020 デートの約束
「よっしゃー!! 俺がチャンピオンだぁ!」
どうやら最優秀マジック鉱石が決まったらしく、1人の男性が歓声をあげた。
その男性の前に置いてある鉱石は一際輝いており、ルウシェさんにも劣らぬ美しさを誇っていた。
最優秀マジック鉱石が決まってからは淡白なもので、すぐに表彰式に移行したのちに祭りは終了してしまった。
「なんというかあっという間でしたね」
「もっと遊びたかったですー」
「……やはり仕事とは思っていなかったんですね」
でもこれも一つの考え方かもしれないですね。異世界攻略も遊びと捉えることができたなら、私の肩の荷も降りるでしょうか……。
「ねぇサトウ、ワカヤマ! この集落には温泉っていうものがあるんだけど知ってる?」
「え!? 温泉!? あのお湯に入る温泉?」
「う、うん」
「知ってるよ超知ってる!」
「な、なら入りにいかない? ここの名物だし……」
思わぬ行幸……これも楽しめばいいんですかね。
願わくばこの温泉が凝り固まった私の考え方もほぐしてくれますように。
集落の中心から外れるとたしかに温泉街が広がっていた。
「この辺りに火山でもあるんですか?」
「えぇ。ウニローニャ火山っていう大きな火山があるわ」
「その恵みなんですね」
「え? なんで火山が恵みなの?」
どうやら温泉と火山の関係性については知らないようですね。まぁ野暮なことを言うのはやめておきましょう。
温泉といっても日本のようにしっかり整備が行き届いているわけではなく、ゴツゴツした岩肌が露骨に浮き出ていた。まぁこれはこれで風情があるかも?
「いいですね! 大自然の温泉って感じで!」
「若山さん、裸で仁王立ちしないでください」
はしたない………………が、やはり大きいですね。どうしたらあんなに育つのでしょう……。
「ほら、ぼさっとしないで体を清めるわよ」
「はーい」
リリーベルさんは年相応に成長途中といった感じだ。しかし……なんかその体からは私よりも大人なことを経験したかのような余裕を感じる。深読みしすぎでしょうか。
「リリーベルさん、この光っているお湯は?」
「聖水って言って、温泉の中でも希少な湯よ。これを湯船に入る前に体にかけるとしっかり清められるわけ」
「なるほど……」
希少でないのなら少し持ち帰りたかったですが、風呂桶5杯分くらいしかないのでやめておきましょうか。
少量の聖水を頭からかぶるとたしかに体が清らかになった気がする。その勢いのまま湯船に入ると、しっかり日本の温泉に引けを取らない暖かさを感じた。
「ふぃー、五臓六腑に染み渡る……」
「佐藤さんオジサンみたいです……」
「えっ!?」
日本酒でもあれば……と思っていたらなんか罵倒されたんですけど。こ、これでもまだ23なのに。
「それにしても佐藤さんの肌って綺麗ですよね。普段どんなスキンケアをしているんですか?」
「スキンケア? してませんよ」
「……冗談だなんて珍しいなー」
「いや、してませんよ」
「……ええっ!?」
本気で驚かれてしまった。
まぁもちろん私もそういった美容コーナーに足を運んだことはありますが、結局よくわからなくて帰ってしまうんですよね。
「それはよくないですよ佐藤さん! 日本に帰ったら一緒にショッピングモールに行きましょう! 約束です!」
「えぇ……まぁいいですけど」
「あは、デートの約束ですね」
「ただの買い物でしょう?」
「大人な買い物はデートなのです」
なんだかプライベートまで若山さんに侵食されそうで怖いですね。
ただまぁ少しだけ楽しそうって思えるからいいかもしれません。
私たちはその後数日に渡って温泉を楽しんだ。そして……ついに邪骨大帝が指定した戦争の日を迎えることになるのです。




