23 プリクリ到着
迷宮防衛都市プリクリ。今でこそ冒険者の都市呼ばれるプリクリだが、そこはもともと迷宮の調査、そして国の軍事力強化の為の場所だった。しかし、いつしかそこには冒険者が潜るようになり、利益を挙げ、そして街を作り、都市が出来た。そして今現在も、冒険者は潜っている。
深淵の入り口へと。
アトラス・マントラー著
「人族の領域」より
◆◇◆◇◆
「おお、ここがプリクリか!」
少しの検問の後、俺たちは冒険者の街であるプリクリへと足を踏み入れた。
さすがは冒険者の街と言うべきか、街のいたるところに武器を携えた冒険者らしき人たちが行き来している。
「さて、これからどうする?さっそく迷宮にでももぐるか?」
ローが指を鳴らしながら聞いてくる。
「さすがに今すぐはないな。慣れない馬車の旅でルナも俺も疲れてるし、今はゆっくりしよう。というわけで、早く図書館いこうぜ。」
「いってることが前半と後半で違う…。」
ルナにジト目を向けられているが俺は気にしない。てか、図書館にいくのも大切なんだけど…。
『そうだよ!いいかい?知識とは生き物が生きるために必要なものであり。同時に生き物を殺すのも知識なんだ。間違った情報を信じてしまえば足を救われることもある。だからいち早くたくさんの知識を…』
やべ、シェリアさんがヒートアップしちゃった。こうなればしばらくうんちくを垂れ流し続けるので適当に聞き流すとしよう。
「んじゃ、俺は昔の知り合いに顔を見せにいってくるわ。あと好きにしろ。何かあったら探せよ。」
ローは広場に馬車を止めると、ぴょんと飛び降り、人だかりの中に消えていった。その顔は心なしかワクワクしているようだった。初対面では渋いおじさんかと思ったが、以外に子供っぽいところもあるのかもしれないな。
「よし、じゃあとりあえず図書館いくか。」
「ねぇ、忘れてることあるでしょ。」
「へ?」
「宿。」
「は!?危ねぇ、同じ過ちを繰り返すとこだった。じゃあ、まずは言い感じの宿に向かって出発だな。」
「…はぁ。」
「悪かったからそのため息、心にくるんでやめてくれない?」
◆◇◆◇◆
広場の人に馬車つきでも止まれる宿を聞いてみると、大熊亭という宿屋がいいという返事が返ってきたのでそこを目指してみる。もちろん、俺に馬術はできないので運転はルナに任せている。あれ?なんか師匠としての威厳がどんどんなくなっていってる気がするぞ。なんでだ?
『自分の今までの行いを見返してみるといいんじゃないかい?』
シェリアから呆れたような声が返ってくる。ふむ、酔っぱらいの悪漢から助けて、武術を教えたり、猿との戦いでは庇って傷をおったりしてたな…。なにその人かっこよすぎない?俺なら惚れるわ。
そんな感じでシェリアとボケながら話をしていると、大熊亭という場所についた。そこは広場からそこそこはなれているようだが、その代わり他の宿屋よりも広く、小さめの旅館くらいはありそうだ。
「お、ついたな。んじゃ、俺が馬を繋いでくるから、先に受付しといてくれ。」
「わかった。問題起こしたりしたらダメだよ。」
「分かってるって。」
まったく。あいつは俺のことをなんだと思っているんだ。
俺は生きるため以外には動物を殺したりしない。というか犬とか猫は好きなほうだ。
さすがに馬はこの世界に来て初めて触ったが、こいつはよく訓練されているのか、それとも元々人懐っこい性格なのか、よく俺に懐いてくれた。名前はフウライだ。フウライは馬車を駐車場のような場所に停めると、大人しく宿の厩舎に入った。
さっきは俺は馬術はできないといったが、実はいま練習中だ。さすがに2日でマスターできるほど俺は天才ではないが、あと数週間もすればフウライくらいは操れるとローに言われてモチベも上がっている。
てか、気づいたらこういう話し方も慣れてきたな。ボケるとかモチベとか。前までこんな喋り方じゃなかったんだが、あのオタクの影響かな。
