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冬夜の巫  作者: 真鴨子規
第一章 星と羽翼
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星と羽翼 2

「なにをぼけっとしてるんだい? 一格いっかく

 どんどん小さくなる修道服を、いつまでも見送っていたものだから。

 後ろから突然話しかけられて、思わず飛び上がりそうになってしまった。

悠助ゆうすけ

「やあ、お待ちどう」

 振り向くと、声の主は気さくに挨拶などしてきた。

 男――和知わち 悠助は、丸眼鏡の向こう側から、年齢以上に幼く屈託のない笑みを送ってきている。

 小学校から見知った同級生は、背丈こそ追い抜かれてしまったが、それ以外の部分はまるで変わっていないように見える。

 もっとも、お互いあまりに一緒にいすぎているから、緩やかな変化には逆に気づけないのかも知れない。正直俺には、悠助がいつ声変わりしたのかも分からない。きっとあっちも、似たようなものなのだろう。

「誰だい、今のシスター。コスプレイヤー?」

 しっかり見られていたらしい。悠助は好奇心を露わに、身を乗り出して聞いてきた。

「いや、その」

 思わず言い淀んでしまった。

 別にやましいことがあるわけではないし、偶然目を付けられて布教されただけなのだから、そう言えば良かったのだが。

 なんというか。男として、見てはならないものを見たような気になっていた。

「ははあ」

 答えあぐねている俺を見て、悠助は訳知り顔で苦笑いを浮かべた。

「節操がないね、一格」

 グサリと。槍が心臓に突き刺さったような衝撃が走った。

 全身から血の気が引いて、両脚から今にも崩れ落ちそうだった。

「違う、誤解。そういうんじゃない」

「誤解? そうなの?」

「巨乳なら誰でもいいわけじゃないんだ!」

「…………」

 ええ? と。

 悠助は目を丸くして、直後に笑い出した。

 ゲラゲラと。それはもう大笑いだった。

 涙さえ浮かべてやがる。

「違う違う、それこそ誤解だ! 節操がないって、そういう意味で言ったんじゃないよ」

「なんだよ、紛らわしい。あと笑いすぎだろお前」

「君が唐突に性癖を暴露するからだろ! やめてやめて、腹筋が死ぬ!」

 ついに腹をよじって笑い出す悠助を見て、顔が熱くなっているのを感じた。

 またも周囲の視線を浴びながら。やめてくれお願いだからと、悠助の腕を引っ張って、その場を離れることにした。

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