34 春休み中の出来事・娘と一緒
誤字報告ありがとうございます!
本日、レティとお出かけです。
この春にクルキスで治療師の上級試験に合格した愛娘に、お祝い何がいいって聞いたら、すぐには決められないから一緒にお買い物に行ってほしいだって。なんて可愛いの、ウチの子!!
「お父様とお出かけ、久しぶり」
にっこにこなレティと店が立ち並ぶ一角を歩きつつ、笑み崩れそうになる顔面から力が抜けない。顔が筋肉痛になりそうな勢いだ。
「何か目星は付いたのかい?」
レティに聞くと、ちょっと考えてる。
いや、ほら。アクセサリーでも送ろうかと思ったんだよ、最初は。でも、アクセサリー類はシルヴァンがたくさん贈ってくれるから他のものがいいって言うからさ。だったら、好きなモノ買ってあげたいじゃん。
「あのね、ミサキお姉さまがお祝いにってくれたこのカバン」
「ああ、それね」
「これとね、お揃いになりそうな手帳が欲しいの。ここの、外側のポケットに入る大きさで」
なるほど、と頷く。
今やレティにとっては師でもあるミサキ、結婚のお祝いにとカバンを贈ってくれたのだ。……ミサキが作ってよこすくらいだから、普通のカバンじゃないんだよ。所謂、異空間バックってやつ。
これも魔道具のひとつなんだけど、作れる職人は本当に少ない。俺は無理。なので、基本的にはものすごい高価。一般市民の平均的な年収以上の値段がするのは当たり前だからね。
値段的な問題もあって冒険者や行商人なんかは取得率が高いんだが、一般的ではないと思う。まあ、俺は持ってるがな! ……買ったんじゃないよ、エルに作らせたんだよ交換条件で。小さいし超シンプルな見た目だから、ベルトにいつもつけてるんだけど誰も気づかない。普段は上着で隠れているから、目につかないってのもあるとは思うけど。
で、だな。レティはそんな高額アイテムをもらったわけなんですよ。シルヴァンとお揃いで。しかもミサキが一から作り上げたやつだから、性能は折紙付きだし付加価値凄いからね? あいつの加工技術と装飾技術ってマジすごいから。高位貴族や王族が持っていても違和感ない感じに仕上げるし。つーか、そういった連中からの需要がすごいらしい。ただあいつ、自分が気に入らない相手には絶対に売らないから、入手も一筋縄ではいかないんだけどな。
話がそれたが、レティはそんなすごいカバンを持ってるわけです。それとお揃いになるような手帳なんて、もうオーダーするしかないだろ。
というわけで、俺の行きつけの職人がやってる店へ。
ここは、俺が普段から使っている身の回りの細々したものをオーダーしている店。器用なんだよここの店主、俺がこんな感じでって言うとほとんどその通りに作り上げてくれるもんだから、重宝してるんだ。
扉を開けるとカランっという音が響いてすぐに奥から人影が。
「これはこれは……伯爵、お久しぶりですな」
「こんにちは、翁。半年ぶりかな」
「はい、そのくらいになるかと。おお、今日はお嬢様も一緒ですか」
「こんにちは、おじ様」
にっこり挨拶したレティに、翁もにっこり! 気難しい職人さんなんだけどねぇ、この御仁。
俺はここへ来た目的を伝えて、レティには好きに頼んでいいよと告げる。
レティ、さっそく持ってきたカバンを翁に見せつつ、ポケットの部分を指さして色々と説明を始めたよ。まあ、きちんと伝えるべき点は伝えているようなので、俺は口を出さないほうがいいだろう。
「近い感じに仕上げるとなると、色合いはこの辺りですな」
「あ、これ。色もキレイだしとても手触りがいいわ」
「それですか。モノは保証しますが、ちと値が張りますよ。希少な魔物の革なんでね」
「そうなのね……」
ちょっと残念そうにレティが呟いてる。
いやいやレティ、好きに頼んでいいよって言ったでしょ。値段も気にしないで好きなの選んでいいんだよ、遠慮しないで。
「翁、それで作ってほしい」
「お父さま!?」
レティが驚いてこっちを見るけど、大丈夫だって。高いって言われたからって諦めなくていいから。一目で気に入ったんでしょ、それにしておきなさい。
「……いいんですか、伯爵」
「ロックリザードの変異種だろう? 問題ないよ」
俺も魔道具職人だからね、素材の価値はわかってるよ。確かに手帳のカバーに使うような素材ではないさ。
