褒められるなんて滅多にないので……うぇへへ」


 ニヤけが止まらない様子ですね。まぁこの世界の真相を知ることができたのは若山さんがいたからです。この世界攻略のMVPは間違いなく若山さんですね。

 私は商人さんの元へ足を運び、頭を下げた。


「部下である若山さんのサポートをありがとうございました。私たちはこれから元いた国に帰ります。より一層の繁盛、勝手ながらお祈りさせていただきます」

「なんでぇ帰るのか。あの嬢ちゃんは商才あると思ったんだがねぇ」

「ふふ、こっちの方が転職かもしれません。ですが……」


 私たちはこの世界にいるべきではない。

 この世界はたとえ洗脳された結果だとしても、平和に回っている。そこに我々のような欲を持つ人間がいてはならない。

 何よりこの世界は……日本の脅威になるとは思えません。

 私はもう一度商人さんに頭を下げ、若山さんの元へ戻った。


「さぁ若山さん、日本に帰りましょうか」

「えー! せっかくお店が盛り上がってきたところなのに……」

「……希望するなら置いていきますが?」

「あぁ嘘ですごめんなさい帰りますぅぅ!」


 泣きついてきた若山さんを振り払って、私は田辺課長に電話をかけた。


『佐藤くんお疲れ様。どうだったかな?』

「調査した結果、この世界は日本の脅威にならないと判断しました」

『そうかい。それならよかった。じゃあ日本に転送するけどいいかな? 文化調査は進んだかい?』

「はい。とびきり勉強してきました」

『それならよかった。では佐藤くんと若山くんを転送します』


 私たちは眩い光に包まれた。

 少しきな臭い世界でしたが、まぁ平和であることが悪いこととは言えません。

 願わくば、この平和がずっと続きますように。そして次の世界もお手柔らかに……。

ウータン編完結です。

明日の更新はお休みします。

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