37 愛娘、別方向に驀進中
順調に学園生活を謳歌している我が娘。まあ、新学期早々にバロー嬢とのトラブルはあったが、あれのおかげでバロー嬢にはレティへの接近禁止が言い渡されたので、平和に過ごせているらしい。ついでに普通科の学舎への立ち入りの制限掛けてくれたようなので、クラスメイトにも喜ばれたんだとか。レティ以外にも迷惑こうむってた生徒が複数いたみたいだし、下の学年へも触手を伸ばしてたみたいだからそっちからも感謝されたらしいよ。
で、だな。
レティはレティで、本格的に将来を見据えた行動に出始めたんだよ。その一環なんだろうけど、あろうことかエルに師事することになって……というか、俺が気づかなかっただけで、だいぶ前から教えを乞うていたらしいんだ。
その結果。
ウチの可愛い可愛い愛娘が規格外娘どもの影響をモロに受けてることが判明したんだけど、どうしよう。
「見てください、お父さま、お母さま! エルヴィラお姉さまに教えて頂きましたの!」
なんか、笑顔のレティに庭に連れ出されて見せてくれたのは、エルが得意とする防御結界のひとつ。対魔法防御系だと最強なんじゃないかな、これ。なんでウチの子が使えるようになってるのかな、古代魔法系だからかなり難易度高いって聞いたことあるんだけどなんかオカシくないかな色々と。
「あらぁ、すごいわレティ。いつの間に覚えたの?」
奥さん、本当に動じないね。俺、ちょっとマジでビビってるんだけど。
「お姉さまたち、最近は良くいらしてくれるでしょ。その時に、少しずつ教えて頂いてたの」
「まあ、頑張ったのね。偉いわぁ」
奥さんがレティを良い子良い子してますよ、レティも嬉しそうにしている。うん、良い子なのは同意だけど、なんか別方向に驀進してないかい? 俺のキノセイ?
「他にも教えて頂いているの?」
「あのね、やっと物理防御の上位版を教えてもらえるようになったの。でも、今まで教えてもらってたのよりずっと難しくて、まだちゃんとは発動できなくて」
ちょっとだけ、しゅんとしながら娘が言ってるが……待って待って、その言い方だと、中級まではすでに使えるようになってるって事!?
「使えるようにはなりそうなの?」
「なるわ!」
「そう、さすがは私たちの娘ね。お兄さまに自慢しなくちゃ」
いやいやいや、待って待って奥さん、義兄に言うのはちょっと待って。あの人、絶対に妙な方向に暴走するから。つーか、なんでそんな治療と防御に特化した魔導師みたいになってるの、この子。いざ事が起こったら間違いなく最前線へ投入されるじゃねーか、マジで何してくれてんのあいつら。
「でもねぇ、レティ。これを公表したら、王家が黙っていないと思うわ。王宮魔導師団か、どこかの騎士団の後方支援部隊にって勧誘が来るのではないかしら」
奥さんが小首を傾げながらそんな事を呟いてるけど、多分それ、間違いなく来ると思う。勧誘というか、恐らくほぼ強制で。
治療魔法の上位版を使えるようになっている上に、こんな防御系の最高峰と言われている結界まで使えるようになったら絶対に逃げられないだろ。
さて、どうしたもんか。
「勧誘が来てくれるなら嬉しいわ。私、近衛騎士団の後方支援部隊に行きたいの」
考えを巡らせていたら、まさかの意思表示。
え、レティ待って。そんなにはっきり目標もってたの? つーか、なんで近衛の後方部隊?
「どうしてかしら?」
「だって、近衛騎士団ならシルヴァンも行くでしょう。あまり離れてると心配かけちゃうから、同じ組織内ならばシルヴァンも許してくれるかなって思ったの。お姉さまたちに指導していただいて身に付けたのだから、この力を役立てるところへ行きたい。私だって大好きな家族を、大切な人たちを守る側になりたいの。それに、お兄さまたちもいらっしゃるから、色々と教えて頂けるかと思って」
あらやだ、この子ちゃんと考えてる! 考えて対策を立てた上で絞り込んでるよ!
