崩れていく明野高校のスポ空
月曜日。
またまた学校だ。
だがいつもと違うことが一つ...今日は琴音と手を繋いでいるのだ。
「〜♪」
楽しそうな表情で歩いている。
可愛い。
ところで...
ーあの2人は強化人間かもしれない。それを琴音が知ったらどうなってしまうんだろうー
琴音達は仲が良い。
それは眺めているだけで癒されるほどにだ。
だから...それが崩れてしまうのだけは避けたい。
「...」
「どうしたの?浮かない顔して」
「ああ、なんでもない。」
この状況で誰も傷つかない結末なんてない。
そんなことは分かっているのだが...
「ハァ...」
部活の中で部長並みに発言力のある俺が下手なことを言えば退学もあり得るかもしれない。
もしかしたら本気でスポ空が止まるかもしれない。
もしかしたら...もしかしたら...
「おはよう、鷲君」
「おはようございます、鷲さん」
ちょうど同時に件の2人が来た。
心臓がより強く脈を打つ。
考えろ。俺はこれからどうすればいい?
自分の考えに責任を持て。さあどうする。
「海月、ヴァレンタイン。放課後って図書室に来れるか?」
「いいですよ?」
「わかりました」
よし、約束は取り付けた。
後は放課後に賭けよう...
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1時間目の授業後
「どうしたの?鷲君。
部活での試合の動き、カッコよかったよ!
...でも何か変だと思わなかった?」
「はいっ⁉︎...具体的には...?」
「ヴァレンタインちゃんと海月ちゃん。
あの子達、普段より弱くなかった?
ヴァレンタインちゃんに至っては全国3位の一対一能力があるのに瞬殺されたんだよ?」
確かに、全国一位を相手にしていたにしても被撃墜が早すぎる気がする。
海月は海月で俺を相手にして後ろを取るくらいには実力がある。
確かにおかしかった。
...八百長か。
「まあ...調子が悪かったんだろ。俺もそういう時あるし」
「そういうものかな...?」
そう言ってクラスの女子の1人は自分の席に戻っていった。
それも含めて、放課後に質問しなければ。
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「なあ鷲」
「ん?どした?」
いつも通り俺らはレストランで昼食を取っている。
この間デートで行ったレストランはここの系列店のようなものらしく、ここでもサインを書かされたりした。
今はその後で普通に食事しているが、ちょっと疲れた。
色々あったからな...
ヨッシーが食べていたパスタを飲み込み、こちらに向き直る。
「お前、何か知ってるか?ヴァレンタイン達のこと。」
「...というと?」
「そりゃあもう、あの練習の時とは比べ物にならない弱さだろ」
やはりそうか。
教室のみんなに聞いても部活の誰に聞いてもそれが気になっているようだ。
海月はわからないが、ヴァレンタインは本番に弱いわけじゃないし全国一位を相手にしても勝てるかもしれない実力の持ち主だ。
何かあったのに違いないが...事を大袈裟にしたくはないだろうから放課後まで待とう。
そのために今、さっきまでと同じように...
「調子の問題じゃなさそうだしな...そもそもヴァレンタインの得意機動のはずの左捻り込みが一度も出てないんだし」
調子が悪かったんだろ。というのは通じないようだ。
速攻で潰された...
「いや、でも海月は慣れないYakでもついてきてくれたし...」
「お前の空戦機動について行ってたアイツが1機も撃墜してないんだが?」
「...」
万事休すだ...言い訳はほかに何がある?
「...運?」
「お前ずっと誤魔化してるけどさ、何か知ってるな?」
「そんなことはな」
「言え」
これまでにヨッシーから感じたことのないプレッシャーが襲ってくる。
空戦中でもここまでのプレッシャーはかからないと思う。
それくらいの圧だった。
「...分かった。他の奴らには言うなよ?」
ヨッシーは話し上手で誰とでも喋るが、秘密はしっかり守ってくれる。
ヨッシーになら話してもいいだろう。
「あのさ、あの2人は...」
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「そうなるとかなりの大事だな...」
真剣そうな表情を浮かべて腕を組むヨッシー。
もうすぐ昼休みが終わって午後の実戦が始まりそうなのだが、実際遅れても成績は取れているから問題ない。
「俺も混ぜてくれるかな?」
「部長...」
部長もあの時一緒に話を聞いていた。
しかし俺と部長しか聞いていなかったわけで、実質生徒はこの三人しか知らないということになる。
あまり声は大にして話せる内容ではないな...