ロックリザードっていうのは割とおとなしい魔物ではあるんだが、エサの少なくなる時期なんかは人も襲われることがある。なので、街道沿いや町や村から近い場所では定期的に討伐されているから、割とよく見かける素材だ。このロックリザードの革は軽くて頑丈な上に水を弾くので、主に軽装用の防具に使われることが多い。割と流通しているとはいえ、元々需要がある上にその変異種ともなれば、値段が跳ね上がるのは当然だな。
「お嬢様のカバンが竜皮で出来てるようですからな、似た質感で違和感なく仕上げるとなると、どうしてもこういったリザード系の手に入りにくい素材になりますな」
「だろうね。それも加味してここへ連れてきたんだから、問題ない」
翁が作業台に並べている素材を見つつそう答える。
ここはね、俺が近衛時代から懇意にしているだけあって使う素材は全体的に珍しいものが多い。基本的に王宮に詰めていることが大半な近衛だけど、何も起こらないわけじゃないからさ。表沙汰にならないだけで。
なので、持ち物は軽くて頑丈なものを揃えるようにしてたら、義父からここを紹介されたんだ。以来、本当に色々とお世話になってる。
そんなこんなで、ただいまレティに話を詰めさせております。俺は口出さないよ、レティにとっての理想の物を作ってもらわないと、連れてきた意味ないし。
「全体的なデザインはこれがいいの。でもね、内側のこの分はこっちの方がいい気がして」
「でしたら、これにこの部分だけ取り入れますか。そうすると……こんな感じになりますな」
「あ、これがいいわ! すごいわおじ様、素敵!」
隣でレティが楽しそうです。良い傾向です、はしゃいでるレティに翁も機嫌良さそうだしな!
こういう時の翁は、多少の無理も聞いてくれる。今のうちだよレティ、遠慮しないでもっと色々お願いしちゃいな!
「あっ……ねえ、おじ様。ここにね、こんな感じで万年筆をしまうことは出来るかしら?」
そう言いながらレティが示したのは、カバーの背の部分。そこに余裕を持たせて万年筆をしまうスペースを作りたいらしい。そういや、ここにペンの収納がついた手帳も前世には普通にあったよなー、よくレティ思いついたなーと思いつつ聞き耳を立てていると。
「ああ、なるほど。ここを膨らませて空間を作るわけですね。ただ、万年筆をしまう空間を作るとなると、もうちょっと大きくなりますよ」
「ここにね、収まるサイズなら少し大きめでもいいの」
「ああ、それでしたら問題ありませんな。であれば、作成に入る前にお嬢様が使っている万年筆を見せてもらえますか」
「今持ってるわ。これよ」
そう言いながらレティがカバンから万年筆を取り出す。
これね、入学祝に奥さんがオーダーで作らせた万年筆なんだ。レティの小さな手に合うように、一般的なサイズよりも少し小さめに出来ている。ああ、飛び上がって大喜びしてた姿を思い出すな。
レティね、俺が万年筆を使い始めてからというもの、興味津々だったんだよ。たまに使わせてあげるとニコニコしながら書き物してたけど、小柄なレティにはやっぱり大きくてね。ちょっとの時間ならいいんだが、長時間使ってると指が痛くなるって、残念そうに呟いてたんだ。それを聞いた奥さんが、入学祝に万年筆を贈ったってわけ。
「ほう、出回っているものより少し小さいですな。これなら、当初の予定通りのサイズで作れますぞ」
「本当!? それでお願いしたいわ!」
「畏まりました。では、もう少し詰めていきましょうか」
「はいっ!」
その後もあれこれ話して、やっと纏まった確定版のデザインを見せてもらったんだけど、なかなかいい感じだと思う。あ、手帳の中身は取り外し可能なタイプになってた。ノートの部分が差し替え出来るようになってたんだけど、かなり特殊なサイズだからね。翁の方で知り合いの紙業者に頼んで、ピッタリサイズのノートを作ってくれるように依頼してくれるそうだ。助かる、マジで。
その後も少し話をしていたんだが、適当なところで切り上げた。大体の形が出来上がったら確認のために一度来ることにはなったが、工程を確認しておくのは必要だろうと思って了承。
俺はレティを連れてそのまま飲食店が立ち並ぶ通りに出て、目当ての喫茶店へ。ちょっと前に奥さんがお友達と来たらしくて、良かったって言ってたからさ。
天気もいいし店内よりはテラスの方がいいかとそっちに案内してもらって、レティに好きなものを頼んでいいよと告げたらニコニコって! マジ可愛いウチの子!
