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21 出発

今週は少し余裕があったので、ここで一本投稿します。

 森での一連の騒動から一週間がたった。

 俺たちは早朝、街門で組合に用意してもらった馬車を待っていた。

 この街を出ることにしたのだ。


 ◆◇◆◇◆


「単刀直入に言う。この街から嬢ちゃんを連れて離れてくれないか?」


  ルナを孤児院に預けた後、俺はギルドマスターのローに呼び出されて、部屋に入ったときの第一声がそれだった。


「なんだそれは?厄介払いってことか?」

「まあ、否定はしない。このまま紫髪の嬢ちゃんがこの街に留まると、住民たちにも被害がでることになる。あいつらはそういう連中だからな。」


 俺の問いかけに、ローはやけに確信のこもった声でいった。まるで、あいつらのことを知っているかのようだ。


「あいつらが何者か、知ってるのか?」

「ああ、あいつらはおそらくアルト王国が後ろについている犯罪組織だろう。」


 俺が聞くとローは話し始めた。何でもアルト王国というのは、表向きは正義を掲げる統一国家らしいのだが、その裏側は人体実験や魔物の開発など暗い部分が隠れているような国らしい。今回の騒動に出てきたあのデカ猿もおそらくアルト王国で人為的に作られた魔物だろうのことだった。


「あいつらがなんで嬢ちゃんを狙っているかは分からんが、なんにせよここにずっと留まるのは危険だ。お前らにしても、この街にしてもな。ああ安心しろ、各地の組合からも出来るだけ融通を聞かせるようにするし、お前のランクもEに上げといてやる。なんなら護衛の冒険者も雇ってやるよ。」

「いや、そこはありがたいんだが…。なんでそんなに肩入れしてくれるんだ?」


 俺はローの提案に警戒心をしめす。ここ最近でローには懇意にしてもらっているし、信用したいのはやまやまだが、理由が分からないのに優しくされるのははっきりいって怖い。そんな俺の様子に気づいたのか、ローは笑いながらいった。


「なに、これから延びるだろう新人に対しての投資みたいなもんだ。お前も嬢ちゃんもな。あと、個人的な理由もある。」

「ちなみにその個人的な理由ってのわ?」

「それいっちまっても面白くねぇだろ。また今度教えてやるよ。」


 そんな感じで大事な所ははぐらかされてしまったが、せっかくだからとついでにいろいろとお願いしてみた。

 一つは孤児院のことだ。いま考えてみると、あの借金取りもあいつらの仲間だったのだろう。多額の借金をさせて金を払えなくなったところで、出来るだけ証拠を残さないように拐うつもりだったのだろう。まあ、俺が借金を払ってしまったので強行手段に切り替えたのだろうが。

  しかし、借金取りがいなくても孤児院の収入は多くない。なので、組合に孤児院を気にしてもらうように頼んでみた。その代わり、冒険者を優先して直してもらうようにシスターに頼んでおこう。

 あとは、旅のための食料や馬車と御者等を頼んでおいた。

 その全てにローはうなずき、俺は少し怪しみながらもギルドを後にした。



 ◇◆◇◆◇



 孤児院に戻った俺は、シスターと起きたルナに事情を説明した。ルナは街から出なければいけないことに少し渋った様子だったが、このままだと周りの人たちにも被害がでるかもしれないという話をすると、とたんに素直になった。もしかすると、無惨に殺されてしまった冒険者をまじかで見たからかもしれない。シスターや弟妹たちがあのようになるのを恐れたのだろうか。





「俺たちもいく!!絶対にいく!!」


 ルナやシスターは説得したのだが、約二名、納得が行かない者がいた。ジュディとシュナだ。二人は最初、自分たちも当然一緒にいくだろうと思っていたのだろう。だが、俺は二人をこの街に置いていくつもりだった。理由は単純で、危険だからだ。

 今回の騒動で現れた敵たちの中にはあの黒い少女や、戦ってはいないがあの黒ローブの男がいた。あいつらはおそらく俺と同じくらいかそれ以上の強さをもっているだろう。

 シェリアや精霊などの奥の手を使ったとしても、せいぜいルナ一人を逃がすのが誠意一杯だろう。もちろん、このままの強さでいるつもりはないが、人というのはそう簡単に強くなれるものではない。最悪の場合、せっかくできた弟子たちを失ってしまう可能性もあった。だからこその選択だ。


