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26 図書館ではお静かに

「アタマイタい…。」

「見捨てたのは悪かったから片言にならないで。」


 翌日。俺たちはプリクリの大通りを真っ青な顔で歩いていた。主に俺が、だが。

 昨日は、組合で酔っぱらいのローたちに絡まれてしまい。そのまま朝までパーリナイしていた。まったく嬉しくなかったが。


「はぁ、まったく、災難だった。お陰で今日も夢見が悪くて困る。」

「今日もって、昨日も夢見が悪かったの?」

「ああ、なんか変な夢を…。」


 そこでふと思い、首をかしげる。


「あれ?なんの夢見たんだっけ。」


 昨日、確かに何かの夢を見たのは覚えている。だが、その内容を思いだそうとするとらノイズが掛かっているように見えない。


「どうしたの?」

「…いや、なんでもない。」


 俺はすこしの違和感を感じたが気のせいだと決め、考えることをやめた。



◆◇◆◇◆


 組合のある広場から、徒歩1分ほどの距離にある古そうな建物の前に、俺たちはたっている。

 扉の側面には番人屈強な男たちが並んでたっていた。

 冒険者組合の本部が国会議事堂やホワイトハウスだとすると、こっちは某ブルーベリーなあいつが追いかけてくる洋館のような感じだろう。前にみんなでやって、とてもうるさかった覚えがある。

 俺が番人らしき人に会釈し扉を押すと、扉は控えめな音をたてて開いた。


「すいませーん。」

「………はい。」


 扉のさきには、一人の女性が椅子に腰かけ、本を読んでいた。


「許可証を。」

「あ、はい。これですか。」


 女性の言葉に俺は荷物袋から一枚の書類を取り出す。それに目を通した女性はコクんとうなずき、一際大きな扉を指差した。


「ルールはしってますか。」

「はい。」

「なら、気をつけてください。マナーは守るように。」


 女性はそういうと、興味をなくしたかのように、本に目を移した。


 その扉を開く、するとその先には大小さまざまな本がところ狭しと並んでいた。この世界では製紙技術は元の世界には劣るが発達しており、紙を手に入れること自体はそれほど難しくない。しかし、印刷技術はさほど進んでおらず、普通はこれほどの量の本を目にすることはそうそうない。


「おお…。」

「ここが組合の保有する図書館…。」


 俺たちは、皆その圧巻な光景に飲み込まれしまった。


『おお!すごいぞ!たくさんの本が!!!知識が、たくさんあるぞぉ!!』


……訂正。約一名普段通りに残念な人がいた。


◇◆◇◆◇


 組合が保有している図書館。正しくは《資料館》ではいくつかのルールが定められている。それは、《組合の許可がない場合は館内に入場することができない》や《館内では必要以上の会話をしない》や基本的なものが多い。

 しかし、冒険者組合は良くも悪くも《誰もが登録できる》のが特徴だ。そこには当然、文字も読めないような人や、本を粗末に扱う人もいる。中には、貴重な本を悪用しようとする輩がいるかもしれない。

 なので、大切な資料館を守るために初歩的なルールで、強く堅く縛っているのだ。

 なお、このルールを破った場合。外にいた番人さんに強制連行される。絶対に守るようにしよう。


「はぁ、やっぱり読めねぇ~。」


 俺はいままで悪戦苦闘していた本を閉じ、天井を仰いだ。いくらフーリンの権能で言葉が分かるといっても、それと文字は別ものだ。わからないものはわからない。ないったらない。


「当然。文字を習い始めて数日なんだから、そんな早く文字が読めるわけないの。」


 ルナが魔法の本を読みながら、俺に苦言を呈してくる。まあ、当たり前か。この異世界に来てから二週間近いが、文字の勉強を始めたのはほんの四日前だ。文学の道はそこまで甘くないということだな。


『………………。』


 シェリアは、記憶した本を黙々と読みふけっている。シェリアの権能は、解析と記憶なので、俺の視覚情報から記憶を保存して、本を再現するのは朝飯前らしい。なので俺はさっきからずっと、読めない本をペラペラとめくるマシンと化している。


「……?」


 椅子にもたれ掛かり、後ろの本棚に顔を向けると、ある本が目に止まった。

 手に取ってみると、それは他の本に比べ挿し絵が多く文章が少ないことから、絵本のようなものだとわかる。

 なにげなしにページをめくってみると、そこには数々の動物たちやヒト型のなにかが描かれていた。


「なあ、この本にはなにが描いてあるんだ?」


 なぜかこの本が気になった俺は、ルナにたいして質問してみる。すると、ルナは俺の持っている本を見るとなんでもなさそうに教えてくれた。


「それは、寝るときに子供に読み聞かせるようなおとぎ話を本にしたやつだと思う。」

「おとぎ話?」

「そう、これ見て。」


 ルナはそういい、挿し絵に描いてある様々な動物たちを指差す。数にして14匹。種類も色も様々だ。


「この動物たちは、この世界を守っている神様たちの姿で、その神様たちがほかの世界から侵略にくる悪い奴らを、力を合わせて追い返すってお話。」

「ふーん。」


 俺はその言葉を聞き、再び本に目を落とす。そして、あることに気づいた。この本に出てくる神様の姿たちに見覚えがあったのだ。


「なあ、その神様たちってのはどんなのがいるんだ?」

「え?たしか、ネズミとウシとトラと、ウサギとリュウとヘビと、あとウマとヒツジとサル、トリとイヌとイノシシ。あ、あと天使と悪魔がいるよ。14神って呼ばれてる。」


 ……どこの十二支だよ。なんかどこかで見たことあると思ったら十二支かよ。そしてなんか天使と悪魔っていう西洋文化が入ってきてるし、ツッコミどころが多いな。


 でも、なんで前の世界のおとぎ話がこの世界にあるんだ?天使や悪魔が出てきたりすこし、違うところもあるが、大半が俺が聞いたことのある十二支の動物たちだ。

 もしかしたら、あの世界とこの世界はどこかで繋がっていて、もしかしたら、帰れるのだろうか。


『ヘルト!!ほらサボらないで、手を動かして!』

「……はいはい。」


 知識に貪欲なうちの精霊に急かされながらも考えてしまう。

 もし、もしあの世界に帰ることができるのなら、俺は帰るだろうか。



 俺に、帰る資格などあるのだろうか。

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