「そう。きちんと先の事を考えているのね?」
「もちろんよ! お姉さまたちにはずいぶんと反対されたけど、無理を言って教えて頂いて本当に良かったって思ってるの」
それ聞いて、ちょっと意外だった。
あいつら反対したのか。てっきり面白がって教えたのかと思ってたのに。
やべぇ、完全に誤解してた。すまん、エル。ミサキ。
そして、娘の決意に奥さんは嬉しそうだよ。
「それでこそグランジェ家の娘よ。大切な人は自分の手で守らないとね」
「はい! これを習得できれば、万が一、シルヴァンやお父さまがいないときでも、自分自身もお母さまも守れるようになれるって思ったの。そうすれば、お父さまもシルヴァンも、心置きなく戦う事に集中できるでしょう? それって、結果的にお父さまたちを守ることにも繋がるかなって。だから、どうしても教えて頂きたくて、お姉さまたちにはすいぶんと無理を言ってしまったわ」
「そうだったのねぇ。二人には私からもお礼を言っておくわね。でも、レティ。本当にがんばったのね」
ウチの天使二人の会話に、俺、絶句だよ。
俺たちを守れるようにって……レティ、そんなこと考えてたの? その為に、ずっと頑張ってたの?
あ……いや、ちょっとマズイ。泣きそう。
「ああもう……ウチの天使たちは本当に」
奥さんごと抱きしめたら、きょとんとされたよ。
気持ちは嬉しいんだよ。泣きたくなるくらい、嬉しい。でもね、親としては危険な事はさせたくないし、安全なところで大人しくしていてほしいって思う。息子ならまだしも、娘にそんな事させたくはないんだよ。でもまあ、そう言っても聞かないんだろうね。俺とエレーヌの子だし。
「本当に、黙っては守らせてくれないねぇ」
溜め息交じりに呟く。
物理的にというかまあ、目に見える守りを固めているのは俺だけど、俺の手の届かない所や貴族間の情報戦などではエレーヌが俺を守ってくれてる。お互いに足りない所を補う形で支え合ってはいるんだが、俺としては本当はそういった部分も含めて丸っと守ってやりたいんだ。奥さんにかかる負担、極力減らしたい。俺の心の平穏の為にも、いつまでも元気でいてほしいからさ。
「黙って守られるだけなど、グランジェを名乗る資格はございませんわ。そうでしょう、旦那さま」
にっこりしながら言われると、否定できないよ。
「うん、勇ましい君も大好きだよ」
「お父さま、私もお父さまの娘ですもの。お父さまのように戦えなくとも、手助けをするくらいは出来るようになりたいの」
「うんうん。本当に頼もしい娘だ」
「本当は、お姉さまたちみたいに戦えるようになりたいのですけれど」
「それはやめておこうか」
マジ止めてあいつら目指すとかないから。つーか、無理だから。
でも、レティは不満だったらしい。ぷくっと膨れてる。そんな可愛い顔してもダメです、お父さんは許しませんよ。
「どうして?」
「あのね、あいつらはあそこまで強くならなければならない理由があったの。でも、レティは違うだろう。前に立つシルヴァンや私の支援をしたいんじゃないの?」
「そうです」
「だったら、無理に強くなる必要はないんだよ。私のように前に出て戦う事しかできない者にとっては、レティの使う支援系の魔法は本当に助かるんだ。生存率が格段に上がるからね」
まだぷくーっと膨れてるけど、俺の言ってる事は理解しているらしい。
だいたいね、レティはそんなに強くなれないよ。騎士科に入れる程度の技術はある。それは事実だけど、それだけ。それ以上は無理だと思う。奥さんみたいに、見た目ほんわかしていてもかなりシビアな決断も出来て即座に動けるならともかく、レティは優しすぎる。それに、基本的に怖がりな子だからね。
「レティのような支援系の魔法を使ってくれる魔導師は、騎士には重宝されるよ。私も現役時代は随分と助けてもらったものだ」
「……本当? 強くならなくてもお父さまの役に立てる?」
「もちろん。そもそも後方支援が専門の魔導師は、非力なのが多いからね。基本的には直接戦闘に参加する事はないんだよ。それでも、立派に役目を果たしてくれている。いてくれるだけで安心感が違うんだ」
