25 夏休み~王家直轄領アルマクへ
そろそろ夏季休暇に入ろうかという時期になり、完成しましたよ。正式な転移門が。
我が国初と言うかこの大陸初の転移門のお披露目式では、重鎮たちが大はしゃぎだったらしいです。俺は別件でこっちにいなかったのでお披露目式には出なかったんだが、あとになって陛下まではしゃいでいたと聞いた時には耳を疑ったよ。だってあの方、そんなはしゃぐようには見えないし。
「でなっ、大公殿下が正式にアルマクへ招待してくださったんだ! 我が家とお前の家族を全員だぞ!」
ほんの少し前、王宮から駆けつけてきた義兄が興奮気味に目の前で喚き散らしています。
お前、頼むから少し落ち着け?
「アストラガルの関係者も招待するそうで、あちらで交流会のようなものを開催してくださるそうだ! というわけで私は公務の一環としても赴くことが決定した! 諸々のスケジュールは調整済みなので、お前もこれに合わせて全員のスケジュールを調整しておけ! いいか、行くのは絶対だからな!」
こんな感じで一方的に好き勝手に喚き散らした義兄は、まだ仕事があると言ってさっさと帰っていったよ。アルマクへ行く日程表を俺に押し付けて。
「お兄様ったら、ずいぶんと興奮なさって」
一緒に部屋にいた奥さんがきょとんとしてる。うん、元から暴走癖のある義兄だけど何時にも増して勢いあったよね。
しっかし、まあ……
「丁度、一月後だね。エレーヌ、申し訳ないが諸々の準備をお願いできるかな」
「はい、お任せくださいな」
にっこり笑った奥さんが了承してくれました。ありがとう、頼りにしてるよ!
俺は俺で、スケジュールの調整をしないといけない。まあ、元々来月はがっつり休んでエレーヌをどっかに連れて行こうかと考えていたので、そんなに予定は入れてなかったんだ。子供たちもどこへ行こうかなんて相談してたしね。
奥さんは早速、諸々の調整や準備をするために執事と打合せしに行ってくれたよ。無理はしないでね、絶対に。
「しかし、アルマクか。グラフィアス王家の直轄領ねぇ」
義兄が置いて行った資料を見つつ、呟く。
アルマクはグラフィアスの観光地でもあり、避暑地としても人気らしい。風光明媚な街で、街から少し離れると高山地帯特有の景観が広がる、美しい場所だそうだ。
俺もエルから何度かアルマクの話は聞いたことがあり、エレーヌも興味津々だったから何れは連れて行ってあげたいな、なんて考えてはいた。ウチの奥さん、暑いのダメだから高山地帯ならそこそこ涼しく過ごせるんじゃないかと思ってさ。なので今回の件はある意味丁度よかったかな。
「よし。そうと決まれば留守中の対策を立てておかないとだな」
どうせあのヒロインは何かしら接触してこようとするに決まってる。不在だっつってもどうせ嘘だのなんだの言って信じないだろうしな。
「あ~……いや、いいか。クリスは連れて行くから、警備は……」
いかん、その辺りも考えないとか。
はあ、メンドクサイ……。
**********
なんだかんだと諸々を片付けて準備を済ませて。
やってきましたよ、アルマク! グラフィアス自体がわりと標高の高い位置にあるんだが、アルマクはさらに標高の高い位置にある都市なんで、真夏だっつーのに涼しい! なんとも過ごしやすそうな気温だよ。ウチの奥さん、あまり暑いとぐったりしちゃうんで、ここは良い。奥さんの体調にとても優しい。ちょっと後でお散歩に誘ってみよう。
「お父さま、見て見て! 可愛らしいお花がたくさん咲いてるわ!」
愛娘も大喜びですよ。うんうん、嬉しそうにはしゃいでて可愛いねぇ。
「気に入ったかしら?」
「はい! 素敵な場所へ連れて来てくださってありがとうございます、大公妃さま!」
「ふふ、気に入ってくれて嬉しいわ。他にも素敵な場所はたくさんあるのよ。シルヴァンと一緒にゆっくり見て回るといいわ」
「そうさせて頂きます。あ、お勧めの場所などありますか? 教会は明日、見学させていただこうかと考えているのですが」
「そうねぇ」
楽しそうにお話ししてますね。