散々迷って、レティは小さなサイズのケーキが何種類か乗ったプレートを頼んでた。人気のフレーバーティーとセットだと聞いて、それに決めてたよ。
俺は普通の紅茶を頼んで、娘と仲良くおしゃべりタイムです。
学園での様子や友人たちの事を楽しそうに報告してくれますよ! うんうん、充実した学園生活を送れているようで、お父さんは感無量だよ。
「でねでね、最終的に首位をとれた人のお願いを聞くって約束をしてて。ディオンも頑張っていたんだけど、ルシールに負けちゃったから、今年の夏休みはルシールの行きたいところへ一緒に行くんですって。ルシールもね、最後の方とかとっても頑張ってたから」
二年の最終的な成績、ルシールが僅差で首位になったとは聞いていたんだけど……そんな約束してたのか、ディオン。これもしかして、わざと負けたりとかしてないだろうか?
レティはルシールが頑張ったと言ってるけど……まあ、間違いなく頑張ったんだろうけど、恐らくルシールが行きたがってる場所にディオンが連れて行ってやりたくて、じゃないかなぁと思ってしまった。だって、普通に連れて行くっていうとルシールの事だから遠慮しそうだけど、勝負したその結果ということであれば、素直に受け入れそうだし。
「私も頑張ったけれど、あの二人にはどうしても追いつけなかったわ。せめて、もうちょっと成績を上げたかったのに」
愛娘、自分の成績に不満そうです。
いや、あのね。そんなこと言ってるけど、レティだって学年で三十位以内に入ってるじゃない。三百人以上いるんだよ、ひと学年で。十分にすごいから、それ。
どうにもシルヴァンとかディオンとか、頭の出来がちょっと普通じゃない連中が周りに多い所為か、ちょっと自分に厳しいんだよ、この子。俺からしたら、ミサキからの指導を受けつつ、それでも今の成績を叩き出しているんだから十分だと思うんだけど。楽じゃないからね、ミサキの指導って。
「レティは十分にガンバってるよ。学園の成績だけが全てではないのだから、今のままでも十分じゃないかな」
「でもっ。……シルヴァンだって、ずっと首位をキープしてたのに」
「シルヴァンはねぇ……私が言うのもなんだが、元からの出来が良すぎな上に努力家だから。でもそれは、レティの前では完璧な自分を見せておきたかったからみたいだよ」
「え? そうなの?」
「惚れた女性に醜態なんて見せられないだろう」
「あっ、その……そう、なのね」
あらら、赤くなってるよ。この程度で照れるなんて可愛いねぇ。
初心な反応に思わす笑いをこぼすと、睨まれた。うん、そんな可愛い顔で睨んでも怖くないから。
そして、レティが口を開き替えた時だった。
「あら、レティシア様。堂々と浮気だなんて、さすがね」
俺とレティが同時にそちらを向くと。
……なんだろーか、この頭の悪そうな令嬢は。
思わず声に出そうになったが、何とか我慢。後ろに引き連れてるのは護衛かね、あんま強そうじゃないけど。ちらりとレティに視線を送ると、若干いやそうな顔をしてるよ、ウチの子が! 知った顔ではあるみたいだね、制服着てるし。
「ごきげんよう、アンナ・コベール様。浮気とは何のことでしょうか」
レティがあくまで冷静に、相手の令嬢に問いかける。
おおっ、ちゃんと対応できそうじゃんレティ! お父さんはちょっと様子見てるから、頑張って! あ、やばくなりそうだったら口挟むからね。
「あら、婚約者のいる身でほかの殿方と仲良くなさってるのだもの。立派な浮気でしょう?」
口の端を吊り上げながらその令嬢が言う。性格わるそーだな、コイツ。レティもフルネームで呼んでたし。しかし、コベールねぇ……この国じゃ聞いたことねーな。
さて、レティ。どう出るのかな。
「アンナ・コベール様。何度もお伝えしていますが、私に婚約者はいませんわ」
「あら、やっと解消なさったの? まあ、シルヴァン様もようやく目が覚めたということかしら」
ニヤリとしながら令嬢。マジで性格悪いな、コイツ!
