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3分短編シリーズ

追放聖女の真実

作者: さとう

 大陸一の大きさを誇る、トラビア王国。

 トラビア王立学園のパーティー会場で、美しき少女セリーヌは、婚約者であり王太子のディランに睨みつけられ、思いきり指を差された。


「セリーヌ、貴様は聖女に相応しくない!! よって、聖女の資格をはく奪!! 王都より追放する!!」

「そ、そんな……で、殿下!! そのようなこと」

「黙れ!! 貴様がエレインにしたこと、忘れたとは言わせんぞ!!」

「うっ……」

「エレインこそ真の聖女!! 貴様のようなニセ聖女は、この国には必要ない!!」

「あ、あああっ……」


 聖女セリーヌ。いや、偽聖女セリーヌは追放された。

 そして、セリーヌの妹エレインが、真の聖女として崇められることになる。

 セリーヌとディランの婚約は破棄され、エレインが新しい婚約者へ。

 セリーヌは学園を退学。王都を追放されることとなる。


「エレイン、今まで済まなかった。これからは聖女として……いや、ぼくの婚約者として、傍にいてくれ」

「はい。ディラン……」


 二人は見つめ合い、抱き合う。

 パーティー会場では拍手喝采。セリーヌをあざけるような視線やヤジが飛んだ。

 セリーヌは真っ青になり、顔を隠し……その場から逃げ去った。


 この、一連の騒動は国中を揺るがした。

 悪女セリーヌ、聖女エレイン。

 ディランとエレインは、幸せな学園生活を送っていた。

 ディランとエレインの学園生活も、もう少しで終わる頃。ディランは思い出したようにエレインに聞いた。


「そういえば、セリーヌはどうしている? お情けで、追放まで一ヵ月の期間を与えたが、もう国を出たのか?」

「さぁ? お部屋に籠って泣いているのはわかりましたけど。ああ、そういえば家を出るみたいです」

「そうか。ようやくか……ふふ、いいことを思いついた」

「?」

「セリーヌの乗る馬車に、投影魔法装置を仕掛けておく。卒業式に、セリーヌが追放される様を流してやろうじゃないか」

「まぁ、悪趣味」

「だが、面白いだろう? あの悪女がどのような顔で家を出るのか」

「そうですね。もう二度と会うこともありませんし」

「なら、やろう」


 こうして、セリーヌの乗る馬車に投影装置が取り付けられた。

 そして、卒業式の当日。

 ディランたちは学園を卒業。卒業式の挨拶を終え、その時が来た。


『皆の者。私は、悪女セリーヌの元婚約者である。あの悪女がついに、トラビア王国を出る……その最後を、皆で見届けようではないか』


 壇上に上がったディラン。

 背後には、大きな投影装置があり、馬車の中が写された。

 しばらく待つと、そこに写ったのは……晴れ晴れとした顔をした、セリーヌだった。


『あー、ようやくトラビア王国とおさらばできるわ!!』


 ニコニコしていた。

 馬車に乗ったのは、セリーヌ。そしてお付きのメイドだ。

 メイドは、どこか苦笑していた。


『でも、本当によろしかったんですか? 聖女なんて呼ばれていたのに』

『いいのよ。だって、ディランってバカなんですもの。頭でっかちで、私の言うことなんて聞きやしない。知ってる? あいつ、人と話す時、必ず胸を凝視するのよ? 気持ち悪いったらありゃしない』

『それは確かに……』

『だから、あることないこと噂流して、婚約が破談するように仕向けたのよ。ってかあり得なくない? 聖女になったら一日二食で、お肉はなし、一日八時間の祈りとか、バッカみたい。そんなアホみたいな聖女の役目、頭お花畑のエレインに押し付けてやったわ』

『なかなか、大変そうな役目ですね……』

『まぁね。でも、おかげでトラビア王国から出て、隣のリンドバーグ王国に行けるわ。と……来たわね』

『あら、早いですね。今、ドアを開けます』


 馬車のドアが開くと、黒髪長身のイケメンが入ってきた。


『失礼。我が姫君』

『遅いわよ、アルフレッド。リンドバーグ王国を案内してくれるんでしょ?』

『ああ。我が国、未来の王妃。飽きるまで案内してやるさ』

『ふふ、あなたの留学も終わったし、これからはたっぷり愛してもらうんだから』

『やれやれ。実に怖い姫君だ。婚約破棄からここまで、全てがあなたの計画通りなんだからな』

『でも……あなたが求婚してくれたことは、私の計画にはないわよ? 本当は、リンドバーグ王国で商売でもしようと思ってたんだから』

『ははは。もちろん、きみが商売をしたいなら手を貸すぞ?』

『じゃあ───……』


 と、ここで映像が切れた。

 会場内は、静寂に包まれていた。

 ディランも、エレインも真っ青になっていた。

 全てが、セリーヌの手のひらの上だったのだ。


「…………これにて、失礼する」


 ディランは途中退席、エレインは体調不良を訴え倒れてしまったそうだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 その後、ディランとエレインは結婚。だが、その結婚生活は上手くいってないらしい。

 セリーヌは、隣国の王子と結婚。様々な商売をしてリンドバーグ王国を豊かにし、三人の子供にも恵まれ、幸せな生活を送っているそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 細かいことはいいんだよ!!! ってこう言うことなのね さわやかな笑い
[気になる点] 結婚生活は上手くいってない。 この一言で終わらせないでー(笑) もうちょい詳しく(^^) 隣国で楽しくと、対で、ざまあな生活を。
[気になる点] 細かいことが気になりました。 新たに聖女になったエレインは、ちゃんと聖女の勤め(1日8時間の祈りとか) を果たしたのでしょうか。
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