招待してくださった大公ご夫妻、その妃殿下が今日は俺たちの相手をしてくださってます。宰相である義兄がいるんでこの対応なんだろうが、ついでに招待されただけのなんの要職にも付いていない、たかが伯爵家が王族にもてなされるってちょっとかなり畏れ多いんですが。しかも今は他の皆さんとは別行動中で、大公妃殿下がレティについてるからね。あ、俺は一応、護衛枠で同行です。
で、なんでこんなことになってるのかと言えば、なんかウチの娘がすっかり大公妃殿下に懐いてしまいまして。いや、夜会の時にエルを挟んで話をしてたのは知ってたんだけどさ。あの後、しばらく大公妃さま素敵って大興奮してたのも知ってるけどさ。なぜか大公妃殿下もウチの子を気に入ってくれたみたいで……いえ、有難いことですよ? 畏れ多いけど。
「あら、もうこんな時間ね。そろそろみんなと合流しましょう」
「はい」
うん、本当に、結構いい時間が経ってる。昼食はみんなで一緒にって話だったんで、そろそろ戻らないとマズいだろう。
ちなみに義兄たちはさっき話に出てた教会の見学に行ってるよ。大公殿下の案内で。
俺たちが滞在することになった建物、王家所有の別荘なんだが、そこに併設されている教会がグラフィアス国内では最古の建築物で観光名所なんだって。普段は一般公開していないらしいんだけどさ。年に二回、春と秋に十日間ほど一般公開されるそうだ。それに合わせて色々な催し物もあるらしく、その時期は特に賑わうようで……うん、ちょっと家族連れて来てみたいかも。
「お父さま、行きましょう」
可愛い娘に呼ばれ、二人の後を追う。
さてさて。
昼食になり、今回招待された一同が初めてそろったんだが……あの、夜会の時以上にとんでもないのはキノセイですかね? 俺、なんか入り込んじゃいけない場所に入り込んでない? なんでこっそりグラフィアスの国王陛下まで紛れ込んでいるの、誰か教えて。
「兄上! なぜここにいるんです、仕事はどうしたんですか!」
「いや、だって。たまにはいいじゃないか、我が国で他大陸の重鎮たちとの交流会なんて初めてなんだし。あ、仕事は明後日の分までは終わらせてきたから心配いらないよ」
ニコニコと答える国王陛下に、大公殿下が頭を抱えてるよ。俺含め、招待された側の大半は突然の大物の登場に固まってるからね? もうちょっと周りを見てくれないかな。
なんか、直前になって増えますって連絡が来たらしいことは聞いてたよ。知らせに走って来た護衛騎士の一人がそれを大公殿下に伝えた時点で、なんか嫌な予感はしてたんだよな。護衛騎士は温ーい顔してたし、聞いた大公殿下は苦虫を嚙み潰したような顔をしてたし。
「いやですわ、陛下。事前におっしゃって頂かないと、皆様が驚いてしまいますわ」
コロコロと笑いながら大公妃殿下が間に入ってる。なんか、物凄く扱い慣れてる感じがするんだが、多分きっと気の所為じゃないんだろうな。周りの反応見てもそんな気がする。
「ああ、ごめんねフェリシア。一応、プライベートなんだから、ここにいる間は義兄って呼んでほしいなぁ」
「わかりましたわ、お義兄さま」
うん、なんだろう。何を見せられているのかな、俺たちは。
ちらりと大公殿下に視線を送る。なんかもう、お疲れな感じが漂ってるんだけど大丈夫か。つーか、あの大公殿下が陛下を前にするとこんな感じになるのね。これはこれで、なんか新鮮だわ。いつもは雰囲気柔らかくても油断ならない人って感じだったからさ。意外だ。
「連絡しないで来たのは申し訳なかったけど、せっかくの機会だからねぇ。通常業務は目途が付いたので、参加させてもらおうかと思って。色々と詰めたい話もある事だし」
おや、何やら含みある言い方を。
ああ、他にも何人か反応しているね。まあ絶好の外交チャンスなのは事実だし、国王自ら動く意味合いも大きいのかもしれない。なんと言っても今回、アストラガルの宰相一家が来てるしな。
「畏まりましたわ。ではお義兄さま、昼食後にでも改めてご紹介させていただきますわね」
「うん、頼むよ」
大公妃殿下と国王陛下で話を纏めちゃいましたね。別に俺たちがどうこう言えることじゃないんで構わないんだけど、大公殿下そっちのけなのは良いんだろうか?