「ですから。シルヴァンは婚約者ではなく、夫ですと何度もお伝えしているはずですが」
「それこそ有り得ないわ! シルヴァン様は侯爵家のご子息よ、貴女のような下賤の者を妻に迎えるはずがないでしょう!」
下賤って……一応、名門と言われるグランジェ家の直系なんですが、ウチの子。それを下賤って。
どこの国だよ、コレ。ちょっとムカついてきた。
「私が下賤かどうかはともかく。シルヴァンは侯爵家ではなく、現状はグランジェ伯爵の後見を得た男爵であり、次期グランジェ伯爵ですわ」
呆れたようにレティが説明しているが……これ、多分今までにも何度も同じようなことを説明してんだろうなぁ。
最近は学園で妙な連中に絡まれることが多いって聞いてたけど、こんなのばっかだったりするの? それはちょっと色々と問題な気がするよ、学園に抗議しちゃうよお父さん。
「たかが伯爵位を継ぐなど有り得ないわ! シルヴァン様はカンタール侯爵家の正当な跡取りなのよ! 嘘をつくのはおやめなさい!」
「嘘などついていません。事実を申し上げています」
レティはあくまで冷静に。一方の令嬢は、まあ感情に素直だ事。
この時点で、やじうまはどちらが正しいのか理解しているだろうさ。つーか、グランジェ家を下賤よわばりって、なかなかすごいよね。周り見ろよドン引きされてんぞ。マジでどこの田舎から出てきたんだ、コイツラ。
「だとしても、他の殿方と堂々と逢引きしている時点で離婚よ! 感謝しなさい、この私がシルヴァン様にお伝えしてあげるわ。ああ、シルヴァン様もお気の毒に、こんなくだらない女に引っかかるなんて!」
なんか、一人で芝居ががっているけど……いや、何も言うまい。相手すんのも面倒だ。
そんなことを考えていたら、レティがこっちを見て首を傾げた。
「……聞いてもいい?」
「なんだい?」
君、いまわざとお父さまって呼ばなかったね。
「身内とこうしてお茶を楽しむと、不貞を疑われるものなの?」
「ん~? この状況で不貞を疑われる理由がわからないねぇ。だいたい、こんな人目に付くところで不貞を疑われるようなことをするおバカさんはいないと思うけど?」
「そうよねぇ」
頷きつつ、ちらりと令嬢を見ているレティ。
令嬢はなぜか顔を赤くしているけど。別にあなたのことを馬鹿と言ったわけではないんだけどな、そういうやつもいるよってことで。まあ、周囲で聞き耳を立ててる連中の大半は頷いているけどな。
「ちょっと貴方! 失礼じゃありません事!?」
おお、矛先がこっちへ来たな。
「何か失礼なことを言ったかな?」
あくまで、にっこりと。
「私のことを馬鹿にしたではありませんか!」
「とんだ言いがかりだな。私は娘の質問に答えただけだが」
「は? 娘?」
令嬢一行が、ぽかんとそろって間抜け面してるよ。
やれやれ。
「グランジェ家当主、ルシアン・グランジェです。この子は私の娘ですが」
遅まきながら自己紹介してやったら、令嬢はきょとん顔。護衛らしい連中は揃って顔面蒼白。そーかそーか、少なくとも護衛のお前らは俺のことは知ってるんだな、その反応は。
「そして、シルヴァンはこの子が先ほど言ったように、グランジェ家の後継者で間違いない。国王陛下より正式にグランジェ家の後継としての認可を受けている、正当な後継者だが」
「う、うそ……」
何やら令嬢がショックを受けている様子。
いやいや今更だろうが、さっきレティが言ってたことからして何度も説明されてたんだろうが。なんで今更ショック受けるんだよ、レティが嘘ついてるとでも思ってたわけ? つーか、それよりも折角の娘とのデートぶち壊しやがって、どうしてくれんだ。
「お父さま」
ちょっと軽くイライラきて報復を考えていたら、レティに呼ばれた。
なんだい、娘よ。
「もうひとつ、頼んでいい?」
上目遣いでおねだり。
「ああ、いいよ。好きなモノを頼みなさい」
「ありがとう、お父さま!」
あああ、笑顔が可愛いっ!!
