15 それが師弟
武器屋のシーンの王都を、首都に訂正しました。
次の日、俺はDランク冒険者のイーグと一緒に、彼が贔屓にしているらしい武具屋に来ていた。
「いらっしゃい。あ、イーグさんじゃないかい。どうしたの?この間の剣のメンテナンスかい?」
入ってすぐの受付にいたのは、ふくよかな体型をしたおばちゃんだった。
「やぁ、コリアンさん。今日は僕のじゃなくて、この人の装備をみつくろってくれないか?昨日、冒険者なったばかりらしいから、初心者用のやつをお願いします。」
「ヘルトです。よろしくお願いします。」
「あら、こんにちは。あたしゃコリアン。よろしくね。ヘルトくん。」
コリアンさんはそれから、俺にいろいろな事を質問してきた。どんな武器がいいか。サイズはどれくらいか、などのいろいろなことだ。そこで、俺はあることを聞いてみた。
「日本刀…刀みたいなのは、ありますか?刃が片側についてて、切れ味重視のやつ。」
そう、日本刀である。さすがに日本刀という名前そのままではないかもしれないが、にたようなものがあるかもと思ったのだ。俺はあれがあれば、百人力だ。ある程度、素手でも戦えはするが、どうしても刀をもったときと見劣りしてしまう。
森の奥にあの熊より危険な生物がいるとしたら、どうしても武器がほしい。そういう思いで聞いてみたのだが、結果は残念なものだった。
「うーん。そんな感じの武器が東のほうにあるってのは聞いたことがあるけど、あいにくうちには置いてないね。首都とかにいけばあるかもだけど…ごめんね。代わりにいろいろとつけてあげるから。」
残念ながらこの店にはないらしい。それはそれで残念だが、いろいろとおまけしてもらえたのでよしとしよう。
俺は頑丈なロングソードを選んでみた。降り心地は悪くないが、やはり今まで刀を降ってきた身としては違和感がある。そういえば、俺がここに来るときにもってた刀はどこにいったのだろうか。まぁ、そんなことどうでもいいが。
装備は皮鎧にしてみた。なめした皮に所々金属で補強してあるやつだ。これを選んだ理由は、なんといっても軽いことだ。急所を守りつつ、自由に動きやすいので、戦闘中も戦いやすいだろう。
それ以外に、素材をいれる袋や瓶などもおまけしてもらって、全部で金貨15枚だった。この世界のお金は基本硬貨が主流らしく、銅貨一枚で100円、銀貨一枚で1000円、金貨一枚で10000円といったかんじで増えていくらしい。金貨の上にもいろいろあるらしいが、それはまた必要になったときでもいいだろう。つまり、この買い物で俺は実に15万円もの大金を使ってしまったのだ。
昨日も孤児院の奴らに美味しいものを食べさせようと思って散財してしまった。これはアカン。こんなペースではすぐになくなってしまう。節約しなくては…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺はイーグにお礼をいって別れ、孤児院へと向かっていた。何でも孤児院ではシスターとルナが回復魔法を使えるらしく、昼はその力で治療院を開いているらしい。なので、俺も今後のために魔法の使い方を習っておこうと考えたのだ。
だれかさんが魔法の使い方を忘れていなければこんなことにはならなかったんだけどな~。
『し、しょうがないじゃないか。封印のせいで忘れてしまったんだから。そう仕方ないんだ。私は悪くない。』
だれかさんが封印されるような悪いことしたから、封印されたんじゃないですかね。
『くっ!なにも言い返せない…』
HAHAHA。我の勝利なり。まぁ、なんの勝負してるんだって話しになるんだが、シェリアはとても役に立ってくれてるし、とてもいじりがいのある精霊なのでへそを曲げられたくない。いじるのもこの辺に…
「ああ!?だから、早く払えっていってんだろ!!」
「だからそんな大金借りてないっていってるでしょ!!」