「...俺の考えとしては、あの2人をどうこうするよりも元を叩いた方がいい気がする。
というかあの2人をどうこうしたくない」
部長のその考えに関しては同意する。
悪いのはあの2人を作り出した奴らだ。
作り出された側の2人ではない。
「でも、このままじゃ大会にも出れないだろうし...その時はどう説明するんですか?」
「...」
「話すしか...ないんですかね?」
「話した方がいいんだと思う。
...大事にしたくないのはわかるけど、こればっかりはしょうがないよ。」
やはりか。
その時ちょうど予鈴が鳴ったため急ぎ格納庫へ向かい、その後は先生から怪しみの視線を向けられながら空戦の練習をするのであった。
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そして放課後。
平日にしては珍しく今日は部活があり、部活のみんなが集まって反省会をやるようだった。
「B-17って必要?」
「B-25みたいな戦術爆撃機の方が良くない?」
と言った感じの会話の内容だ。
今例えに出した「B-17は必要か」というのは、今実際に話し合われていて、B-17の二機をB-25の三機にするというふうになった。
本来は機体を変えるのにもこういった話し合いをするのだが...俺は割と自由に変えさせてもらっていた。
「で...どうなんだ?D-9の感じは」
「ああ、凄くいいよ。ロールで勝負すればF8Fが相手でもいけそうだ。
基本は一撃離脱になるのは仕方がないとは思うけど少しつまらないな...」
「我慢しとけ。」
と、話し合いをしている所に、1人の黒い服や帽子を身に纏ったいかにも怪しげな人が来た。
性別は大きめのコートを着ているためわからない。
俺はそいつに向かって言う。
「あなた誰ですか?なんでここにいるんですか?立ち入り許可とってるんですよね?」
「2人とも帰るぞ」
後ろで立ち上がる音がした。
恐らく方向からして海月とヴァレンタイン。
まあ...あの話を聞いた後だから大体予想はついていたが。
「何無視してんだ。事情を話せ。礼儀だろうが」
またも無視される。
そのまま海月達の手を強引に引っ張り帰ろうとする。
このままじゃ海月とヴァレンタインがどうなるかわからない...
「ああそうかよ...海月とヴァレンタインが強化人間なのはお前達に関係あるのか?」
顔色が変わった。
サングラスをかけているためわかりずらいが、明らかに驚いていた。
「そうかそうかだから事情も説明できないんだな!ああ納得だわ!バレたから処分でもしようとしたのか⁉︎身勝手だなぁ大人の癖に!」
「どこでそれを知った小僧‼︎‼︎」
奴が掴みかかって来ようとする。声からして男。大きく見えていた体は元々大きかったらしく、動きはそこまで速くないが、くらえばタダでは済まないだろう。
「甘いよ、オッサン」
が、心配はいらない。
俺は空戦と同時進行で柔術をやっていたのだ。
...柔道ではない。柔術だ。
元になった方の殺しのためのものだ。
まあ、気絶くらいなら許されるだろう。
まずその手を巻き込み、運動エネルギーを利用してそのまま投げ倒す。
手は離さず地面に叩きつければ、受け身が取れなかったようで勝手に気を失っていた。
柔道でも十分だったようだ。
「鷲...君?大丈夫?」
「何が?」
「いや...汗がすごいよ」
自分の首を触ってみれば、確かにびっしょりと濡れていた。
息もなんだか上がっている。
なんだかんだ言って俺も怖かったんじゃないか。
「はは...怖かったのかな?」
「不審者は誰だね⁉︎」
先生方が走って来た。
部長が連絡したようで対応していた。
「あそこに倒れている男です!」
先生方の中で校長は顔が青ざめていた。
「皆...今日はもう帰りなさい」
「え、いやまだ始まったばかりで」
「いいから帰りなさい‼︎‼︎‼︎‼︎」
その剣幕に何も言えず、俺らは帰ることにした。
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「なんだったんだろ...」
「俺らが気にしてもしょうがないだろ。
まあ、なんでもないさ」
俺らが2人で家に帰った直後に家でその会話をしている時、電話がかかって来た。
校長から...嫌な予感がする。
「はい、なんでしょう」
「緊急事態だ!」
「待って、落ち着いてください。何があったんですか?」
「ウチの設備が回収されることになった...君の実家で、なんとかならないか?」




