22 馬車での一時“レイトン~プリクリ"
俺たちは今、はじめの町レイトン(さっき初めて聞いた)を2日前に出て、ある町に向かって馬車に揺られていた。この世界の道路はたいして舗装がしておらず、ガタガタしているので、だいぶ揺れる。お陰で尻がめっちゃいたい。そして酔う。この2日で何回かリバースしてしまった。そういえば、子供の頃初めて車に酔って吐いたのを思い出した。その時はミヅキに背中をさすってもらってたな。情けない兄ちゃんだ。
さて、行き先をどうするかはすでに決めてあった。冒険者の都市プリクリという町だ。何でも町の近くに迷宮と呼ばれる場所があるらしく、他の町より冒険者が圧倒的に多く繁栄している都市らしい。冒険者組合の本部もあるのだとか。
しかし、俺がそこに決めたのはある理由があった。それは、冒険者専用の図書館があるということだった。
そう、図書館である。この世界に来てからほとんど情報を得ることができずヤキモキしていたが、ようやく魔法や魔物などの知識を得ることができると、俺もシェリアもワクワクしている。
ついでに、さりげなくルナに国の名前などを聞き出して見たところ、いろいろなことが判明した。
まず、この国はローラン共和国という名前らしい。共和国がなにかを噛み砕いていうと、たった一つの君主が納めているのではなく、国民の資格をもった人たちが選挙で政治を行っている国、といった感じだ。現代では日本もこの共和国に入る。
「これがヘルト、でこれがルナ。あとこれがロー。」
さて、俺が今何をしているかというと、ルナに文字を習っている。さあ、図書館にいくぞ!ってなってもあ、文字読めねぇ。という展開になるかもしれないことに気づいたのだ。さすがにそんなバカな展開にはならなかったとは思うが、せっかくなので今のうちに文字を覚えておこうと考えたのだ。
『ああ!私が知らない文字がこんなにたくさんあるぞ!!』
まあ、覚えるのは俺というよりシェリアさんなのだが。シェリアさん大喜びである。でも、覚えておいて損はしないと思うので俺も修行の片手間で勉強している。
他にも、ルナに新しい魔法や魔力制御のコツを教えてもらったりした。
ここで一度魔力というものについておさらいしておこう。魔力というのは主に種類が二つある。
一つは、空気中に存在する《マソ》と呼ばれる魔力だ。これは酸素や窒素などと同じものだと考えて良い。体内にある魔力が少ない魔術師などは主にこの魔素を操って魔法を行使しているらしい。その代わり、自分の魔力ではないため制御が難しく、自分の魔力の方が相性がいいので威力が幾分か落ちるらしい。
もう一つが生物や植物などに宿るという《マノ》と呼ばれる魔力だ。しかし、これの体内マノ量には人によってそれぞれ個人差があるらしい。生まれつき大量のマノを保有しているものもいれば、ほとんど稀だがマノをまったく持たない人もいると言われているらしい。この体内のマノ量だが、魔力を使い込むことによって少しずつ増えていくこともあるという。
ちなみに、このマソやマノを溜め込み過ぎてしまうと、その膨大な力により体が崩壊したり、作り替えられてしまうらしい。そして、その影響で自我を失ってしまった生物が魔物ということだった。
さて話を戻すが、俺には新しく習得した魔法がある。それは、火の初級魔法である。《トーチ》と水の初級魔法の《ウォーター》だ。この二つの魔法は主に生活を便利にする生活魔法と呼ばれる種類で、マノを持つ者ならば誰でも使えるらしい。無詠唱で使えるようになるのも早かった。もちろん、きちんと練習をすれば攻撃にも使える。
そして魔力制御だが、ルナが言うに俺は体を魔力で強化するとき、ほとんどの魔力を無駄に消費してしまっているらしい。
例えれば、もし俺が腕を全体の約50%の魔力で覆ったとする。そして、その魔力を腕の強化につかう。しかし、俺は魔力の制御が下手らしく、そのうちの9割を無駄にして、きちんと強化できてるのは全体の1割未満らしい。
「魔力の制御がきちんと出来たら、少ない魔力で最大限の効果を発揮できるし、魔力の温存もできて、長い間動けるから覚えておいて損はないと思う。」
相変わらず不機嫌そうな猫みたいな目付きでルナはいう。最初は俺が嫌われてるのかと思っていたが、あれがデフォルトらしい。
俺は手のひらに闇属性の黒い球体であるシャウトを生成して、それをできるだけ少ない魔力で維持する練習をしている。
俺は現在、闇属性のシャウトと風属性のウインドを無詠唱で発動することに成功している。詠唱というのは、はっきりいえばその魔法がイメージしやすい言葉で魔法の発動の補助をするためのものだ。
しかし、魔法のイメージに慣れてしまえば基本詠唱しなくても効果は発動する。
なら詠唱する必要はないのでは?と思うだろうが、そうでもないらしい。イメージのみでも魔法は発動するが、制御がとても難しい。
イメージが薄ければ魔法は発動しても、たいして効果が出ずに消えてしまう。逆にイメージを強くしすぎても、制御が追い付かず暴発してしまう。それに、高位の魔法になればなるほど制御の難易度も上がっていく。先の戦闘では俺も無詠唱のシャウトを使っていたが、あれは酔っぱらいたちが弱かったから効いただけで、ある程度実力がある者にはたいして効果はないだろう。
…そういえば、あの酔っぱらいたち死んだんだな。真っ赤な炎に包まれて…。いや、考えたって仕方ない。世の中には死んでも治らない悪人は五万といるんだからな。
「お、見えてきたぞ。」
ローの声が聞こえて、俺は馬車の外に顔を出す。遠くに、大きな外壁に囲われた都市が顔を出す。
レイトンを出てから約2日。冒険者の都市プリクリに到着した。
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