孤児院の入り口で誰かが言い争いをしていた。片方はルナの声だった。ルナの後ろではシスター達がいた。じゃあもう片方の柄が悪い男は誰だ?とりあえず、近所迷惑なので止めに入る。
「はいはいそこまで、こんなとこで騒いでどしたの?」
「あ…おかえりなさい。」
はい、ただいま。事情を聞いてみたのだが、男は借金取りで、この孤児院はこの男の雇い主に借金があるらしく、男はその取り立てに来たようだ。そこで反論したのがルナたち孤児院側。確かに、孤児院が借金をしていたのは事実だが、男が要求したのは借りたお金の五倍の金額らしい。明らかに利息が高い。これはどういうことだと聞いてみると、きちんと契約書には書いてあるとのことだった。ためしに男がもってきた書類を見てみると、確かに端のちっこいところに書いてあった。完全に闇金の手口である(偏見)。
そんなこんなで、言い争いをしていたらしい。前の世界でも似たようなことがあった。ここでこの男をボコボコにして追い返したとしても一時しのぎで、なんの解決にもならない。ならどうするか。ここで一気に返済して、こいつらと一切関わらないようにするしかないのだ。しょうがない…
「払えないってんならしょうがねぇな。その「わかった。いくらだ?」…へ?」
俺が男の話しに割り込む。男は一瞬呆けたような表情をしたが、すぐに取り直していった。
「金貨10枚だよ。払えるか?見ず知らずのあんたに?」
昨日聞いた話だと最近治療院に人が全然来なくなったらしく、その知り合いの俺もどうせ貧乏で払えないとでも思っているんだろう。日本円にして約十万円。この町は結構物価が安いので残念ながら払えるし、見ず知らずでもないんだな、これが。俺はさっき買った財布袋から金貨を十枚取り出し男に差し出す。
「ほら、金貨10枚。しっかりあるぞ。わかったならさっさと、どっかいけ。」
「は?」
「ちょ、ちょっとまって!なんであなたが払うの?これは私たちの借金でしょ?」
ルナたちが騒ぎたてる。なんでとは、当たり前のことをいう。
「なんでって、お前らが俺の弟子で、俺がお前らの師匠だからだろ。」
ルナが呆けたような表情をする。あれ、突拍子過ぎたか?詳しく話す。
「あのな、師匠ってのはな、弟子が困っていたら助けるもんなんだよ。それが弟子の家族ならいっそうな。」
「そんな、だって私たち師匠と会ったの昨日…」
「会ったばかりだとか、師弟関係になったばかりだとか、なにも教わってないだとか理由にならねぇよ。これからいろいろ教えたり、一緒に過ごすんだからよ。」
俺はじいちゃんに何度もたすけてもらった。それは子供の頃から、そして今現在もじいちゃんの教えに救われている。
「まぁ、それでも信じられないっていうならそうだな…」
俺は考える。ルナたちが俺を信じることができる理由。人は無償の善意というものに警戒しやすいものなので、こちらにも利があるようなことをいわなければ。少し考えて思い付いた。
「よし、じゃあ、お前らが俺の師匠になってくれよ。」
「は?」
「何でもいい。文字でも魔法でも、弓でもいい。俺の師匠になってくれ。これならいいだろう?」
俺が借金を肩代わりする代わりに、彼らにいろいろなことを教えてもらえばいいのだ。恩があれば裏切る心配もないしな。うん。我ながらいい策だ。
『ふふ、君らしい答えだね。私もいろいろと知りたいことがあったしちょうどいい。』
シェリアがそんなことをいって俺を肯定する。そんな俺のこと完全に理解してるみたいなこといってるがお前とあったのも数日前だぞ。
「ちょ、ちょっと待て!先に話し進めんな!」
ちっ。いいところだったのに、男が文句をいってくる。うざい。俺は男を睨み付ける。
「借金は返したよな。さっさと出ていけ。」
「ひ、はい!」
男は俺のにらみがきいたのかさっさと帰っていった。まったく。そういえば、あいつなんかいいかけてたな。まぁ、いいか。今はルナたちに魔法でも教えてもらおう。