本当に、支援系の魔法があるとないとでは全くと言っていい程に違うからね。というかね、別に役に立ってほしいとか思ってるわけじゃないんだよ、お父さんは。もちろん、気持ちは嬉しいんだけどさ。
「私ね、お姉さまたちに相談した時にずいぶんと考え直すように言われたの。私はお姉さまたちみたいに守れるようになりたい、強くなりたいって言ったの。でも、反対された。ダメって。私ではそこまで強くはなれないって、はっきり言われたの。でも、私がどうしてもってお願いしたら、エルヴィラお姉さまが適材適所があるんだよって仰って」
そこでエルに、レティは前に出て戦うタイプではない、無理に前に出ようとすれば周囲に余計な負担を掛けるだけだ。それだったら、少しでもケガをしないようにケガをさせないように、仲間を生還させるために後方支援に徹すればいいだろうと言われたらしい。加えてミサキに、回復系の魔法を極めればどんな怪我でも治せるようになれる可能性はある、誰にでもできる事ではないんだからそっちを極めたらどうだと説得されたそうだ。
それを聞いて、なんか納得したよ。
あいつらは強くなりたいってレティの気持ちを、自分を含めた周囲を守る方向へと転換させたんだ。
命を繋ぐ最後の砦としての役割を担える可能性があるって事を教えてくれたんだな。そらそうだよな、レティが戦闘向きじゃない事にあいつらが気づかないはずないんだから。
「ねぇ、レティ。あなたの気持ちは、本当に嬉しいのよ。でもね、相談はしてほしかったわ」
エレーヌに優しく言われて、レティは小さくゴメンナサイと呟いた。
「私たちは貴女の親だもの。子供を危険にさらしたくないって思うのは仕方ないのよ。でもね、だからと言って頭ごなしに反対などしないわ」
「内緒で覚えてね、驚かせたかったの」
「あら。この子ったら」
くすくす笑いながら、エレーヌがぎゅって抱きしめてる。ああ、天使二人の抱擁……眼福だわ、超カワイイ。
でもまあ、さっきの結界で十分に驚かされたよ、俺は。あんなもん使える時点で後方部隊よりは王族の護衛に抜擢されるのはほぼ確定だろ。……ああ、そうか。そうなると最有力候補は王太子殿下。なるほど、だからエルはアレを教えたのか。
これは俺から団長に話を通しておいた方がいいな。じゃないと、今度はレティの争奪戦が始まる。それは避けたい絶対に。どさくさに紛れて横恋慕する連中が出てくるに決まってるし、強引な手を使って来ないとも限らない。ヒロイン対策と並行して進めないとだな、シルヴァンにも要相談か。
ああもう、やることが多いな、時間が足りねぇ!
なんかもう、俺、分裂できないかな。俺がもう一人ほしいよ切実に!
しかしまあ、せっかくレティがやる気になってるんだ、それをを削ぐようなことは出来ないし言えない、言うつもりもない。どうせ忙しいのもレティが卒業するまでだ、もうちょっと頑張ろうか俺。可愛い娘の為だ。
後日、義兄にこの事がバレて家に突撃されるんだが、その頃にはすでにシルヴァン経由で知った団長がレティの近衛の登用試験を受けるように勧めており、レティも完全にその気になっていたので義兄のからの提案は当然の如く却下された。シルヴァンばかりかレティまでも団長に取られて義兄が地団駄を踏んでいたが……俺もしばらくは義兄に文句言われそうな気がする。気がするが、まあ仕方ないよなと諦めることにした。レティの邪魔はさせん。
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あの衝撃から数日。
本日はレティの訓練の見学です。
ウチの愛娘、本格的にエルから防御結界関係の魔法を習い始めることになったのよ。対魔法防御の最高峰をすでに習得しちゃってるから今更感はあるんだが、どうせならもっと色々な結界魔法を覚えたいとか言い出してね。意欲を持って学ぶ姿勢は良いんだが、ウチの子はどこを目指してんの……?