とまあ、若干(?)のハプニングはあったが、昼食会がスタート。立食形式で各自好きな所へ行って好きなものを食べる感じで、この辺りは夜会の時とあまり変わらないかな。人数多いし、いろんな人と話をする目的もあるので、この形式が都合がいいんだろう。
今回、一緒に来ているおこちゃま達はみんなで集まって仲良くご飯食べてる。おこちゃま達にはエルともう一人女性が付き添っているんだが、誰かなあの女性。
それはそうと国王陛下。精力的にあちこち動いては積極的に声を掛けているね。顔立ちは大公殿下とよく似ていらっしゃるんだが、性格は本当に似てないな。でも、たまに感じるピリッとした雰囲気にも全く違和感を感じないので、顔を使い分けることが上手い人なんだろう。
「ルシアン」
ふと声が掛かり、振り向くと。
「ああ、レンブラント。お疲れ」
「いや、まいった」
苦笑交じりに応えたのは、エルの旦那さん。最初の出会い以降、何かと話す機会があってすっかり意気投合してたんだけど、月一の手合わせで更に仲良くなれたかな。出会ってまだ一年程度ではあるけど、今では名前で呼び合えるくらい良い友人関係を築けているよ。
「国王陛下が来るとか聞いていてないんだが」
「俺も聞いてない。まあ、いつもの事だ」
いつもの事なのか。
大公妃殿下が扱い慣れてるなと思ったのは、やっぱり気の所為じゃなかったか。
「すごいな、国王自ら突撃して来るとか」
「行動力は人一倍ある方だ。普段は思慮深く落ち着きのある、それこそ見本のような方なんだが」
「あ~……まあ、普段の反動で、プライベートだとだいぶ雰囲気が変わる人はいるよな」
「変わりすぎだ」
深ーい溜め息と共にレンブラントがこぼす。
まあ、気持ちはわかる。ただでさえ国外からの来賓で警備等にはいつも以上に気をつかうだろうに、予定外の自国トップが来るなんて、迎える側は大迷惑だろうさ。当初の計画、全部見直さなきゃならんのだから。俺も近衛時代に常識の欠片もない王妃殿下の所為で警備計画の見直しをせざるを得なかったことが何度あったか。あ、いや、あっちは王妃殿下だからまだマシか。国王陛下だもんな、こっち。……ん? まてまて、尊敬の欠片もない奴にそんな手間かけさせられる方が殺意湧かない? 少なくとも俺は沸くな。あの見直しの原因が陛下だったら、そこまで頭には来なかったかも。
…………。
日頃の行いって大事だね。つくづくそう思うわ。
その後もレンブラントと話していると、ここ最近知り合いになったエルの同僚たちも声を掛けてくれた。まあ、エルとレンブラント以外は護衛として同行しているので、挨拶程度だったけどな。エルたちはイザークとジークが来るっていうんで、強制的に参加になったらしい。いや、別にエルとアレックスだけでもよかったんじゃねーのとは思ったらしいけど、大公妃殿下に却下されたそうだ。なんでもアレックスがお父さんも一緒がいいと大公妃殿下におねだりした結果だと。あの可愛い子にそんなお願いされたら承諾するしかないよな。なんで、一応は私服のままではあるけれど警備も兼ねているんだそうです。
「……まあ、あの一角、なんか可愛いよな」
レンブラントには災難だったかもしれんが、おこちゃま達を優先するのは俺も賛成だ。こればっかりは大公妃殿下の判断を支持するぞ。だって、会場の一角でなんか可愛いのがわいわいしてんだもん。癒しの空間だろ、あれ。
「予定外に人数が増えたしな。まさか陛下もご一家で参加して来るとは思わなかった」
「は?」
ちょっと待て。いまなんつった?
俺の言いたいことを察したのだろう、レンブラントが子供たちへと視線を向ける。
「一番左にいる栗色の髪の子がヴィルヘルムス殿下。昨年、立太子を済ませたばかりだ」
王太子殿下かよ!
