妖精、困ったさん
ある時、家の中で探し物が見つからない少年がいました。
そこに困ったさんがやってきます。
「コマッタノ?」
「ネェ、コマッタノ?」
困ったさんがやってくる。
困っている時にやってくる。
靴下なくして、困ったな。
「片っぽないよ!」
リモコンなくして、困ったな。
「テレビのまえに置いたはずなのに!」
困ったさんはそういう時に、やってくる。
でもでも、絶対。
何もしない。
「コマッタノ?」
「コマッタノ?」
困ったあなたと一緒に困るだけ。
困ったあなたと一緒に困るために、やってくる。
「何しに来たの?」
「ワカラナ~イ」
困ったさんは自分が何をしにきたか分からないから、自分の事でも困ってしまう。
そのうちあなたは、自分の困ったがどうでもよくなってしまうから、困った事がなくなった気配に気が付いた困ったさんは、自然とどこかに行ってしまうのだった。
もしかしたら世界中のどこかで誰かが困った事に、なっているかもしれないけれど。
もしかしたら世界中のどこかであなたよりより困った事に、なっている誰かがいるかもしれないけれど。
そんな事を考えたら、少しだけ困ったが軽くなるような、気がしなくもないかもしれない。