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応援挽歌 プロローグ
その出会いは、ふとした弾みから生まれたものだった。
その背中に目を奪われた。その両碗に救われた。
心底俺は、その人のようになりたいと思った。
生まれて初めて、他人というものを尊敬し、誰かの力になりたいと願ったのだ。
一足早く終わった、最後の夏。
俺が見失いかけた俺自身を、あの人は見つけてくれた。
些細なことだ。
ただの偶然だ。
どちらかと言えば悪運の部類で、間違いなく俺はそこで道を踏み外した。
それでも、俺は生きていた。
俺はそのとき間違いなく、この世界に生きていたのだ。
果たせなかった灼熱の夢も。
そのために費やしてきたこれまでの人生も。
どうでもいい。あの過去は、もはや別の世界の話だった。
俺は、新しい世界に足を踏み入れたのだから。
戦うと決めた。
あの人のために。
あの人が鍛え上げてくれた拳を振るい、あの人の万難を排す刃になる。
俺は決めた。
あの人のために。
あの人を傷付けた連中に、必ずや報復してみせる。
あれを倒す。
あの『刀』の持ち主を倒す。
俺は、あいつを――
八剣 一星を、必ず殺すと心に決めた。