「その隣にいるのが第二王子のディーデリック殿下。エルと一緒に子供達の相手をしてくださっているのが王妃殿下だ」
ちょっと待って、情報多い。
王妃殿下? 王妃殿下が子守してるの? おかしくない?
「……王族だよね? 国母だよね?」
「間違いなく王族で国母たるお方だ」
なんかもう、びっくりだ。
なんつーか……グラフィアスの王族はずいぶんとフレンドリーなんだな? あの、多分恐らく絶対に王妃殿下だと気づいていないだろうレティが、いつの間にやらエルたちに合流してるのが気になって仕方ないんだけど。大丈夫かな、あの子。見た感じだと、随分と話が弾んでいるようではあるんだが。まあ、エルが側にいるから心配する必要はないんだろうけど、色々怖すぎる。
「ちなみに王妃殿下だが、妃殿下とまた違うタイプの切れ者だ」
おおう、それは。
エルが無条件に付き従う大公妃殿下が相当な切れ者だというのは、初対面で理解していた。まあ、あの大公殿下の隣にいて存在感を示せるくらいなので色々と出来るお方なのは察しがついていたが……その大公妃殿下と同レベルって事か。怖いな、グラフィアス王家!
「それと……これは伝えておこうか。いま、ルシアン達が置かれている状況。エルから聞いてこちらでもある程度は把握している」
ああ、レティの件ですね。いつだったかエルも、自分達にも関わってくる可能性があるから情報共有しておきたいとは言ってたしな。
「当然の事ながら、国王ご夫妻もご存じだ。その上で、問題が解決したと確信できるまでは協力体制は維持するようにとの指示を受けている」
「……申し訳ないが、助かる」
「気にするな、こちらにとっても利のある事だ。メリル嬢の話も、普通に考えればとても信じられないような話ではあった。だが、幸か不幸か我々にはエルヴィラと言うある意味特殊な存在が身近にあった。事実、あいつはメリル嬢から話を聞いて対策を立て、妃殿下の暗殺を防いで見せたのだから、周りは何も言えなかったよ」
「それが普通だろう。俺だって前世の記憶なんてものを思い出していなければ、そんな話は信じない」
「そうかもしれん。だが、あの件以降、メリル嬢からもたらされた情報を基に防げた事柄は軽視できるものではなかった。メリル嬢曰く、自分がわかるのは学園を卒業する年までだと断言しているが、それでも十分すぎるほどに彼女の知識は国の安定に貢献してくれている」
まあ、それもそうか。
ゲーム上の知識とは言え、この先学園卒業までに起こるだろう史実は覚えているだろう。攻略する上でゲーム内の史実は必須な知識、そこをどううまく切り抜けるかで好感度も変わるんだと妹が繰り返し言ってたしな。やり込んでいた奴ほど、その辺りは詳しいんじゃないだろうか。
「で、ここからが本題だ。メリル嬢が少し前に思い出した事と言って教えてくれたんだが、前作では魅了系のアイテムがあり、それをレティシア嬢が王宮で見つけた伝手を使って入手する、と言う流れがあったそうだ」
「は?」
レティが魅了系アイテムを?
「気になる相手がいて、その相手に使おうとしていたらしい。それをヒロインと呼ばれる存在が防ぐ、と言う流れがあったようなんだが……好感度がどうのと言っていたな」
なるほど、攻略対象との好感度を上げるイベントのひとつか。
ゲーム内ではレティは王子の婚約者、王宮には割と自由に出入りできる立場だった。王宮で伝手を見つける、と言うのはそう難しい事ではなかっただろう。
しかし、レティの気になる相手って? 今となってはどうでもいい事ではあるが、ちょっと気にはなるな。話の流れ的に、王子ではない気がするし。
「魅了系のアイテムか……」
そんなもんが手に入る可能性があるとなると、色々と面倒だ。レティは興味ないだろうが、ヒロインはそれを手に入れることを目論む可能性もある。これまでの言動からしても、やり込んでいた可能性は高い。という事は、アイテムの入手ルートや条件も知っている可能性が高いという事だ。
「それと、もうひとつ。こちらの方が重要だと思うが」
「うん?」
「詳しくは覚えていないらしいんだが、そのアイテムには注視しておいたほうが良いようだ」
「そう言われてもなぁ……まあ、気にかけておく」
アイテムがどんなもんなんだかわからんし、いつどんな時に入手するのかもわからんし。そもそも、レティが王宮とは縁がないんだから、手に入れる機会がないんじゃないのかね?
