不穏な影
気づいている人がいるかもしれませんが、内容が少し変わっています。
読み返して頂けると助かります。
お手数をおかけしてすみません!
朝から気持ちいい。
何やら隣の部屋で料理をしているらしく、何かをフライパンで焼いている音が聞こえてきている。
ーなんだろう。蓋が閉まっているような音がするから定番で行くなら目玉焼きかな?ー
「おはよう。目玉焼き?」
「おはよう。そうよ、目玉焼き。黄身は?」
「半熟で。あ、制服ここ置いとくぞ。乾いてたから取り込んどいた」
「あ、ありがとー」
「あとそうだ。カチューシャ似合ってるぞ。やっぱりそっちの方が可愛いな」
そう言うと琴音は顔を真っ赤にして俯きながら
「あ、ありがと...」
と、消え入るような声で言ってきた。
「あなたたち新婚さんみたいねー」
後ろから姉の呆れた声。
朝から何をやっているんだと言わんばかりの態度だが寝癖がひどい。
様にならないなー...
「いいじゃん、デートの翌日なんだし。」
「今日学校でそれ言いふらしたら怒るからね」
「わかってるって」
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懐かしい機体に乗れるということで少し浮き足立っている。自分でもわかる。
「サジタリオじゃ...ないんでしょ?私に負けた時の機体?」
「ああ、それだ。サジタリオの前に中学で2年間乗ってた。言い方はアレだがな。」
「...あはは、ちょっと意地悪だったね」
「別に事実だしいいよ」
そう言って格納庫へと歩いていく。
校門はもう過ぎているからそこまで遠くはないだろう。
ほら、もう見えてきた。
「そろそろ着くかな」
スマホをシャッターにかざすと、自動的にシャッターが開いていった。
スマホに登録された個人情報を識別して、空戦関係者だと判断されるとシャッターが開いていく仕組みなのだ。
「わぁ...」
向こう側が完全に開いていて逆光の中、俺が乗っていた最初の機体が目の前に晒されていく。
Fw190Dー9。通称 「長鼻のドーラ」(ナングナーゼン・ドーラ)と呼ばれる機体だ。
この部活に配備されていると聞いてずっと気になっていたんだ。
「久しぶりだな。ドーラ」
「懐かしんでる暇はないわよ!あなたこれ何回目の乗り換えだと思ってるの⁉︎早くしないと小隊員の子達が慣れる時間も無くなっちゃうし空戦の練習も出来ないじゃない!」
「いきなりスイッチ入るのやめてもらっていいですかね⁉︎スッゲェ怖い!」
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「エアレースのコースを通ってから、いつも通り基本的な空戦機動の練習をする。...事故るなよ?」
「アホか!」
「無理だよ...これまでの機体と特性が全く違うし...ボク達は鷲君みたいにセンスがあるわけでもないんだから」
「まあ、それもそうか」
とはいいながら誰も事故は起こしていない。
ここまで機種を変えていれば慣れる速度も上がるのだろうか。
そういう問題ではないと思うが。
風もなし。天候も快晴。
これも影響しているだろう。
そろそろみんな落ち着いただろうか。
コッソリ2000mくらいまで上昇しておいて合図を出す。
「空戦練習、開始!」
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「...ズルい」
「悪かったって」
空戦において高度は大切だ。
それをコッソリ取っておいて他の機体は海面近くにいる時に始めたのだから、それはもう圧勝だった。
俺以外の3機は演習弾によって撃墜判定が下されていたが。
出来事といえばヴァレンタインが突っかかってきたくらいか。
「格闘戦のできない機体は難しいです...」
「出来なくはないけどな?ロールが速いからお互いが交差するように動き続ければ勝てるし」
「まだ乗って数十分なんですけど⁉︎」
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1時間後
「海月、鷲はどこへ行きました⁉︎え、機体の下⁉︎
機体の下に潜り込むのは反則!...ンァー‼︎‼︎」
何か騒いでいるがこれは勝負だ。
構わず引き金を引く。
「撃墜、撃墜」
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さらに1時間後
「よし、後ろにつけた...あ、ちょ、その動きはついていけな...アー!?!?!?」
何回目か分からないが撃墜。
操縦桿を引く手は痺れてきたし、体力的にもキツい。
何回か補給をしているとはいえ死にそうだ。
「ハァ、ハァ...撃墜!そろそろ格納庫に戻ろうか」
「...ング...了解」
「着陸許可は?」
「こちら管制塔、着陸を許可します」
「よし」
機首を向け着陸体制に入る。
いちばん慣れている機体のためスムーズに着陸は成功し、そのまま格納庫に入っていく。エンジンを停止して機体から降りれば、烈風から不機嫌な顔をしたヴァレンタインが降りてきた。
「なんでそれで戦ってこなかったたんですか?」
「サジタリオに乗ってた人に憧れてたから。何回も話さなかったっけ?」
「聞くたびに忘れてます」
「そうですか...」
なんかこう、濁されるのも嫌だがはっきり言い切られるのは辛いな...
「あ、鷲君。今って休憩中ですよね?」
先生(姉)だ。なんだろう。
「ええ、はい。」
「ちょっと来て」
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有無を言わさずに連れられたのは、校長室前だった。
「あの」
「あなたは何もしてないわ。いいから入りなさい」
「何があるんですか?」
「お父さんが来てるわ。お母さんも」
「...!」
父さんと母さんは空戦の連盟の中でも上の方の立場らしく、各地を飛び回っているため一緒に暮らすのは難しい。
姉と一緒に暮らしているのはそういうことだ。
ガチャ。
油が差されたばかりであろうドアを開けると、そこには...
「おう、鷲か。久しぶりだな!どうだ、最近調子は」
「大きくなったわねー!ご飯は?ちゃんと食べてる?」
本当に両親がいた。
疑っていたわけではないが、あまりに久しぶりなために意外だった。
「ああ、元気でやってるよ」
もう少しちゃんと返事すればよかったな。
しかし何やら真剣な話のようで何も言われなかった。
今気づいたが部長も後ろから来ていた。
...本気で真面目な話のようだ。
「君達に来てもらってから成績が伸びてきていてね。感謝しているよ。今日はこのお二方から話があるようなんだ。口外は慎むように。」
「り、了解です」
「すみませんね、わざわざ説明してもらって。
...今、スポ空が止まるかもしれない事態になっている」
空気が凍りついた。
あまりに重い話の全てを受け止められるように、耳を全力で傾ける。
「強化人間というのかな。
そういったものが「生産」されているらしい。
...言い回しから察してくれると嬉しいな。
人道的な扱いは受けていないのだ」
「ヴァレンタインと海月、ですか?」
「...察しがついていたのか?すごいな」
「あの2人は出会った時から強かったですから。
海月は未経験のはずでしたし、ヴァレンタインは俺に負けたのが最初の敗北だったらしいです。普通におかしいと思いますよ」
「...まあ、そういうことだ。
君達に妨害を入れたのはそいつらだと思ってもらって間違いないだろう。
あの子達には何も特別なことはしないであげてくれ。
私はこれで失礼する...ごめんな、鷲。
この問題が解決できたら落ち着きそうなんだ。
それまで待っててくれ。」
「またね、鷲ちゃん」
バタン、とドアが閉まる。
重々しい雰囲気を引きずりながら格納庫へと戻っていく羽目になったが、それからの1日の生活は何も変わらなかった。
1日を通してここまで気分が変わるのなんて初めてだ。
これからはなるべく改変しなくても良いようにしますので、どうぞよろしくお願いします