今何してるかな、あいつら。
◆◇◆◇◆
宿に向かって歩いていくと、宿の中から誰かが言い争いをしているような声が聞こえてきた。
ふと、俺のなかにある可能性が出てきた。いやまさか、来て早々問題は起こさないだろう。そんな思いで俺は扉を開ける。そこはカウンター兼食堂のようになっており、宿泊客で賑わっていた。しかし、彼らの視線が注がれているのは料理ではない。受付前のある机で冒険者らしき男と、目立つ髪を隠すためにフードを被っているルナが言い争いをしていた。
まさか、来て早々問題を起こすとは。あいつには自分が狙われている自覚があるのか?呆れながらもバチバチしている二人に話しかける。
「はいはい、そこまで。こんなところで口論しても迷惑だろう。」
「あ……。」
ルナが俺を見て目を反らした。あ、一応不味いことしてるっていう自覚はあるんだ。
「あ?誰だてめぇ。勝手に話にはいってくんじゃねぇよ!」
「こいつの師匠をしてる者だ。俺の弟子が何かしたのなら、俺にも責任はあると思うぞ。で、ルナ何があったんだ?」
俺はルナにそういって説明を求めた。しかし、なぜか男の方が先にしゃべりだした。
「このガキはな、俺が気持ちよく仲間と今日の狩りのことで話してたらな、隅からグチグチ文句を呟いてたんだよ。それで注意してやろうと思ったら、こいつなんていったと思うか?『あんたみたいな雑魚にそんなこと出きるわけないじゃん。』だぞ!失礼にも程があるだろうが!!」
男は酒が入っているのか、少し大きな声でいってきた。それにルナが反論する。
「Fランク冒険者なのに、赤熊が倒せるわけないじゃん。嘘は休み休みいった方がいいよ。」
「なんだと!!」
二人はヒートアップする。男の仲間は男ほど怒ってはいないのか、逆にふたりの喧嘩を肴にして酒を楽しんでいる。
ふと、カウンターを見てみる。すると、そこから身長180はありそうな大男がこちらを見ていた。あれが大熊亭の店主だろう。
その瞳は俺に、早く終わらせろと語っているようだった。
しょうがない。俺はどうやって喧嘩を止めようか少し考え、実行に移した。
「ほい。」
「ひゃ!?」
俺はルナをフードが外れないように抱え込んだ。
「悪かったな。後で一杯おごるよ。じゃ、俺はこれで。」
「お、おう。」
男はルナの少し無様な姿に溜飲が下がったのか、呆気なく引き下がった。俺はルナを脇に抱えたままカウンターへと歩いていった。
「終わったか。」
「ああ、騒がしくしてしまって悪かったな。」
「いい。きちんとマナーを守る客なら歓迎するさ。部屋はどうする?」
「そいつはサンキュー。一人部屋を二部屋、一先ず一週間分貸してくれ。食事も付きなら最高。」
「二部屋食事付きで金貨5枚だ。お湯なんかは追加料金だが、頼めば持っていかせる。」
俺が財布から金貨を取り出すと、店主は二部屋分の鍵を差し出してきた。
「部屋は二階の一番奥の二部屋だ。一応いっておくが、他の客の迷惑になることはするなよ。」
「肝に命じておくよ。」
俺はそう言い残し階段を上ろうとする。
「ねぇ、そろそろ下ろしてくれない。」
脇に抱えたルナがそういってくる。おっと、あまりにも軽すぎて抱えてることを忘れていた。だが、離す前に釘を刺しておく。
「もう、問題を起こしたりしない?」
「……しない。」
「ホントに?」
「ホントに。」
「よし。」
俺はルナを床に下ろす。すると、俺から鍵をひったくって、とっとと階段を上がってしまった。俺が階段を上がりきる頃には既に部屋の鍵を開け、入るところだった。
「あれだけ問題起こすなっていってたのに一番が自分とはな。」
「ッ!!ふん!!」
そういってからかうと、ルナはバタンと大きな音をたてて扉を閉めた。
そんな弟子の様子に面白く感じつつ、俺は残った部屋のカギを開け、部屋に入った。
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