「みんなを守りたいんだろ? 健気じゃん」
隣でぼそっと呟いたのは、ミサキ。
元々、学園に通い出したころからレティはミサキから治癒・治療系の魔法の手ほどきを受けている。あとは、浄化系もか。ただ、浄化系は年に数回、聖女様から直接指導してもらっているのがメインなので、ミサキには上達具合の確認と細かな修正をしてもらっている感じだな。
まあ、そんな感じでミサキは最低でも月に一度は我が家に来てレティの指導をしてくれていたので、今はそのタイミングでエルも混ざっている感じ。ミサキも結界系の魔法はエルから教えてもらったそうだ。超スパルタだったとげんなりした顔で言ってたけど、どんな指導したんだ、あいつ?
「レティ、もっと発動を速く。それだと咄嗟の時に間に合わない」
「はい!」
言われてレティが結界魔法を発動させるが。
「術式が一部、乱れてる。いいかい、だた発動を速くするんじゃダメだ。不完全な形では防ぎきれないよ。結界魔法を実戦で使うのであれば、速く、正確に。これは絶対だ」
「わかりました」
多少、厳しい事を言われようともめげることなく、果敢に繰り返す愛娘。その真剣な表情を見ていると、ああ着実に成長しているんだなと嬉しくなる半面、手を離れていく寂しさも感じる。
「意外に根性あるよなぁ、レティ」
「俺とエレーヌの娘だからな」
「見た目じゃ頼りなさそうに見えんだけど。まあ、芯は強いか」
「そこそこ鍛えてもいる」
「あ~……意外に剣も使えるんだったな、そこそこ。似合わないどころか違和感しかねーけど」
違和感とか言うな。
いや、言いたいことはわかるんだよ。言いたくなる気持ちもわかるんだ、ウチの子可愛いから。でもね、レティはそれ気にしている所があるから、思ってても口に出すんじゃない。
それからしばらく指導を受けていたレティ、本日の結界魔法の講義はひと段落付いたようで、まだ時間はあるからと他にレティが興味を持ちそうな魔法を目の前で使って見せているエル。なんか、レティが目を輝かせてるんだが……早速、教えてほしいとエルに飛びついてる愛娘。好奇心旺盛なのは結構だが、なんかちょっとマニアックな方向に驀進してないかい、ウチの子。大丈夫かな。本当にどこを目指してんだろう、この子。
若干、レティの今後が心配になりつつあるが、まあ悪い事ではない……ハズなので、ひとまずは良しとするか。ちょっと色々と心配というか不安だけど。
しかし、それにしても。
「エルの奴、どんだけ魔法使えんの?」
本当に、無尽蔵というか……見たことも聞いたこともないような魔法も使ってるよね? いや、ある意味、見覚えのあるモノもあるんだけどさ。なんつーか、こんなの魔法で出来たらなぁと俺が考えてたようなモノがいくつもある。でも、この世界であんな魔法が存在するなんて、俺は聞いたことが無いんだが。
「あいつ、オリジナルも多いからな」
ぽつりとミサキ。うん、それは聞いたことあるんだけどさ。
「マジで便利なの多いぞ。姿見えなくするやつとか音消すやつとか、匂い消すやつとかも有難いし」
いや、音を消すとか姿を消すってのはわるけどさ。匂いって何。
「魔獣相手だと嗅覚で気づかれることが多い。ダンジョンとかでちょい休憩する時なんかに重宝すんだよ」
「ああ、なるほど」
そうか、それがあったか。
基本的に、騎士は対人戦が主だからそこまで考えてなかった。そう考えると、エルの使う魔法って、警備する側にとってはますます脅威だな。僅かな見落としで取り返しのつかないことになりかねないと思い知らされるよ。
「通常の結界だと、個人では使い勝手悪すぎるか」
「使えねーよ」
ミサキが即答したよ。
基本的に、魔獣除けとかってそれ専用の結界を張れる魔道具が普及しているんだけど、範囲がでかいんだコレ。割と簡単に発動できるから野外訓練の時とかは重宝するんだが、個人で動く時には少々使い勝手が悪い。設置にそれなりに時間かかるし、ある程度の広さも必要とする。ミサキみたいに個人で動く冒険者には向いてない。
「つーか、お前は相変わらずダンジョンに通ってるのか」