つーか、それよりも問題なのは。
「なんでそんなものが王宮に」
正確には、王宮で見つけた伝手を頼って、だが。
どちらにしろ、あまりいい話ではない。祖国では重犯罪を犯した罪人を一時的に束縛する意味もあって、魔道具を使って隷属化することはあるが、魅了となるとまた別問題だ。
「アレは非常に扱い辛い類なんだ。魔道具化することが出来る職人となると、まずいないはず」
「エルも同じことを言っていた。だからこそ、監視を強化する必要があるとも」
「監視の強化、ね」
現状、エルにはヒロインの監視をお願いしてある。四六時中というわけではなく、イベントが発生しそうな時に負担が掛からない程度で頼んであるんだ。これだけでもかなりヒロインの動向を把握できているので本当に助かっている。
しかし、今以上となると確実にエルにとっては負担になるだろう。ただでさえこちらが巻き込んでいるのだ、これ以上は申し訳なさすぎる。
「あいつの負担を考えているなら、心配は無用だ」
こちらの心配を察したらしいレンブラントが、きっぱりとそう言った
「詳しくは知らないが、現状でも複数を同時に二十四時間体制で監視しているそうだ。監視だけならほとんど自身に負担はないと言っている」
あいつマジで規格外にも程があるな!
いや、ね? 前にちらっと頼んだ時も、何でもない顔をしてどうやって探ったんだと言いたくなるような情報の数々を短時間で揃えてくれたけどさ。その時も、別に何も疲れることはしてないと、きっぱり言ってたけどさ。
なんで俺の周り、こうも普通からかけ離れてる奴ばっか集まるの?
「類は友を呼ぶと言う奴だろう」
しれっとレンブラントが指摘してくる。
「……俺、いま口に出してた?」
「いいや」
きっぱり否定。こちらの考えはお見通しらしい。
さすがエルの旦那やってるだけのことはある、怖いくらい察しがいいな!
「あいつを抑え込むには必須のスキルだ」
「…………」
エル。お前、本当に普段から何してんの? レンブラントの勘の鋭さって、絶対にお前が鍛えまくった結果だろう。どんだけやらかしてんだよマジで。
「暴走、と言う点ではミサキの比ではないよ、アイツは。普段はミサキの方が荒っぽく見えるのだろうが、実際には逆だ」
「マジか」
衝撃の事実。知らなかったよ、それはっ。
普段はエルの方が落ち着いた言動だし、アレでも一応は王族に仕えているわけじゃない。所作も奇麗だし、様々な事を卒なくこなしているわけですよ、対人含めて。いや、たまに暴走するのは知ってるけどさ、それだって普段の言動見てたらミサキの方が大人しいだなんて思わないじゃん。あいつが暴走する時って、だいたいミサキも一緒になって暴走しているし。よくよく考えたら俺、アイツらがセットで暴走している姿しか見たことねーな?
「ミサキは口調こそ荒いが、全てにおいてエル以上に慎重だぞ」
「あ~……まあ、言われてみればそんな気がしないでも」
慎重は慎重なんだよ、二人とも。大胆に行動しているように見せてはいても、実際には注意深く周囲を観察しているし。後先考えずに行動することは、俺が知る限りではなかったしな。暴走はちょくちょくしてたけどな!
いや、まあ、取り敢えず暴走娘共のことはいいんだよ今は。それよりも魔道具! 魅了!
「まあ、とにかく情報は感謝する。魅了系にも警戒が必要となると、厄介だな」
「精神系に作用する魔法は、総じて扱いが難しい。意識的に使う類の魔法であればまだ対策は立てやすいが、無条件に拡散するタイプはかなり厄介だぞ」
「そうじゃない事を祈るしかないな」
本当に、メンドクサイ。
この後も色々とあったが省略。
ただ、とても有意義な十日間だった。エレーヌとのんびりたくさんお散歩出来たよ!