「ジュディ、シュナ。お前たちを連れていくことはできない。なぜなら足手まといだからだ。」


 俺の容赦ない一言に傷ついた表情を見せる二人。しかし、俺の言葉は止まらない。


「ジュディ、お前は反応速度は遅いし感覚も鈍い。体力はそこそこあるが、しょせんそこそこだ。全力で戦闘をすれば5分ももたないだろう。シュナは感覚も鋭いし、反応速度はあるが、いかんせん体力とスピード、そして攻撃力が足りない。いまの二人ならあの赤熊にだって勝てないだろう。」


 話が進むにつれ、二人はどんどんうつむいていく。本当はなにも考えずついていきたいが、冷静な部分ではわかっているのだろう。このままでは邪魔になってしまうと。そこが見所でもあるのだがな。そんな様子の彼らに俺は言い放つ。


「だから、お前らに宿題を課す。」

「「宿題?」」


 俺の言葉に二人とも頭をかしげる。


「その宿題を終わらせて、この世界のどこかにいる俺たちを見つける。それが、一緒に旅をする条件だ。」



 ◇◆◇◆◇



「あ、師匠。馬車きたぞ!」

 ジュディの声で自分が物思いに耽っていることに気づいた。前を見ると、そこには木で作られた馬車に馬が一頭。御者台にはイーグとフードを被った謎の人物がいた。


「やぁ、ヘルト、そしてルナ。君たちがいなくなると思うと寂しいよ。」

「うん。いままでありがとうございました。」

「ああ、世話になった。この礼はいつか返す。で、その後ろの人は?」

「ああ…、この人が御者と護衛をやってくれるらしくってね」

「へぇ…、で、誰なんだ?見るからに怪しさ全開なんだが。」


 俺は躊躇なしでガンガン踏み込む。本当なら失礼な態度だが、今はルナが狙われていることがわかっているので警戒するのに越したことはない。そう考えた故の発言だったのだが、


「ふ、やっぱりお前は勘が鋭い、将来は強い冒険者になるな。」


 フードの男がしゃべりだした。あれ?この声どこかで…。男がフードをあげる。するとそこにはこの数日で大分見慣れた男の顔があった。


「ロー!?」

「よお、ヘルト。ギルドマスターをやめた現役Bランク冒険者が、お前らの護衛についてやるよ。」



 ◆◇◆◇◆



 何でもローは昔からギルドマスターをやめたがっていて、今年にはもう引退することを決めていたようだ。そこに、ルナを狙った事件が起きて、占めたと思い護衛するというのを名目にしてギルドマスターをやめようと考えたそうだ。

 それゃ、いろいろと頼み聞いてくれるだろうな。だってこれから自分も一緒にいくんだもの。


「現役だったのは何年も前の話だが、これでもBランクの冒険者だったんだ。護衛には十分だと思うぞ。」


 確かに、ローの言い分は正しい。この街にいるの冒険者は大半がランクCいかの者がほとんどだ。そのなかでも、元とはいえランクBの冒険者を雇えるのはとても心強い。


「そんなこと言われてもな、なんで俺たちについてこようと思うんだよ。はっきりいって危ないぞ。」


 だが、俺はなぜローが俺たちについてきてくれるのか疑問だった。同情で味方をしてくれるような人なのか、それともなにか思惑があるのか、そんな俺の疑問にローは当たり前のように答えた。


「そりゃ、お前らと一緒にいたら、面白そうだからだよ。ちょっとやそっとの危険があってこその冒険者だろ?」


 その言葉を言い放つローは、まさに俺が思い描いた通りの冒険者の姿だった。

『これは、なかなか面白い人間がいたものだ。』

「…ああ、そうだな。」


 シェリアの言葉に、俺は小声で返す。いま理解した。ローは俺やシェリアと同類なのだろう。未知を知りたい、好奇心の塊だ。


「わかった、頼むよ。これからよろしく、ロー。」

「ああ、任せとけ。その代わり、がっかりさせんなよ。」


 そういってローは俺にニヤリと笑いかけた。




「じゃあな師匠!!絶対宿題終わらせて追い付いてやるからな!!」

「ルナちゃん!まっててね!」

「ヘルトさん、ルナちゃんをよろしくお願いします。」

「ギルドマスターも、あんまり無茶しないでくださいね。」


 各々の見送りの言葉をうけ、馬車は進む。

 朝方出発する商業団の集団に紛れ、街をでる。そして、まだ見たことない景色を目指し、俺たちは旅立った。

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