「素材集めるには一番手っ取り早い」
「まあ、わかるけど」
作成する魔道具に使う素材の大半を自力で集めているミサキは、以前から定期的にダンジョンへ行っている。
ダンジョンってのは、言うなれば不思議空間。色々と常識が通用しなかったりする独特な空間であり、希少な魔獣の宝庫でもある。主に冒険者が稼ぎの場として活用しているので、冒険者ギルドを通して様々な素材が流通している感じだ。俺も何度か行ったことあるけど、アレは結構キツイ。ミサキが単独でちょくちょく潜っては最下層まで行き、ボスを倒していると聞いた時はマジでコイツもバケモノなんじゃねーのかと本気で思ったくらいだ。
「あ、アレは見たことねーな」
レティたちを見ていたミサキがぽつりと呟いた。
うん、俺も見たことはない……はずなんだけどな。なんだろーか、こう懐かしいものを感じるというか。知らないはずの魔法なのに、なぜかどんな効果なのかがわかってしまう。
「なんとなく聞いたことがあるというか見覚えのあるようなモノが多い気がするんだけど」
それこそ前世でよくやってたゲームのシリーズとかで。画面の中でその魔法が発動する時のエフェクト見ている気分になるんだよ。似すぎてて。
なんとなくそれを口に出したら、ミサキが何かを思い出したらしい。
「ああ、あいつ某MMORのユーザーだったらしいから、それ真似して構築したんじゃねーの?」
「マジか」
気のせいじゃなかった!
え、マジ? あいつゲーマーだったの? そんな風には見えないけど。
「国産だと最長クラスのMMORとか言ってたぞ。そこそこ廃装備だったとか言ってたけど……ああ、それを真似して作った装備とか魔道具も多いって言ってたな」
「納得した」
そうか、あいつゲーム内で使ってた魔法とかを独自開発して使ってやがったのか。どうりでこの世界にそぐわない独創的な事してやがるなと思ったよ!
エルの意外な秘密を知ったところで、本日のレティの実技は終了。初めて訓練風景を見学させてもらったんだけど、エルの指導は決して甘くないのはよくわかった。それについて行くウチの子えらい! 頑張ったねレティ! 良い子!
「お父さま!」
駆け寄ってきた娘の頭を、思わず撫でてしまった。
嬉しそうにへにゃって笑って……あああ、ウチの子可愛い!
「お疲れ様。今日の成果はどうだったのかな?」
「あのね、まだ色々と難しいの。エルヴィラお姉さまの求めるレベルを私が出来るようになるには、まだまだ時間が掛かると思うわ。でもね、頑張りたいの」
「そうか。まあ、慌てる必要はない。自分が納得できるように頑張りなさい。ただし、無理はしすぎないようにね」
「はい!」
にっこり元気にお返事してくれたよ!
ちょっともう、本当になんでこんなに良い子なの! でもね、エルの求めるレベルとかはあまり気にしなくてもいいんじゃないかな。あいつの基準、一般的なものとはかけ離れすぎてるし。
そんな事を思いつつもレティが色々と話をしてくれるのでそれを聞いていると、奥さんが休憩してくださいと呼びに来てくれた。ありがとう、奥さん!
その後は室内に移って、レティはエルとミサキ相手に座学となり、俺と奥さんはその様子を見学。はっきり言って俺には何言ってんだか理解できないことも多かったけど、娘はちゃんと理解して受け答えしていたので、ここでも娘の成長を見れて感動。本当に頑張り屋さんだね、ウチの子は!
なんか、学園に通うようになってから成長が目覚ましいなとは思ってたけど、明確な目標が出来るとこうも違うんだね。どうもレティ、二年に上がった頃にはすでに近衛の後方部隊へ行きたいって考えていたらしく、その頃からエルには指導をお願いしてたんだって。全然気づかなかったよ、俺。この辺りはザックが上手い事調整してたらしくて、レティが成果を見せてくれるまでマジでわかんなかった。おいザック、コッソリでもいいから俺にも教えておけよ……!
とまあ、出来る従者にまんまと騙されたわけだが、レティが内緒にしてねってお願いしたらしいので仕方ないとしよう。
てなわけで、娘の成長を実感した一日でした。