ちょっともう、なんでそんなに可愛いのウチの子! おかげでこのバカどもどうやって料理しようか考えてたのが吹き飛んでしまった。
とはいえ、確認すべきことはしておかないとね。
「ところで、レティ」
「はい」
「あのお嬢さんは知り合いかな?」
柵の向こう側でいささか顔色を悪くして何やらぶつぶつ言ってる令嬢に、一瞬だけ視線を向けると。
「昨年の秋に、魔法科へ編入してきた方です。……クラルティ公爵さまの姪だと聞いています」
ああ、そう言う事。
納得した。どうりで偉そうなわけだ、公爵家の関係者なのね。
クラルティ公爵とは、我が国に三つある公爵家のうちのひとつで、現当主とは俺も面識がある。というか、割と良い付き合いをさせてもらってる。で、だな。公爵には姉がいるんだが、この人が隣国の公爵家に嫁いでるんだよ確か。要するに、コレはあちらの公爵令嬢って事なんだと思う。ついでに言えばカンタール侯爵家の先代当主がクラルティ公爵の従兄弟にあたるので、シルヴァンの情報はそっち経由で入った可能性が高い。
まあ、その辺りは帰ってから確認するとして、今ここで下手につついて外交問題になっても面倒だしな。幸いにして護衛の連中は俺の事を知っているようだから、さっさと穏便にお引き取り願おう。
「ご令嬢の後ろにいる君たちは護衛かな」
俺が声を掛けると、ビクッと体を震わせた。
おいおい、いくらなんでもこの程度でビビるなよ。
「こんな公衆の面前で他国の貴族を理由もなく貶めるようなことをすればどうなるか。……護衛なら主が不利な立場に追い込まれることがないよう、常に注意を払うのもまた役目。違うかい?」
静かに諭すように問いかけると、控えて護衛は神妙な顔で頷いた。
「……おっしゃる通りです。誠に申し訳ございません。謝罪は後日改めて」
うん、どうやら一応は常識を備えていたようです。まあ、主が暴走する前に止めてほしかったが、対処できそうだし及第点としておこうか。このご令嬢、かなりアレっぽいしな。
「クラルティ公爵とは面識がある。一応、この事は私からも報告はさせてもらうよ」
「はい。申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる護衛一堂に対し、令嬢は不満そうにこちらを睨んでいるんだが……まあ、何も言うまい。
その後、喚く令嬢を護衛がなだめすかしながら強引に連れて立ち去り、レティは追加で頼んだケーキを食べながらにこにこしてた。
取り敢えず、あまり気にしている様子がなかったので良かった。どうやらまだあと数人、あんな感じなのが学園にいるそうなので、慣れているとの事。そんなこと一言も言わなかったから知らなかったよ!
これはちょっと、学園長に話をしに行かないといけないかなーと考えさせられる出来事だった。




